2018年 今年の一冊 HONZメンバーが、今年最高の一冊を決める!

内藤 順2018年12月29日 印刷向け表示
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麻木 久仁子 今年最も「充実した時間ををくれた」一冊

一生、元気でいたいから 生命力を足すレシピ
作者:麻木 久仁子
出版社:文響社
発売日:2018-09-14
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最近HONZに「著者自画自賛」というコーナーが新設され、第一弾としてHONZメンバー仲野徹が自著『(あまり)病気をしない暮らし』について語っていました。「読んだやつはみな大絶賛だぜ、こんなすごい本はないぜ(大意)」と文字通り自画自賛。確かに売れているらしいです。

売れているといえばHONZ代表・成毛真も今年は『amazon世界最先端の戦略がわかる』がバカ売れしています。二人とも自己肯定感が強固、ってとこが似てます。いつも羨ましく憧れて眺めている二人です。

さて、自著なら私にもあるのです。幼い頃から自己肯定感が薄く、コンプレックスに振り回されてきた私はなかなか口に出せないのですが、結構頑張って作ったいい本なんです。『生命力を足すレシピ』という本です。8年前に脳梗塞、6年前に乳がんを患い、幸い早期発見で事なきを得たものの、健康管理の大切さに目覚めた麻木が、長続きする食養生を探し求めて『薬膳』に巡り会い、日常の食卓に薬膳を取り入れるべくレシピをご紹介する本です。

「薬膳」というとなにか漢方薬とか入ってるの?という印象ですが、実際には「季節や体調、体質にあったものを食べる」というのが基本です。珍しい食材を使わなくともスーパーで売っている食材で作る事ができるのが日常の薬膳です。ハンバーグ、餃子、肉じゃが、カレー、野菜炒めetcといった極々日常のメニューも、ほんの一工夫で季節や体調にあった「薬膳」になるという、毎日できる簡単薬膳を提案しています。

すでにこの本を手に取ってくださった方からは「薬膳のイメージが変わった!」「簡単に作れて美味しかった!」「どれも体に良さそう!」とのお声をいただいております。何度も試作して、できるだけシンプルで美味しいレシピを目指しました。撮影時は3日間、料理を作りまくりでしたが、いやあ楽しかったです。

この本は私に充実した時間をくれました。皆様におかれましても、お役に立つ本になればいいなと密かに思っております所でございます。よろしくお願いいたしまする。

刀根 明日香 今年最も「世界をぎゅっと凝縮した」一冊

全世界史 上巻 (新潮文庫)
作者:出口 治明
出版社:新潮社
発売日:2018-06-28
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「人間が赤ちゃんから大人になるのと同じで、時代も急に現代になったわけではない。積み重ねられた歴史を学んで、僕たちは立派な時代をつくれるのではないか。」出口治明さんの歴史の本はどこまでも分かりやすく、面白い。学生から大人まで、幅広い世代が「勉強したい」と思ったとき、その欲求を叶えてくれる、世界史教科書ナンバーワンだと思う。

私は物知りでもないし、特別な趣味もないが、読書はその平凡な人生に彩りを与えてくれるから好きだ。知って嬉しい、楽しい、こんな人に会ってみたいなど、少しずつ、自分のなかを「あれやりたい、これやりたい」で満たしてくれる、大切な習慣だ。仕事でうまくいかなくても、失恋しても、自分を立て直すための、大切な大切な自分の軸となっている。

出口さんの語る歴史を学ぶのは、等身大の自分を愛することに繋がるように感じる。等身大の自分が楽しめる本というのは、案外少ない。何かに追い立てられたり、少し背伸びして興味の幅を広げる挑戦をしたり。それらも素敵だが、純粋に好奇心を満たすために読みたくなる本、それが出口さんの本だと思う。過去にもたくさん素敵な歴史書はあるが、出口さんの本は万人に長く愛される本になるだろう。

栗下 直也 今年最も「私に残酷な現実を突きつけた」一冊

没イチ パートナーを亡くしてからの生き方
作者:小谷 みどり
出版社:新潮社
発売日:2018-10-11
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HONZに加入して以降、献本を頂く機会が増えた。スポーツやら事件モノやら男の欲望に関するモノが多い。編集者もバカではないので、私に『ホモ・デウス』は送ってこない。

そんな中、編集者であるHONZメンバーの足立真穂から、「担当の人から是非読んで貰いたいという本を預かりました。何か心配されているのかもw」のような連絡がきた。タイトルは『没イチ』。テレビでも取り上げられていたようだが、当時の私は読み方すら怪しかった。まあ、ボツイチとしか読みようがないんだけれども。

ググるとパートナーが没し、一人になった状態とある。ネットを見る限りアラフィフやシニアが多く、「え!俺はまだ、38歳だぞ、担当者!フレディ・マーキュリーも45歳まで生きているのに」と思ったものの、考えてみれば、アラフォーなんて、いつ、自分やパートナーがぶっ倒れてもおかしくない。事故にあうこともある。

肯きながら読んだが、モヤモヤも隠しきれない。そうなのだ。途中で気づいたのだが、私の場合、パートナーが先に没する可能性よりも、逃げられる可能性が圧倒的に高い。本書は没イチの心配の前に心配すべきことがある現実を突きつけてくれた秀作だ。

吉村 博光 今年最も「ミームが縁をつないだ」一冊 

インフォメーション―情報技術の人類史
作者:ジェイムズ グリック 翻訳:楡井 浩一
出版社:新潮社
発売日:2013-01-01
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個人的な今年のニュースといえば、企画した「AI書店員ミームさん」が想像以上に波紋を広げたことだ。ミームさんはAIがお客様の表情にあわせて本を選ぶ仕組みだが、多くのメディアに出演し、国内外のイベントにも多数招待された。先日は「東京読書サミット」で本好きの方々に遊んでいただいた。(記事はこちら

