著者自画自賛

エッセイ集『笑う門には病なし!』、その内容の幅広さ日本一!(と思います)

仲野 徹2021年8月24日
仲野教授の 笑う門には病なし!

作者:仲野徹
出版社:ミシマ社
発売日:2021-08-24
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初エッセイ集の「まえがき」であります。みなさん、よろしくお願いいたします!
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エッセイ集を出すことになりました。って、「はじめに」を読んでるんやからわかってるわ! と言われそうですが、なにしろそうなったんです。しかし、エッセイ集を出すって、ちょっとえらそうなことないですか。

広辞苑には、「エッセー【essai フランス・essay イギリス】 ①随筆。自由な形式で書かれた、思索性をもつ散文。②試論。小論。」とあります。なんといっても、その先駆者、フランスのモンテーニュによる『エセー』が有名です。だいぶ前に読んだので(ただし一部だけ)記憶は定かでありませんが、かなりハイブロウでした。日本語では随筆ですか。兼好法師に鴨長明ですな。となるとエッセイ集以上に重苦しいイメージがしてしまいます。

かといって「駄文集」とへりくだったりすると、誰も買ってくれそうにありません。やっぱりエッセイ集と呼ぶしかないかなぁと考えて、ええこと思いつきました。せっかくタイトルが『仲野教授の 笑う門には病なし!』なので、小エッセイ集ならぬ「笑エッセイ集」なんかどうでしょう。あかんか……。

そもそも、どうしてエッセイを書きためてあったか、です。モンテーニュのように(しつこい)自発的に書いた訳ではありません。平成二十六年から『日本医事新報』という雑誌に、最初の年だけは月に三回、二年目からは毎週、連載していたのであります。

じつは、なぜ執筆のご指名を受けたのかはよくわかっていませんでした。最近になって連載開始時の担当編集者さんに聞いたところ、うちの研究室へインタビューに来られた時に、「『冷たいコンクリートの阪大医学部の中にこんなおもろい先生がいるのか!』と驚き、『これはなんでもいいから医事新報に書いてもらわなければ!』」と思われたそうです。ひょっとすると、大阪大学がモデルともされる『白い巨塔』ならぬ、『面白い巨塔』を目指してほしかったのかもしれません。

日本医事新報といえば、今年、令和三年に創刊百周年を迎えた由緒ある医学雑誌で、当然のことながら、内容は超まじめです。それにふさわしいエッセイなど書けそうにありません。無理とちゃいますやろかとお伝えしたのですが、内容はなんでもいいですからということだったので、とりあえず一年やってみますとお引き受けした次第です。それが、むっちゃ好評で(あくまでも推定です)、ずるずると八年目に突入とあいなっておるのです。

連載のタイトルは「なかのとおるのええ加減でいきまっせ!」にさせてもらいました。「ええ加減でいきまっせ!」、標準語に翻訳すると「いい加減にいっちゃうよ!」というところでしょうか。ニュアンスがだいぶちがうような気がしますけど。自己肯定感が強いせいもあるのですが、なかなかええタイトルやないかなぁと思ってます。広辞苑をひくと「いい‒かげん【好い加減】 ①よい程あい。適当。ほどほど。 ②条理を尽くさないこと。徹底しないこと。深く考えず無責任なこと。—以下略—」とあります。

私をそこそこ知る人は、なかのとおるの「ええ加減」を②のようなあまりよろしくない意味に解すような気がします。しかし、主観的には当然①でありますし、私をよく知る人には①の意味にとっていただけるはずです、というより、望むらくはそうとっていただきたく考えております。

まぁ、どっちゃでもええんですが、気持ちとしては、①が基本で、ちょっと②を振りかけて書き続けてきたつもりです。かのモンテーニュがエセーに書いているように(さらにしつこい)「私は私の意見を述べる。それがよい意見だからではなく、私自身の意見だからだ」といったところでしょうか。って、そんなええもんとちゃうかもしらんけど。

真面目なところでは本職である医学や教育、エンタメ系としては(へき)()旅行や趣味の()()(ゆう)など、内容はきわめて多岐にわたっております。中には、鼻毛をごっそり抜いたり、語呂合わせを考えたり、バスが突っ込んできたり、といった、ちょっと聞いただけでは、なんやねんそれはと思われそうなものもあります。ただ、病気についてはほとんど出てきません。なにしろ『笑う門には病なし!』というタイトルどおり、おもろく笑いながら読んでもらって、明るく健康に過ごしてもらおうというのが目的の本なのですから、病気のことはいらんのです。ということにしておいてください。

買うかどうか迷っておられる方のために、まずはこれを読んでみてください、と、とっておきの一本を選んでここにお知らせしようかと思いましたが、やめました。なんでやねん、ケチくさいと思われるかもしれませんが、どう転んでも営業的メリットがなさそうだからです。

ひとつ選んで、それを読んでもらったとします。もし、それが面白いと思われなかったら最悪です。逆に、面白いと思ってもらえても、いちばんおもろいのを読んだからもうええわという人が出てきそうです。まぁ、あくまでも自己判断ではありますが、どれもがおもろいので、いちばんのを選ぶというのが困難という理由もあります。それに、すでに三五〇以上のエッセイから七七編を厳選してあるんですから、どれもがおもろいというのは当然といえば当然なんです。

なので、迷っておられる方は、ランダムに三つ四つ読んでみてください。そして、ひとつでもおもろいなぁというのがあれば、ぜひお買い求めください。読んでいるうちに、ええあんばいの「いい加減さ」が気持ちよくなってくるはずです。

ホンマかぁ? とられる向きもあるかとは存じますが、ホンマです。自慢じゃないけれど、記憶力がいまひとつなので、昔に書いた内容はすっかり忘れてしまっていました。出版するにあたってあらためて読みなおしてみると、むっちゃおもろくて、自分自身がそうなっていったくらいですから間違いありません。

ではみなさん、私の過去数年にわたる(たぶん)おもろい思索にひたってください。っちゅうほどたいそうなことではなくて、ゆるっと読んでみてください。もちろん、よし、笑うぞ! と気合いを入れながら。そうしたら、何倍も楽しめるはずです。何卒、よろしくお願いいたします。