おすすめ本レビュー 峰尾 健一
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『もっと! 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学』身近なわりに知らない、その奥深さ
なじみがあるようで想像以上に奥が深いドーパミンのはたらきについて、とっつきやすく興味深い文章で伝えてくれる一冊である。些細なできごとから人の性格の根本にいたるまで、ドーパミンのはたらきを知ることで見えてくるものは多い。ただのポピュラーサイエン……more
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『アメリカン・プリズン──潜入記者の見た知られざる刑務所ビジネス』「更生より収益性」の原理が支配する民営刑務所の実態
2020年07月28日雑誌記者である著者は、ルイジアナ州の民営刑務所のひとつ、ウィン矯正センターで2014年末から刑務官として働きながら潜入取材を敢行する。知られざるその内幕を、米国刑務所ビジネスの歴史を挟みながら解き明かしていくのが本書だ。ビジネスとして刑務所を……more
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『絶望を希望に変える経済学 社会の重大問題をどう解決するか』経済学が自分ごとに変わる本
2020年06月20日2019年ノーベル経済学賞受賞者が、移民、経済成長、気候変動、経済格差などの大きくて複雑な社会問題について切り込んでいく一冊だ。経済学って小難しくてとっつきづらい。人の心理を単純化しすぎで、実感が湧かない。そもそも経済学って、どれほど社会の役……more
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戦後初の「甲子園がない年」……だからこそいま考えたい『野球と暴力』
2020年06月01日本書は「暴力」という切り口を通して、野球界の構造問題と、それを踏まえた変革のヒントを提示する一冊だ。夏も中止が決まり、戦後初めて「甲子園がなかった年」となることが決定したこのタイミングで、あらためてあらためて読まれてほしい。タイトルからはネガ……more
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『旅のつばくろ』道中だけが旅じゃない
JR東日本が発行する新幹線車内誌「トランヴェール」で連載中の旅行エッセイから、四十一編を選りすぐって収録した一冊だ。旅先の様子やエピソードよりも、旅を通じて呼び起こされる記憶や過去の旅の回想が中心に据えられている。旅というと、行ったことのない……more
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『野球消滅』「メジャー」が「マイナー」へと変わる時、何が起きているのか
2019年11月22日スポーツライターの著者が、多くの証言と数字にあたりながら野球界の真の実態を解き明かしていく一冊だ。プレミア12で「野球離れ」が指摘されたこのタイミングで、あらためて一読をおすすめしたい。野球を題材にして「メジャー」が「マイナー」へと変化してい……more
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『習慣の力〔新版〕』変えるためのコツは、意外とシンプル
2019年07月19日習慣をコントロールしたくても、なかなかうまくはいかない。でもしくみを知って、ままならないなりに多少抵抗したい。そんな人たちのための一冊である。アルコールやニコチンといった定番から、爪を噛む癖まで。さまざまな例とともに、習慣のしぶとさ、繰り返し……more
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『食の実験場アメリカ-ファーストフード帝国のゆくえ』躍動感あふれる創造の歴史
2019年06月19日アメリカを代表するとされるスナックや料理の中には、実は非西洋にルーツを持っている例が少なくない。ポップコーンは先住インディアン由来の食べ物だし、フライドチキンは黒人奴隷と深い関わりを持っている。外部からの影響の大きさを抜きにして、アメリカの食……more
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『数学者が検証! アルゴリズムはどれほど人を支配しているのか? ~あなたを分析し、操作するブラックボックスの真実』正しく付き合うために、知っておくべきこと
2019年05月20日数学者である著者は、さまざまな研究に当たりつつ、時に自らの手でも検証しながら、現状いったいどれほどのことが可能になっているのかを調べていく。本書はその過程をまとめたものだ。大きな脅威と騒がれてきた事例も、内実を冷静に掘り起こしていくことで、実……more
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『生命科学クライシス─新薬開発の危ない現場』着実に進むために、急がば回れ
本書は「再現性」の問題に焦点を当てながら「科学が正道を踏み外すさまざまなパターン」について迫る1冊だ。生命科学の歩みは決して止まってはいないが、無駄な努力のせいで進展は遅れている。着実な前進のためにはどのような研究のかたちが望ましいのか。背後……more
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『生き残る判断 生き残れない行動』知識も準備も経験も、危機を察知できてこそ活きる
2019年01月21日災害・テロ・事件・事故。もしもの時の、とっさの判断が本書のテーマである。有事に何をすべきかを並べた、マニュアル的な内容ではない。なぜ、人は非常時に誤った判断をしてしまうのか。その背景には、人がそもそも持っているどのような思考のクセが影響してい……more
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『万引き依存症』ダメだとわかっていても、やめられない
2018年10月01日物を買うお金がない、10代の子どもの非行の入り口、転売目的のプロによる犯行、認知症の影響……。そんなありふれたイメージとは違った角度から万引きについて書かれた一冊だ。著者はアジア最大規模といわれる依存症施設のソーシャルワーカーとして、アルコー……more
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『どもる体』読む人の「しゃべる」を引き出す、触媒のような本
2018年06月21日『目の見えない人は世界をどう見ているのか』、『目の見えないアスリートの身体論』などの著作で知られる伊藤亜紗氏による新作だ。「どもる」という身体的経験を、乗り越えるべき症状としてではなく、体に起こる現象として観察したい。そんな視点から書かれた本……more
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『コンビニ外国人』身近だけどよく知らない、ではすまされない
2018年05月19日もはや毎日のように顔を合わせている人たちについての話だ。数多くのインタビュー、数字から見る規模感と潮流の変化、そして社会的な受け入れ体制のいびつな現状など、外国人労働者をとりまく状況が200ページちょっとで大づかみできる。読めば、身の回りの生……more
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『スポーツ国家アメリカ - 民主主義と巨大ビジネスのはざまで』米国発祥スポーツを通して見るアメリカ
2018年04月19日本書はアメリカ発祥のスポーツを通して、米国社会の歴史を眺めていく1冊である。焦点が当てられるのは、野球・バスケットボール・アメリカンフットボールだ。これら競技の成り立ちには、その時代のムードが確かに反映されており、後々もアメリカ社会の変化と密……more