併せて読まれたこの一冊

これから出る本 2022年4月

古幡 瑞穂2022年3月21日

ウクライナへの軍事侵攻が始まり、書店店頭でも平和を祈る動きが広がっています。テレビでも活躍するロシア研究者の著作が重版され、ウクライナやロシアの歴史を考える本、また、地政学の本なども注目を集めています。私たちが小さい頃から慣れ親しんできた絵本『てぶくろ』はウクライナの民話であることで、平和について考えるきっかけになる絵本と話題になりました。

これから出る本にも、ウクライナ侵攻の影響が見られます。戦争について考える本や歴史の本の惹句にも、この動きを意識したものが増えて来ました。これからどんな本が出てくるのでしょう。

2022年3月18日時点の予約受注実績からこの先発売になるタイトルを抽出しノンフィクションの予約ランキングを作成しました。(日販調べ:タイトル・発売日等今後変更になる可能性があります)

ランキング上位には歴史や地理関連の書籍が目につきました。中でも注目したいのが『歴史思考』です。

作者: 深井 龍之介
出版社: ダイヤモンド社
発売日: 2022/3/30
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音声コンテンツとして人気の「コテンラジオ」を書籍化したもので、発売前から注目を集めています。最近は歴史を学ぶ事の重要性を説く本も多く売れていますが、新学期が始まる時期だけに「歴史って暗記ばっかりでイヤだな」と思う前に楽しさに出会うのは大事かもしれません。

出版社商品名著者名発売予定
年月日
PHP研究所ウイルス学者の責任宮沢 孝幸20220328
SBクリエイティブ知ってはいけない日本近現代史の正体馬渕 睦夫20220407
新潮社日本人はどう死ぬべきか?養老 孟司20220426
幻冬舎世界2.0 メタバースの歩き方と創り方佐藤 航陽20220331
講談社歴史とは靴である磯田 道史20220415
小学館池上彰の世界の見方 東欧・旧ソ連の国々池上 彰20220421
ダイヤモンド社世界史を俯瞰して、思い込みから自分を解放する
歴史思考
深井 龍之介20220331
講談社哲学人生問答岸見 一郎20220415
集英社エブリシング・バブルの崩壊エミン・ユルマズ20220325
集英社裸の大地 第一部 狩りと漂泊角幡 唯介20220325

これから出る本リストから注目作品を紹介していきます。

作者: 佐藤 航陽
出版社: 幻冬舎
発売日: 2022/3/31
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AIからNFT、そしてメタバースへと出版のトレンドが移り変わってきています。今年に入ってから「メタバース」という言葉をタイトルに置いた本が出始め、ここから先も続々本が出版されていく予定です。今もっとも注目度が高いのがこの『世界2.0』です。著者は(株)メタップスの創業者としても有名な佐藤航陽さん。メタバースとは何なのか、どんな衝撃を世の中に与えるのか、この後の世界はどうなっていくのか。最新の知見に基づいた未来予想図が展開されています。同時期にはメタバースプラットフォーム創業者の加藤直人さんの著書國光宏尚さんの著書なども発売されますのであわせて手にとってみては。

作者: フレデリック・テイラー
出版社: 白水社
発売日: 2022/3/26
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第二次世界大戦開戦前の1年間、世界中を戦火に巻き込む大きな危機が迫っていたにもかかわらず、イギリス・ドイツの両国民にとって戦争は遠い出来事だったのだそうです。そんな国民意識の中で、ポーランド侵攻が始まり、大戦への一歩が踏み出されることになりました。

まさに「誰も望まなかったのに」戦争はどうして起こったのか、です。普通の人々の日常生活の様子、心情の変化を描いた作品。今まさに読んでおくべき作品です。

作者: ギデオン・デフォー
出版社: サンマーク出版
発売日: 2022/4/4
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こちらは「国家」という視点で歴史を捉える作品です。国家がどうやって誕生し、どうやって滅んだのか、世界中から消えた48カ国のストーリーから国について考え直す滅亡国家史。もはや遠い国の話ではなくなりました。

こういった国のあり方は「会社」に置き換えて読んでみることも出来るかもしれません。これもまた「世界史が面白くなる」本のひとつでしょう。

作者: トマ・ピケティ
出版社: みすず書房
発売日: 2022/4/20
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大ベストセラーとなった『21世紀の資本』から8年。いよいよピケティの新作がお目見えします。2016年から21年にかけて寄稿した時評から抜粋し、「序文」が新たに付け加えられています。

ヨーロッパの激変、米国ではトランプ政権による分断の拡大、深刻化する気候問題。そして新型コロナのパンデミックと激動する世界でピケティは何を思い、これからの経済のあり方をどう考えたのか。その思考に迫ります。

作者: マイケル・ボンド
出版社: 白揚社
発売日: 2022/4/11
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” ナビゲーション能力は、長い進化を通して培われた人間の根源的な力

私たちは人類史上初めて、その力を手放そうとしている

そこにはどのような代償が伴うのか――“

というコピーに惹かれました。確かに、以前は空を見て、標識を見て、地図を見てどちらに進むかについて、アタマをつかって考えていましたし、なんとなくあっちだな、という意識がありました。最近では見るのは手元ばかり。どちらに進むのかどころか、どこにいるのかの把握すらナビゲーションアプリに頼っている始末です。使われなくなれば衰えるのは当たり前の事ですが、どうやらこの能力は「人間関係の理解」や「記憶」「認知症防止」などにも関係しているのだそうです。

能力が衰えることの危機は想像以上のものなのかもしれません。読み終わったら地図だけ持ってどこかに出かけたくなりそうです。

*

まん延が続くコロナ、そして世界平和は不穏な雲に包まれ、環境問題も解決の道筋が見えてきません。不安な時代、歴史や最新の技術を学び考える事を止めないこと。この環境作りがノンフィクション本の役割なのかもしれません。素敵な本との出会いがありますように。