併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2021年7月

古幡 瑞穂2021年7月4日

コロナ禍によって取材やフィールドワークが制限されるなか、自伝や歴史ものの大物新刊が続いています。6月はどんな本が発売されていたのでしょう。先月出た本の売上ランキングから売場を見ていきましょう。

日販オープンネットワークWINから6月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2021/6/1~2021/6/30の売上)

新書が上位を占める中、HONZでもレビューが出て話題になった『闇の盾』がぐんぐんランキングを伸ばしました。メディア等での取りあげも増えており今後の動きも楽しみな1冊です。

闇の盾 政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男

作者:寺尾 文孝
出版社:講談社
発売日:2021-06-02
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  出版社名 書名 著者
1 幻冬舎 もうだまされない新型コロナの大誤解 西村秀一
2 講談社 闇の盾 寺尾文孝
3 講談社 真説日本左翼史 池上彰
4 青春出版社 還暦からの人生戦略 佐藤優
5 講談社 未来のドリル 河合雅司
6 宝島社 変わる日本史の通説と教科書 本郷和人
7 宝島社 最高の死に方 近藤誠
8 集英社 「自由」の危機 集英社新書編集部
9 筑摩書房 古代史講義【氏族篇】 佐藤信
10 筑摩書房 廃仏毀釈 畑中章宏
11 小学館 バカに唾をかけろ 呉智英
12 講談社 数学独習法 冨島佑允
13 文藝春秋 コロナ後を生きる逆転戦略 河合雅司
14 小学館 辻政信の真実 前田啓介
15 宝島社 世界「闇の支配者」シン・黒幕頂上決戦 ベンジャミン・フルフォード
16 朝日新聞出版 内村光良リーダー論 畑中翔太
17 新潮社 その病気、市販薬で治せます 久里建人
18 KADOKAWA 官邸の暴走 古賀茂明
19 岩波書店 『『失われた時を求めて』への招待』 吉川一義
20 文藝春秋 ハダカの東京都庁 澤章

他にも気になる新刊がたくさん!6月発売の気になった本を少しご紹介していきます。

ホーキング、ホーキング 自らの神話を構築した天才の知られざる物語

作者:チャールズ・サイフェ
出版社:青土社
発売日:2021-06-28
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2018年4月のホーキング逝去から3年。ホーキングの知られざる一面に迫るノンフィクション。未来からくる人を集めたパーティーを開いたり、アニメの吹き替えをやったり、と物理学の才能だけでなく、自分の神話を構築する天才だった、という姿を描いた作品。最後の書き下ろしとなった『ビッグ・クエスチョン』とあわせて読んでみると趣がありそう。
 

アウトロー・オーシャン(上):海の「無法地帯」をゆく

作者:イアン・アービナ
出版社:白水社
発売日:2021-06-30
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ニューヨークタイムズでベストセラーになった、海の実態を描いたノンフィクション。陸とまったく異なる社会が形成されている海。そこでは陸のルールは通用せず、犯罪行為が長年にわたって放置されているそうです。そういった違法・脱法行為の実態を描いたことで話題になっています。

当たり前に口にしている海産物、それを手にするために行われている乱獲や生態系の破壊。これまで見えてこなかった真実がこれによって明かされています。
 

超耐性菌 現代医療が生んだ「死の変異」

作者:マット・マッカーシー
出版社:光文社
発売日:2021-06-22
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新型コロナウイルスの流行の陰で、ひたひたと忍び寄る恐怖があります。それがこの抗生物質が効かない「スーパー耐性菌」。数年前には効いたはずの抗生物質が効かなくなり、2050年には毎年1000万人が命を落とすと言われています。この耐性菌に有効な抗菌薬を探し奮闘する著者がその取組と苦労を綴った1冊。

先日レビューされた『悪魔の細菌』とあわせて読むと面白いはず。
 

帰還兵の戦争が終わるとき: 歩き続けたアメリカ大陸2700マイル

作者:トム・ヴォス ,レベッカ・アン・グエン
出版社:草思社
発売日:2021-06-01
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戦争が引き起こした外傷後ストレス障害に悩む人は多く、米国では大きな問題となっており、『兵士は戦場で何を見たのか』『帰還兵はなぜ自殺するのか』など、この問題に関するノンフィクションも多く描かれています。

この『帰還兵の戦争が終わるとき』は、自らの判断ミスで上官を失い、退役後も精神的に追い詰められた著者が徒歩でのアメリカ横断に挑むノンフィクション。歩き続けた結果見えてきたこととは。
 

AI は人間を憎まない

作者:トム・チヴァース
出版社:飛鳥新社
発売日:2021-06-01
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著者は英国のサイエンスライター。AIの行き先が憂いや期待をもって語られる中、実際にAI開発を行っている人たちがどういう考えをもっているのか、徹底して取材したという1冊。「合理主義者」と呼ばれる開発者たちは、何を考えどういうものを作ろうとしているのか。AI開発に関する最新の情報も取りあげつつAIの未来を考えています。

この他、自伝や評伝なども豊作でした。読む物には困らない夏になりそうです。新たな本との出会いがありますように!