著者自画自賛

ヒョウ柄に金箔押しのド派手カバー『仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう』は”真の大阪”を知るためのバイブルだ!

仲野 徹2019年7月21日
仲野教授の そろそろ大阪の話をしよう

作者:仲野 徹
出版社:ミシマ社
発売日:2019-07-20
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大阪という町、世間ではどんなイメージで見られてるんでしょう?「お笑い」、「こなもん」、「ヒョウ柄のおばちゃん」、「えげつない」、「ガラ悪い」、とかでしょうか。

たしかにテレビでは吉本の芸人さん達が大阪弁で笑いをとりまくってます。それに、どうしてかわかりませんが、と~きょ~もんであっても、アホなことを言うたり、エロいことを言うたり、あるいは、ケチ臭いことを言うたりするときに、いきなり大阪弁を使い出す人がいたりします。いや、大阪弁ではなくて、大阪弁もどき弁とでも呼ぶべき、気色の悪いアクセントのことばを。

でも、ホンマの大阪ってそんなんとちがうんとちゃうんか。ステレオタイプではあかんのとちゃうんか。大阪人も非大阪人も、もっと大阪のホンマの姿を知っておかなあかんのとちゃうんか。そういう義憤にも似た気持ちをもって、大阪のことをよく知る人たち12人を厳選して対談をおこないました。

という訳では、まったくないんですわ。

4年ほど前のある日、以前に寄稿したことがあった雑誌『望星』の編集者さんからメールがきました。三ヶ月に一回の連載で対談を企画してくれないかと。できれば大阪について、ではあるけれど「具体案はほとんどない」とのこと。なんなんですか、そのええ加減な依頼は…

ですから、どうしてそのような企画が持ち込まれたのか、いまだに不思議です。ただ、宗教学者の釈徹宗先生に刺激されて「絶賛なんでも巻き込まれキャンペーン」を始めたところだったので、お引き受けしようかと心が揺れ動いてしまったのです。

ひとつだけ条件をつけました。芥川賞の柴崎友香さんとお話がしてみたいので、それが可能であるならば、と。はい、いいですよと、軽請け合いされたことをうけて、企画がスタートしました。(これについての後日談は、本書をお買い求めの上、柴崎さんとの対談の項を読んでみてください。いかにええ加減な企画であったかがさらによくわかってもらえるはずです)

とはいえ、完全に素人です。どんなテーマで誰と対談したらいいかもわかりません。まず、歴史学者の髙島幸次先生と対談したら、何人か適当な人を紹介してくれはるにちがいないから、そのご好意に甘えよう。他にも、大阪の食についてはちょっとうるさい、いや、うるさすぎる江弘毅さんとか、国語学の(たぶん)大家である金水敏先生とか、3~4人の顔がうかびました。

まぁ、とりあえず、それだけおったら大丈夫やろ。連載いうても、ええ加減な感じやから、いつまで続くかわからんし。大阪について、適当に身の周り5メートル以内にいてる人とお話してみよか、ということで始まったという訳です。

雑誌連載時のタイトルは『大阪しち~だいば~』。もちろん、中沢新一先生の『大阪アースダイバー』からの無断借用です。アースダイバーが「心の無意識までを含んだ四次元の地図を作成する作業」ならば、しち~だいば~は「心のおもむくままの身近な対談でお茶をにごす作業」とでも言えるでしょうか。

しかし、わからんもんです。志の低さとは裏腹に、素晴らしく面白くて、ためになる対談ばかりになりました。対談相手は適当に選んだように見えますが、まぁ、実際そうだったんですが、たぶん大阪人としてのわたしの「心の無意識」のなせる技でしょう、結果的には、ゲストのバラエティーといい、それぞれの内容といい、これしかない。振り返ってみれば、完璧と思えるほどです。

あ、スミマセン、不肖、周囲の人から極端に自己肯定感が強いとの評価をうけておりますので、ご寛恕のほどを。でも、騙されたと思って、どれでもいいので、対談をひとつ読んでみてください。きっと他のも読みたくなるはずです。

自己肯定感は強いのですが、小心なところがあって、相当に人見知りなのです。誰かと初めて会う時には、どんな話で切り出すかをいくつもシミュレーションしなければ、前日眠れないほどです。信じてもらえないかもしれませんが、本当です。ただ、話し出すと、初めての人でも1~2分ですっかり慣れるので、はたから見ても気づかれないだけなのです。

そんななので、まったくの素人がホストの対談企画、最初はどうなることかと心から案じていました。それやったら引き受けるな、っちゅう話ですが…。それはさておき、あらためて原稿を読み直してみると、完璧とちゃうんか、と自分で感心してしまいました。小心にして自己肯定感が強いという不思議な性格が如実に反映されてます。

こんな調子の対談集ですが、わたし自身、本当に勉強になりました。生まれてこのかた60年以上、ドイツに住んでいた2年間ほどを除いて、「主婦の店ダイエー発祥の地」と枕詞がつく大阪市内きっての下町、千林という町に住み、ずっと定点観測をしてきました。それでも、大阪のことは知っているようで知らなかった、ということを痛感しました。

大阪の人も、それ以外の人も、あぁ、大阪ってこんなこともあるんや、と新しい発見をしていだけるはずです。そして、きっと、大阪のええとこを守っていかなあかんなぁ、あるいは、標準語で、大阪のいいところをを守らなくちゃいけないね、と思っていただけるはずです。どうぞ、お楽しみください!

<注1> この文章は、『仲野教授のそろそろ大阪の話をしよう』の、まえがきとあとがきから適当に抜き出してちょっと訂正した、という横着な自著宣伝文です。なので、本を買って、同じこと書いててけしからん、とか、怒らんといてちょうだいね。

<注2> この本は、ユニークな活動を続けるミシマ社からの新レーベル『ちいさいミシマ社』の第一回配本2冊のうちの1冊として発刊されました。『ちいさいミシマ社』は、”「薄利多売」では立ちゆかない。小売とメーカーが共存できる商売のつづけ方” をめざすレーベルです。その内容は、ちいさいミシマ社レーベル船出の朝、朝日新聞の読書欄でもとりあげられました。詳しくはミシマ社の三島邦弘代表による決意文をごらんください。