おすすめ本レビュー 首藤 淳哉
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『2016年の週刊文春』個人的2020年のベスト・ノンフィクションはこれ!
文藝春秋は、「文藝」と「春秋」がくっついた会社だとよくいわれる。もちろんこれはふたつの会社が合併したということではない。文藝は文字通り文芸作品のこと、春秋は日々の出来事が積み重なった年月を指す。文藝春秋という会社は、文芸と日々の出来事を追うジ……more
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『ノーベル平和賞の裏側で何が行われているのか?』世界で最も栄誉ある賞 その知られざる舞台裏
2020年12月12日著者は90年から2014年まで25年間にわたりノーベル研究所所長とノーベル委員会事務局長を務めた。受賞者を決定する瞬間に居合わせただけでなく、受賞者と連絡を取る役割も担っていた。委員会はどのように受賞者を選んでいるのか。受賞者たちはどんな人物……more
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『声が通らない!』居酒屋で店員に声を届かせたい!
2020年11月30日こんな経験はないだろうか。ガヤガヤと混み合う居酒屋で「すいませーん」と店員に声をかける。だが、まったく気づいてもらえない。もう一度叫んでみても結果は同じ。世間には「声が通らない」ことに悩む人たちがいる。たしかに特定の人に向けて発せられた言葉が……more
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『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』
大統領の誕生日は国家機密!?政治家は孤独な職業だと言われる。未来がどうなるかわからないにもかかわらず、たったひとりで決断を下さなければならないのだから、それも当然かもしれない。政治家という人種は多かれ少なかれ占いやまじないなども含めた「宗教的なるもの」と親和性があるので……more
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『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』
44年後に初めて解き明かされた事件の真相!全日空が導入を予定していた旅客機の選定に絡み、アメリカのロッキード社から巨額の金が日本の政界関係者に渡っていたことが発覚し、田中角栄元首相をはじめ多数の逮捕者を出した「ロッキード事件」。だが、これほど有名な事件でありながら、実はその全容は解明……more
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『宇宙考古学の冒険 古代遺跡は人工衛星で探し出せ』最新技術と地道な発掘の組み合わせが起こす革命
2020年11月07日「衛星考古学」や「衛星リモートセンシング」とも呼ばれる宇宙考古学は、人工衛星などで取得したデータを解析し、地中に埋もれている人工物を見つけ出す最先端技術である。この技術が、考古学にとんでもない革命を起こしている。本書はその最前線の熱気を伝える……more
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『地方選 無風王国の「変人」を追う』
米大統領選にも負けない!日本の地方選挙の面白さ2020年11月06日「84.2%」これは、町村長の再選率の数字である。この数字はまた、いかに「無風状態」の自治体が多いかも示している。対立候補も立たず、無投票で現職が再選を重ねてしまう。こんな状態で、民意がちゃんと地方自治に反映されていると言えるのだろうか。本書……more
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『諏訪式。』日本有数のクリエイティブな土地の秘密
長野県の諏訪は、諏訪湖を中心に八ヶ岳や霧ヶ峰も含んだ広大な地域だ。中央構造線とフォッサマグナが交わるところであり、縄文の時代から人々が暮らし、諏訪信仰がいまも息づく地でもある。驚くことに、この諏訪地域には、2000社を超える「ものづくり企業」……more
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『剱岳—線の記』古代日本のファーストクライマーを探せ!
新田次郎の『劒岳〈点の記〉』は、日露戦争直後、前人未到とされた北アルプスの剱岳(標高2999m)の登頂に挑んだ測量官を描いた山岳小説の傑作である。 剱岳は当時未踏峰とされ、日本陸軍参謀本部陸地測量部の柴崎芳太郎率いる測量隊が命がけの登頂に臨……more
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『コロナ禍日記』未知なる状況下の日々が記録されたアンソロジー
2020年10月03日本書は日本および世界各地で暮らす17人がコロナ禍に見舞われた日々を綴った日記のアンソロジーである。登場するのは小説家、漫画家、ミュージシャン、評論家、店舗経営者ら。コロナ関連の日記のアンソロジーは他にも出版されているが、本書の魅力は一人ひとり……more
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『人新世の「資本論」』未来を構想する新しい思想の誕生!
2020年09月23日この興奮が醒めないうちに書いておきたい。凄い本を読んだ。マルクスを現代にアップデートさせた研究で世界的な注目を集める俊英・斎藤幸平の『人新世の「資本論」』である。新書の世界には何年かに一度、画期的な本が現れる。物事の見方に新しい方向から光を当……more
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『伝説の「サロン」はいかにして生まれたのか コミュニティという「文化装置」』リモートワークの時代に創造的な場をどう作るか
2020年08月29日特定の時代や場所に、すごい才能の持ち主がなぜか集まることがある。新しい芸術や思想を生み出した19世紀末のウィーン、あるいは1920年代のパリ。歴史をひもとけばいくらでも例を挙げることができる。 本書はクリエイターたちが特定の場所に集まる……more
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『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』世界はくだらない仕事にあふれてる
2020年08月26日待ちに待った邦訳がようやく出た。デヴィッド・グレーバーの『ブルシット・ジョブ』である。「ブルシット・ジョブ」とは、「クソどうでもいい仕事」のことだ。 もう少し丁寧に説明すると、「なんのためにあるのかわからない、なくなっても誰も困らない仕事」……more
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『京都に女王と呼ばれた作家がいた』男たちはなぜ彼女に魅了されたのか
この本の帯は傑作だ。そこにはこう書かれている。 「京都で人が殺されていないところはない」 京都に住み、京都を舞台にしたミステリーを書き続けた作家といえば、山村美紗である。22年間の作家生活の中で200冊以上の本を出し、売り上げは3200万……more
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『わかりやすさの罪』「すぐにわかる!」はそんなにいいことか
著者は「見えてしまう人」だ。人々が憑かれたように何かに夢中になっている時、著者の目はついつい他人が見落としていることを見つけてしまう。 今回、著者に見えてしまったのは、「わかりやすさ」がやたらと求められる風潮である。注意深く周りを見回してみ……more