併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2022年3月

古幡 瑞穂2022年2月21日

今年は寒い日の多い冬になりました。コロナ感染者数が激増し、まん延防止措置がとられ始めてから他の小売りと同様に書店店頭も来客数が少ない日が続いているようです。一方で、テレビドラマで取りあげられたことをきっかけに古典名著の『自省録』が売れ始めるなど面白い現象も起きています。

これから出る本のリストはこれまでとうって変わって、日本人作家のノンフィクションやルポルタージュが目立つ月となりました。まずはこれから出る本のランキングから見ていきましょう。

2022年2月19日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)

 この1年、著作を増やしてきたオードリー・タンがまたまた新作を発売します。『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』ではこれからの世界について考えます。デジタル民主主義の象徴となったオードリーの描く未来、そしてそこに向けて何をしていくべきかを提言してくれる1冊。

作者: オードリー・タン,近藤弥生子
出版社: SBクリエイティブ
発売日: 2022/3/5
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出版社商品名著者名発売予定
年月日
ワニブックス『異なれ 東京パラリンピック車いすバスケ銀メダリストの限界を超える思考』鳥海連志2022
0228
扶桑社『風のことは風に問え―太平洋往復横断記』辛坊治郎2022
0228
講談社『野球はここまで数字になった』鳥越 規央2022
0317
ダイヤモンド社『マッキンゼー 問題解決大全』チャールズ・コン2022
0331
NR出版『トランスジェンダーの私が悟るまで』荒牧明楽2022
0307
講談社『ゼロから学ぶ量子力学』竹内 薫2022
0317
講談社『「日本人の遺伝子」からみた病気にならない体質のつくり方(仮)』奥田 昌子2022
0317
読書人『田中秀臣・森永康平の Nippon学』田中秀臣2022
0303
吉川弘文館『小田原北条氏と越後上杉氏』簗瀬 大輔2022
0317
SBクリエイティブ『まだ誰も見たことのない「未来」の話をしよう』オードリー・タン2022
0308

それではリストから気になった本をいくつか紹介していきます。

作者: ジュリー・K ブラウン
出版社: ハーパーコリンズ・ジャパン
発売日: 2022/3/11
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大富豪、そして慈善家として知られていたエプスタインが未成年の少女の性的人身売買という衝撃的なニュースは世界を揺るがすものになりました。獄中死後も多くの謎が残る事件を白日の下にさらしたのは、地方紙であるマイアミ・ヘラルドの記者。時には身の危険を感じながらも、記者は地道な取材で真相に挑みます。そのシリーズ記事を再編したのがこちら。いったい何が行われていたのかおぞましい真実、腐敗が明らかになります。

作者: 横田 増生
出版社: 小学館
発売日: 2022/2/28
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アマゾンの倉庫、ユニクロなどへの潜入ルポで知られる横田増生さん。なんとこのコロナ禍の中、単身渡米しトランプ陣営の選挙スタッフになっていたのだそうです!(すごい)。あのアメリカ大統領選を内側から取材、コロナ禍なのにノーマスクの人々に囲まれ、議事堂襲撃では催涙スプレーまで浴びて(本当にすごい)見た、言葉通りの命がけのルポルタージュがこちら。実地で見た「分断」から日本社会へ贈られる提言とは?

作者: 小林 元喜
出版社: 集英社インターナショナル
発売日: 2022/3/25
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登山家であり、時には社会貢献活動にも熱心に取り組む野口健。その素顔を18年間で3度、野口健事務所を辞めた元マネージャーが描いています。発売前から話題になっている1冊。

登山関連も話題になるノンフィクションが続いています。ちょうど『日本人とエベレスト―植村直己から栗城史多まで』も発売になり注目されていますので、あわせてどうぞ。

作者: 山下 征士
出版社: KADOKAWA
発売日: 2022/3/2
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昨年は『完落ち』や『警視庁科学捜査官』など、元捜査官たちのノンフィクションが注目され人気を博しました。この『二本の棘』は兵庫県警の元捜査一課長の告白です。二本の棘とは「グリコ森永事件」「朝日新聞襲撃事件」という昭和を揺るがす未解決事件二つのこと。この未解決への後悔、そして一課長として指揮をとり「少年A」にたどり着いた背景など当事者だからこそ見えた事件の裏側が明かされます。

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に出てくる機関、NERV。その名前を冠したアカウントは元々、ファンの遊びで始めたものだったそうです。それが3.11を機に一変します。正体は謎だけれど、最も早く確かな情報を送ってくれるアカウントとして多くの人にフォローされ、いつしかメディアのニュース速報を超えるまでに…

遊びだったはずのアカウントをここまで動かしたものはなんだったのか。エヴァンゲリオンの版権元にも名称使用を認められるまでになったその「中の人」たちの信念に迫ったノンフィクション。

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北京五輪が閉幕しましたが、今回も多くのアスリートの活躍が見られました。これから彼ら、そしてスポーツを取り巻くテーマのノンフィクションも増えて来そうです。多くの本との出会いがありますように!