タブーの正体!: マスコミが「あのこと」に触れない理由 (ちくま新書)
著者は惜しまれながら04年に廃刊した『噂の真相』(ウワシン)の元副編集長だ。「ウワシン」といえば、首相の買春検挙歴疑惑のスクープなどタブー知らずの中身が売りだったが、本書ではメディアと皇室、右翼、企業、芸能界との関係に踏み込み、「メディアが書けない」タブーはなぜタブーなのか、その内側に迫っている。
正直、ぱらぱらと読んだ時は、「聞いたことある話も少なくないな」と新鮮さを感じなかったのだが、よく考えれば、私、中学生の頃から廃刊まで約10年間、同誌を愛読していたのだった!すっかり忘れていたが、脳みそが未だにウワシン慣れしており、麻痺しているのだろう。著者が右翼に襲撃された事件など知らなければぶっとぶ話だ。HONZ定例会で代表の成毛が「皇室のところはよく書いたよなー」とつぶやいていたが、確かに。ウワシンでも実話誌でもなく、新書、それもちくま新書でこの内容はちょっとした驚きだ。
「ちょい読み」での紹介なので、ひとつひとつの事例への言及は避けるが、私自身がメディア村の隅っこではあるが、企業取材をする身としては、経済タブーの項などは唸ってしまう記述が多かった。いかにメディアが大企業に籠絡され、ズブズブの関係で身動きができなくなっているか。身につまされるところも少なくない。内容はよくありがちなタブー本とは一線を画し、限りなく真実に迫っている。メディアの今に興味のある方にはおススメだ。