おすすめ本レビュー 塩田 春香
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たまに死者も出る、この特殊な趣味の行方は……?『こいわずらわしい』
「楽しくて読みやすいなあ~」と、のほほんと読み進めていると、突然鋭く心をぶっ刺してくる油断のならなさ。おもむろに登場するマイナー生物の生態。中毒性があるその筆致に、彼女の新刊が出たとなれば、それが恋愛コラムだろうが通販カタログだろうが、もう読……more
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楽しくて、切なくて、愛おしい『アレックスと私』
「全米が泣いた!」――ひと昔前のハリウッド映画の陳腐な宣伝のようだが、本書はアレックスの死によってまさに「全米が泣いた」場面から始まる。ニューヨーク・タイムズ紙をはじめ、さまざまなメディアが彼の訃報を伝え、著者のもとには多くの悲しみの声や励ま……more
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裸で出っ歯の珍奇なネズミが、人類を救う? 『ハダカデバネズミのひみつ』
「そんな珍奇なネズミだけで、一冊分もネタがあるの?」と、思われるだろうか。とんでもないことである。今すぐデバに伏して謝ってほしい。キョーレツな見た目にばかりに関心が向かいがちだか、じつはデバは、もしかしたら人類を救う可能性を秘めているかもしれ……more
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『史上最恐の人喰い虎――436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター』悲しき猛獣は、なぜ生まれたか?
チャンパーワットの人喰い虎――436人を殺害したとされる雌のベンガルトラの足跡を追い、ジム・コーベットという伝説のハンターとの対決を描いた記録である。また、トラが人喰いへと追いやられていった背景を丹念に検証した、社会派ノンフィクションの顔も併……more
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絶滅寸前のインド仏教復活!その立役者は……『世界が驚くニッポンのお坊さん 佐々井秀嶺、インドに笑う』
2019年06月23日本書で描かれるのは、今もそのインド仏教の頂点に立つ、佐々井秀嶺(しゅうれい)氏の生き様である。 1935年に岡山県で生まれ、32歳でインドに渡った。自殺未遂を繰り返した青年時代、劇的な出来事に導かれてインドに渡り、暗殺者につけねらわれな……more
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生きて帰らなければなりません、絵を描くために『無言館――戦没画学生たちの青春』
かれらは生きたかったにちがいない。生きて絵を描きたかったにちがいない。そうした思いが何十点も集まれば、きっと何か、ぼくたちの想像をこえた大きな声になってきこえてくるような気がする。--戦争で若くして亡くなった画学生たちの作品を全国の遺族から預……more
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ほら、あなたの隣にも! 見てびっくりのサイズ感『リアルサイズ古生物図鑑 古生代編』
2018年08月08日本書は古生物図鑑である。が、これまでの図鑑とは一味違う。とっくの昔に絶滅してしまった古生物たちが現代の私たちの生活シーンにこっそりと(時には堂々と)まぎれこむことで、「え、あの生物はこんなに大きかった(小さかった)の?!」というサイズ感をガツ……more
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死者と共にあること『私の夢まで、会いに来てくれた――3.11 亡き人とのそれから』
もう一度会いたい。どうしても聞きたいこと、伝えたいことがある。でも、どうすれば亡くなった人と交信できるのか?――そのひとつの答えが、「夢」。本書は学生たちが震災で家族や友人などを亡くした人たちに取材して、故人が出てきた夢について語ってもらった……more
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絶望的にヒーロー不在『八甲田山 消された真実』フィクションとノンフィクションと
本書は生存者の証言や当時の資料などを独自に調査して事故の状況やその背景に迫ったものだが、じつは著者も元自衛官で、慰霊のための八甲田演習に参加している。厳冬期の山の過酷さを実体験として知るゆえだろう、行間ににじむのは無謀な計画の実態や軍の隠蔽体……more
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オスはみーんな、二重人格?『歌う鳥のキモチ』小鳥のびっくり私生活
鳥類の90%以上は一夫一妻制といわれている。ところがじつは、一夫一妻の種でも1回の繁殖で産む卵の父親がすべて同じとは限らない。クロツグミの場合は毎日交尾をして1日ひとつずつ、合計4個の卵を産むことが多い。つまり、夫が4日間妻を守りきればすべて……more
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『人を襲うクマ』すべて自己責任、なのか?
被害者の男性は「助けてー」という悲鳴を聞いて現場に駆けつけ、倒れていた女性の背中にのしかかるクマの鼻を杖で殴りつけた。女性を助けたい一心だった。次の瞬間、クマは驚くべき速さで立ち上がり、男性の頭部へ前脚をふりおろした。…more
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人は見た目が、何パーセント?『顔ニモマケズ どんな「見た目」でも幸せになれることを証明した9人の物語』
2017年04月12日もしも顔などの見た目に大きなあざや変形などの目立つ症状がある場合、ネガティブな人生が約束されてしまうのか? 本書は、そうした症状をもつ「見た目問題」の当事者9人へのインタビュー集である。でも、「障がいや病気のある人が頑張って、健常者が感動する……more
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何のために働くか、人としてどうありたいか『奇跡の醬 陸前高田の老舗醤油蔵八木澤商店再生の物語』
本書は、八木澤商店の人たちが廃業の危機に直面し、次々に降りかかる困難と対峙しながらも、再び醤油を造り始めるまでの記録である。しかしそれは、一企業の事業再生物語にとどまらない。壊れてゆく社会のなかで、本書に登場する人たちの姿は、読む者に自身の生……more
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紙がない!どうしよう!?……安心してください、『葉っぱのぐそをはじめよう』
すべては、快適で自然にやさしい野ぐそのために。紹介されている植物は60種を超え、タンポポ、ヨモギ、コナラなど身近な野生植物から、カキ、キウイなどの果樹、アジサイやアサガオなどの園芸種まで、じつに多様。やわらかい草の葉には硬い木の葉で裏打ちする……more
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かわいいあいつも、食べるとおいしい。『世界のへんな肉』アルパカもビーバーも、肉。
本書は3年かけて世界一周の旅に出た著者が、いろんな国で出会った心温まる肉とのふれあい……じゃなくて、動物とのふれあいと、そのお肉の味を、おおらかな文章とゆるいイラストでたっぷり紹介してくれます。著者はアルパカのステーキやアルマジロのブラウンシ……more