おすすめ本レビュー 村上 浩
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『なぜ老いるのか、なぜ死ぬのか、進化論でわかる』 自然選択は、年を取ると引退する
この200年間における人類の平均寿命の伸長度合いには目を見張る。1840年を起点にとれば、我々の平均寿命は1時間あたり15分も伸び続けており、この200年で倍になった計算となる。しかしながら、最先端テクノロジーをもってしても不老不死の実現は愚……more
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『南シナ海 アジアの覇権をめぐる闘争史』 アジアの行く末を握る場所
BBCなどで活躍したジャーナリストである著者は膨大な資料調査と現地での取材を基に、歴史、経済、国際法、政治、軍事など多角的な視点から複雑に絡み合った南シナ海の現状を少しずつ解きほぐしていく。状況を詳細に描写するテンションの高い筆致でこれでもか……more
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『馬を飛ばそう』 創造的プロセスなどない、あるのは創造的な成果だけだ
2016年01月12日P&Gに勤務する普通のサラリーマン時代にIoT(モノのインターネット)のコンセプトを創りあげた著者は、自らの革新的な創造体験を通して、創造にはあまりにも多くの誤解がまとわりついており、その本質が理解されていないと痛感した。そして、本書では創造……more
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『アメリカの真の支配者 コーク一族』 石油から思想までを操る華麗過ぎる一族
世界最強国家アメリカで、最も影響力を持つのはどの一族だろう。20数年間で2人の大統領を輩出し、さらに3人目の大統領候補を送り出そうとしているブッシュ家だろうか。世界最大の石油企業スタンダード・オイルに始まり、金融や軍事関連企業を次々と傘下に……more
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『ヒトとイヌがネアンデルタール人を絶滅させた』 ヒトは史上最強のインベーダー
本書は「なぜネアンデルタール人が絶滅し、初期現世人類は絶滅しなかったのかという人類学の大問題」に、最新の研究結果と巧みな想像力で迫っていく、知的興奮に満ちた一冊である。原書である『The Invaders』は2015年3月に出版されたばかりで……more
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『宇宙背景放射 「ビッグバン以前」の痕跡を探る』 実験物理学者の戦国時代
2015年11月12日実験物理学者である著者は、宇宙誕生の謎を解き明かすための研究現場が実際にはどのようなものか、理論家がよりどころとするデータはどのように生成されているのか、実験家と理論家がどのような緊張関係のなかで互いを高めあっているのか、そして実験物理学者た……more
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『灯台の光はなぜ遠くまで届くのか 時代を変えたフレネルレンズの軌跡』 新たな科学が新たな技術を、新たな技術が新たな社会をもたらした
本書は、暗く危険だった海に、希望の光を灯した画期的なレンズの発明を巡る物語である。この物語には、光とはなんであるかという自然科学的探求、科学者たちの縄張り争い、最新の科学的知見の実用製品への落とし込み、ラボレベルから量産段階へ移行することの困……more
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『〈お受験〉の歴史学 選択される私立小学校 選抜される親と子』 私立小学校を知れば日本の教育が見えてくる
本書では、どのような親子がどのような価値を求めて私立小学校を選択しているのか、私立小学校はどのような試験でどのような親子を選抜しているのか、という選択と選抜の観点を軸としながら多角的に私立小学校を分析していく。明治初期に誕生した私立小学校の発……more
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『量子力学で生命の謎を解く 量子生物学への招待』 生命は量子の力を利用しているのか?
本書では英国サリー大学理論物理学教授ジム・アル=カリーリと同分子生物学教授ジョンジョー・マクファデンが、生命と量子力学の驚くべき関係を示す様々な事例を、量子力学と古典的物理学の世界がどのように異なるかという解説とともに教えてくれる。量子力学と……more
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『人体600万年史 科学が明かす進化・健康・疾病』 人体はどこからきたのか 人体はどのようなものか、人体はどこへ行くのか
人間の進化と健康と病を中核的テーマとした本書は、3部構成となっている。第一部“サルとヒト”は、チンパンジーともネアンデルタール人とも異なるヒトの身体がどのような環境に適応しながら現在の姿となったのかを追っていく。人体が進化してきた600万年の……more
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『ガイトナー回顧録 金融危機の真相』 米国財務長官がモラルを犠牲にしてでも守りたかったものとは?
マスコミの前でしゃべることを好まなかったガイトナーが、危機対応の全容を600頁超の本としてまとめあげたのは、世界規模の金融危機にはどのような規制が有効だったか、監督機関にはどんな権限が必要なのか、押し寄せる無数の課題にどのように優先順位をつけ……more
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『ザ・フィフティーズ1: 1950年代アメリカの光と影』 アメリカンドリームはこうして創られた
本書のテーマは1950年代アメリカ。この時代に、ファストフード、郊外の集合住宅、テレビ、性の開放、米ソによる核開発やショーアップされた政治など、その後の社会の基礎となるものが次々と生み出されたのだ。知れば知るほどに驚かずにはいられないほど、大……more
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『統計はウソをつく アフリカ開発統計に隠された真実と現実』 こうして数字はつくられる
2015年08月12日2007年に博士論文の現地調査のためにザンビアを訪れた著者は、「アフリカ諸国で国民所得推計がどのように作成されるかを調べようとして」衝撃を受けた。ザンビア最大の都市ルサカにある中央統計局のほとんどの部屋は暗く、多くのコンピューターは所在不明、……more
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『失われてゆく、我々の内なる細菌』 ピロリ菌だって役に立つ?
近年の医学の進歩は、人類に多くの幸福をもたらした。1850年のアメリカでは4人に1人の赤ん坊が1歳の誕生日を迎えることができなかったが、今日のアメリカでは1歳前に死亡する赤ん坊は1000人のうち6人に過ぎないという。出産で死亡する女性も激減……more
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『分子レベルで見た触媒の働き 反応はなぜ速く進むのか』 見えない世界が、未来を変える
2015年07月02日本書では、触媒を用いた化学反応を「原子・分子のレベルでどうなっているか」を理解することを目指している。前半部分では化学反応を考えていくさいに必要となる化学平衡や活性化エネルギーなどをおさらいしてくれるので、化学から遠ざかっていても心配すること……more