おすすめ本レビュー

『誰にも聞けない 太極拳の「なぜ?」』

新井 文月2011年10月7日
誰にも聞けない 太極拳の「なぜ?」

作者:真北斐図
出版社:BABジャパン
発売日:2011-08-12
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運動不足の人が本当に多い世の中だ。

デスクワークでパソコンの仕事をする人は、ほとんど目と指と大脳以外は動かしていない。両手をポケットにつっこんで歩いている人は、手は動かさず、足の前後運動だけで前に進もうとしている。そして現代人は、そこまで動いてないのに時間がきたら3食きちんと食べようとする。それでは病気になるのもあたりまえだ。

私もひとつの作業に没頭してしまい、目と指と心臓しか動かさない事が多々あるが、時間が許す時は身体は動かさないといけないと思う。そもそも動かす行為自体が大好きだ。

太極拳は、一挙手一投足、たとえ指一本動かすときでも、全身が連動する動作を伴う。ここに健康の秘訣がある。デスクワークが多い人にとって、運動はゴルフでもランニングでもよいが、太極拳はオススメである。手ぶらでできるし、ヨガのように精神鍛錬も可能であり年齢に際限がないので、何歳からでもスタートできる。何より朝早く起きて公園に向かうのは本当に気持ちがいい。

前置きが長くなったが、本書はなぜ太極拳はゆっくり動くの?という初心者の素朴な疑問などを解決してくれる一冊だ。実はこのような質問は、何年も教え続けている段位が高い先生達でも答えられなかったりする。(ちなみに私も段位を頂いています)そのような質問に対する答えの多くは「言葉にできないから体感してほしい」などと腑におちない答えだったりする。では体感するには!?と、将棋でいう千日手に似た問答になってしまう。

本書には気という概念が普通に出てくるが、実際に説明しようとするとまた厄介で難しい。エネルギーと言えばいいのか、超能力といえばいいのか。伝え方が難しいので、やればわかるよ、と言いたくなる気持ちがわからなくもない。だが本書では答えが明確に示されている。著者は2003年より六本木ヒルズアリーナにて夏休みに無料で太極拳講座を開いていた人物。初心者に肝心な事をわかりやすく説明する術を知っているのだろう。

多くの太極拳の本は、その歴史と難解な動作理論や流派を云々述べているか、写真で型ばかりを紹介している事が多い。子供が疑問を頂きそうな質問にすべて答えているこの本は良書といえる。ポップな表紙とは裏腹に満足いく内容なのだ。

他にも「太極拳って武術なんですか?」「どうして健康にいいの?」「陰陽の立ちかた」など、経験した事がない人でも楽しく学べる。呼吸法と気功の関係、丹田に気をためるやり方。なぜ胎児のようにかがんだ中腰姿勢をとると、気のバランスが整うか、なども説明されている。この手のジャンルが好きな人にはたまらないだろう。

〜大事なのは陰と陽のバランスで動く事。人間の右手は攻撃として武器を、左手は防御として盾を持ってきた。これは身体の役割が違うからです。身体の臓器は左右対象ではありません、心臓は左より、肝臓は右より、胃は左より、それぞれ陰と陽があり左右の違いを理解して行う身体操法なのです〜なるほど。

運動不足解消に太極拳をはじめたいと思う人は、この本は買って損はない。これらのポイントがわかった上で身体をコントロールすれば、上達は間違いなく早いし、普段の生活にも必ず役に立つ。コラムの中には「練習は水の中で動くよう」にとあるが、私も激しく賛同する。

動きながらにして禅のように瞑想効果もあり、身体の中から鍛えられるので腸にも良い。つまり痩せる。たまには早起きして公園にいこう!思いきり気を吸って元気を入れるのだ!

※本書は本気で格闘を学びたい人向けではありません。喧嘩に強くなりたい人は、ボクシングや空手を学んだほうが早いとあります

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奥義は実感しなければわからないのは、どの世界も同じ事。

単純な疑問から、弓を通じて禅の極意を知るドイツ人の話。

弓と禅

作者:オイゲン・ヘリゲル
出版社:福村出版
発売日:1981-11
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実際に太極拳を武術に役立てたい人にはこちらをオススメ。

日本初、太極拳での戦闘法を紹介し二十年読み継がれている名著。

格闘術として膨勁は恐るべき破壊力を持つ。

太極拳の科学 (〔正〕)

作者:陳 孺性
出版社:愛隆堂
発売日:1984-01
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