併せて読まれたこの一冊

先月出た本 2022年3月

古幡 瑞穂2022年3月7日

急転したウクライナ情勢により、世界中が混乱に陥っています。未だ収束に至らない新型コロナウイルス、世界的な物流危機など先が見えない事ばかりが続きます。2月の書店店頭も苦しい状況が続いています。ではノンフィクションではどんな本が売れていたのでしょうか。

日販オープンネットワークWINから2月発売のタイトルとHONZのレビュー対象となるノンフィクションジャンルのタイトルを抽出しランキングを作成しています。(2022/2/1~2022/2/28の売上)

ランキング上位は9割が教養新書という結果になりました。なかでも良い動きをしたのが『人類の起源』です。遺伝情報を手がかりに人類の起源を探るという古代DNA研究は、近年の分析技術の進化により大きな飛躍を遂げています。そういった最新の研究結果から見えたことを第一人者が語り尽くすという1冊。

作者: 篠田 謙一
出版社: 中央公論新社
発売日: 2022/2/21
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順位出版社名書名著者
1潮出版社日本再生へ!「確かな実力」西田まこと
2PHP研究所子どもが心配養老孟司
3SBクリエイティブ発達障害「グレーゾーン」その正しい理解と克服岡田尊司
4SBクリエイティブ世界を震撼させた日本人門田隆将/高山正之
5講談社なぜ、いま思考力が必要なのか?池上彰
6宝島社証言昭和史の謎別冊宝島編集部
7中央公論新社人類の起源篠田謙一
8朝日新聞出版第二次世界大戦秘史山崎雅弘
9講談社海外メディアは見た不思議の国ニッポンク-リエ・ジャポン
10KADOKAWA心を鍛える藤田晋
11小学館おっさんの掟谷口真由美
12朝日新聞出版音楽する脳 天才たちの創造性と超絶技巧の科学大黒達也
13文藝春秋秋篠宮家と小室家文藝春秋
14中央公論新社中国哲学史中島隆博
15新潮社親鸞と道元平岡聡
16講談社宇宙を支配する「定数」臼田孝
17講談社数式図鑑横山明日希
18中央公論新社ブラックホール二間瀬敏史
19エクスナレッジシャーロック・ホームズの建築北原尚彦
20中央公論新社メタ認知三宮真智子

他にも気になる新刊がたくさん!2月発売の気になった本を少しご紹介していきます。

作者: アダム・ヒギンボタム
出版社: 白水社
発売日: 2022/2/26
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旧ソ連で最も安全で進んだ原発と言われていたチェルノブイリ。しかし、原子炉爆発によって歴史に汚点として残る末路を辿ることになりました。事故からすでに36年が経過しますが、ソ連、ロシアの秘密主義もあり全容解明には至っていません。様々な本や研究が出ていますが、これは諸外国での高評価を受けた調査報道。原発の誕生の経緯、世界に広がった放射能汚染、そしてその影響を受けた人々。ジャーナリストの綿密な取材から原子力国家の闇に迫ります。

ウクライナに関して言えば、2月には『国境を超えたウクライナ人』という本も発売されています。東西から国境を侵食された歴史の中で逞しく生きてきたウクライナの人々の物語。どちらも今こそ手にとりたい作品です。

作者: ミシェル・ゲルファンド
出版社: 白揚社
発売日: 2022/2/18
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文化にはルーズな文化と、ルールに厳しいタイトな文化という2種類の文化が存在しているそう。それは国々の差を産み出すと同時に時として分断をも産み出すことになります。このロジックをつかって、社会格差や組織内の対立から国際紛争までありとあらゆることを読み解こうとするのがこちら。

著者は比較文化心理学の教授。列に並ぶという行為一つをとっても国によって大きく様相が異なりますが、これを科学的な手法を使って分析しようと試みています。研究によると日本はタイトな方に分類されますが、それ以上にタイトないくつかの国があり、国名を見ると意外な気もします。それらは脅威への対策や人口密度といったことに左右されるのだとか。興味深い研究です。

作者: 岡田 憲治
出版社: 毎日新聞出版
発売日: 2022/2/25
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子どもがピカピカのランドセルを背負って入学した時から、親が直面することになるのがこのPTA問題。役員決めの沈黙や仕事の負荷、それらはまるでホラー小説を語り聞かせられるように先輩ママパパから教えられてきます。

ひょんなことからPTA会長を引き受けた政治学者が見た「自治」について考えた、笑って泣けるノンフィクション。小中学校のお子さんをお持ちのお父さん、お母さん。必読です。

作者: トレイシー・ワルダー,ジェシカ・アニャ・ブラウ
出版社: 原書房
発売日: 2022/2/15
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就職フェアでCIAにスカウトされ、対テロ工作員になって世界各地でスパイ活動をする、という映画のような本当の話。彼女はCIAでテロ対策に従事した後はFBIの特別捜査官となります。原著の発売後も大きな話題になっていますが、テロ対策という仕事の裏側に注目されただけではなく、性差別の多い職場で新しい世界を切り拓いていったという姿にも多くの声が集まっています。

作者: イアン・レズリー
出版社: 光文社
発売日: 2022/2/22
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CONFLICTEDとは衝突・対立・葛藤をかかえた緊張状態のこと。国際問題から、家庭内や友人間までそういった状況に陥ることは珍しいことではありません。この不可避な状況とどのように向かい合ったらいいのかのヒントに満ちた1冊がこちら。決して「論破」がよいわけではありません。多くの実例研究から導かれた突破法。コンフリクト・マネジメントを学んで現代社会を生き抜きましょう。

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ウクライナ危機がどのように動いていくのか、その後の世界はどうなるのか。まったく答えが見えない中、地政学関連の本やプーチン関連の本が売れています。最新の国際状況を反映した本が出てくるのはもう少し先になりそうですが、世界のこれからを読み解くためのヒントはすでに多くの本で語られています。いい本との出会いがありますように!