今回ご紹介する『インフォーメーション 情報技術の人類史』は、その際にお会いしたスマートニュースの藤村さんが、以前雑誌のインタビューでお薦めしていた本だ。

記事を読んで、早速、買って読んでみた。なんと「ミーム」についても書かれているではないか。運命を感じつつ、大変面白く読んだ。500ページを超える大作だが、私は(いつもそうするように)理解できないところを、バンバン飛ばしながら読んだ。文系の私に理解できるところだけでも、十分元はとれた。アフリカの太鼓(トーキングドラム)による情報伝達から、近年の情報通信に至るまで、その内容はエキサイティング!の一語。読んでからしばらくは、情報技術の今後を想像しながら過ごした。今もなおその余韻に浸っている。

塩田 春香 今年最も「小から大へ、振れ幅が大きかった」一冊

追跡!辺境微生物ー砂漠・温泉から北極・南極まで
作者:中井 亮佑
出版社:築地書館
発売日:2018-10-30
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細菌は目に見えないほど小さいが、地球上の総量の見積もりは約520億~2700億t。人間の総体重よりよっぽど重い。また、私たちの大腸に棲む細菌たちの数は、約37兆個にも達する。さらに、著者が砂漠からとってきた微生物。培養すると、シャーレ全体で世界人口を超える個体数となる。

この、個々は顕微鏡サイズでありながらスケールがやたらとデカい微生物たちを追い求め、若き生物学者の著者は、世界の辺境へと飛び出してゆく。その行動範囲がまた、異様に広い。ラクダに揺られてサハラ砂漠を行くかと思えば、ホッキョクグマから身を守るためにライフル抱えて北極の氷河を登り、さらには砕氷艦に乗って南極へ……。

本書に通底するのは、知的好奇心と探究心。そして研究者としての実直さ。たとえば環境破壊後に生物調査をしても、それ以前のデータがなくては比較ができない。著者の「どこにどんな微生物がいるのかを調べておけば、それが過去と比較できる貴重な資料となる」という基礎研究を重んじる姿勢は、読んでいて好感度大、である。

ちなみにラクダで砂漠調査をしていた当時、著者の体重は100kgを優に超えていたそうだ。微生物を追い求めるのは体もビッグな研究者であった、という振れ幅も、今年読んだ本でいちばんだったこと間違いない。

峰尾 健一 今年最も「キーワード(と個人的反省)を感じさせられた」一冊

TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか
作者:レイチェル・ボッツマン 翻訳:関 美和
出版社:日経BP社
発売日:2018-07-20
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Facebookのデータ不正取得問題、GDPR(EU一般データ保護規則)の施行など、巨大プラットフォーム企業と個人情報についての話題が印象的な今年、「信頼」は大きなキーワードだったと思う。

オンライン空間がもたらす恩恵はなるべく維持しつつ、信頼も保てるようなシステムを構築できるのか。プライバシーの話以外でも、フェイクニュースの問題から金融の未来まで、さまざまなトピックにおいて信頼はカギになっている。 不信が強まれば強まるほど、信頼を築き上げた企業や個人へ支持が集中する流れも加速した。配車、宿泊、個人間の売り買いなど、信頼の問題を克服した(と多数が感じた)サービスの普及の速さは言うまでもない。

「錯覚資産」や「ブランド人」といったワードがビジネス書のベストセラーに顔を出し、個人レベルでの信頼についてもそのインパクトがますます意識されるようになった様が見て取れる。 信頼をめぐる潮流の変化を、正負両面バランスよく事例を出しながら整理してくれるのが本書『TRUST』だ。

良きにつけ悪しきにつけ、信頼は世の中を駆動させ、今はその動きの過渡期に差し掛かっていることがよくわかるだろう。信頼の行方を追っていけば、これからの時代が見えてくるはず。 ……なんて偉そうに書いてきたが、読みながら最も頭に浮かんだのは個人的な反省について。

気づけば今年は、自分史上最もレビューが少ない年になってしまった。着々と失われていくTRUST。へ、編集長...! 来年は盛り返していきます!

足立 真穂 今年最も「お勧めされた」一冊

認知症になったらどうしよう?

これは誰しもが持つ老いへの恐怖のひとつだと思う。かくいう私も、若年性アルツハイマーの映画を見たときは、「最近忘れっぽいかも」と慄いた。自分の身に起こらずとも家族ならどうだろうか。特に、加齢で加速度的に発症の確率が高まるのは自明の理、つまるところ老親がそうなることは大いにありえる。どうなっちゃうのだ? 面倒は見られるのか?

そんなところに、なぜか立て続けに周囲の友人や信頼する作家さんに勧められたのが、この本だ。『脳科学者の母が、認知症になる~記憶を失うと、その人は"その人"でなくなるのか~』。

タイトル通り、著者の恩蔵絢子さんは脳科学者だ。両親と同居をされているので日々世話をするのはそうなるのだとしても、専門的な知識が加わり、フラットに状況が書かれていくので読みやすい。それでいて娘としての気持ちの揺れ動きも伝わってくる。いや、そうだとしても、と。

介護の日々にさえ希望を見出す姿勢は、健気で、共感せずにはおられない。脳関係の本はあるようで、読むべきものは少ない。そんな中でお勧めされたので、私もお勧めすることにした。年末年始は家族との時間でもある。親の顔を見ながら、もしかしたら思い出しながら読むと、さらに実感のわく一冊になるだろう。

皆さま、2019年もHONZを、どうぞよろしくお願いいたします。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
出版社:中央公論新社
発売日:2014-10-24
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