おすすめ本レビュー 首藤 淳哉
-
『吃音 伝えられないもどかしさ』誰にでも居場所がある社会をつくるために
日本では100万人ほどが吃音の問題を抱えているとみられる。本書は、自らも吃音に悩んだ経験を持つ著者が、同じ問題を抱えるたくさんの人々が懸命に発した“言葉”に丹念に耳を傾けたノンフィクション。当事者のデリケートな内面が繊細な手つきで掬い上げられ……more
-
『スーパーカブは、なぜ売れる』世界で1億台! 超ロングセラーの秘密
2019年02月09日なぜスーパーカブはこれほどまでに世界で支持されるのか。本書はその秘密を探るために、ヨーロッパや東南アジア、南米諸国にまで足を運んで徹底取材した労作だ。スーパーカブが支持される理由。それは庶民のモビリティとは何かをとことん追究したことにある。…more
-
『肉声 宮崎勤30年目の取調室』初めて明かされた「肉声」が語る真実
2019年01月29日1988年8月から翌年の6月にかけて、埼玉と東京で相次いで幼い女の子が誘拐され、殺害される事件が起きた。「東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件」だ。事件は劇場型犯罪の様相を帯び、女児の遺体を切断し遺棄するという残虐な手口は世間を震撼させた。だが逮捕……more
-
『ルポ企業墓 高度経済成長の「戦死者」たち』墓からみた日本人と企業
2018年11月29日長いこと本を読んでいると、性格が素直じゃなくなる。新しい本を手に取っても、「この手のテーマ、前も読んだことあるな、フン!」などとついつい思ってしまうのだ。すれっからしもいいところである。 だがこの本には驚かされた。まさかこんな切り口があ……more
-
『いま、息をしている言葉で。「光文社古典新訳文庫」誕生秘話』なぜ現代に古典が蘇ったのか
2018年11月18日2006年9月、創刊8タイトルがずらりと店頭に並んだのを目にした時の興奮はいまだにおぼえている。新しい文庫レーベルの誕生に胸躍らせたのは、学生時代のちくま学芸文庫の創刊以来かもしれない。白地にシンプルな線画が配された洗練されたカバーデザイン、……more
-
『ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治』ごみ収集の現場は、ティール組織そのもの
2018年11月09日偶然見つけた一冊は、『ごみ収集という仕事 清掃車に乗って考えた地方自治』。地方自治や行政学を専門とする研究者が、新宿区で9ヶ月にわたって清掃員としてごみ収集の現場を体験した記録だ。この時点でもう、面白そうな雰囲気ビンビンである。…more
-
『サバイバルボディー』短パン姿でキリマンジャロに登れ!体当たりサイエンス・ノンフィクション
2018年10月09日本書の著者スコット・カーニーは、人類学者でもあるジャーナリストで、中年にさしかかり体型の変化などを感じ始めていた折、偶然ネットで裸同然の男が氷河の上に座っている画像を発見します。本書にも収められていますが、海水パンツ1枚で氷の上で冥想するホフ……more
-
『死に山 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相』ロシア史上最悪の遭難怪死事件に挑む
2018年09月07日一般に、本は読めば読むほど物知りになれると思われがちだが、実際は逆だ。読めば読むほど、世の中はこんなにも知らないことであふれているのかと思い知らされる。その繰り返しが読書だ。 「ディアトロフ峠事件」をぼくはまったく知らなかった。これは冷……more
-
『消された信仰「最後のかくれキリシタン」-長崎・生月島の人々』世界遺産から黙殺された人々
2018年07月05日一時の熱狂的なブームは去ったとはいえ、世界遺産への登録実現は、観光客を呼びたい地方自治体にとっては悲願だろう。今回も2015年の申請では登録に至らず、資料の内容を修正した上で再挑戦し、登録へとこぎつけた。 実はこの再挑戦の過程で、不可解……more
-
『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる
2018年05月21日「大谷翔平」はどのようにして生まれたか。その秘密の一端を解き明かしてくれるのが、『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』だ。著者は大谷が15歳の時からコツコツと取材を続けてきたジャーナリスト。家族にも信頼されているようで、大谷家のリビングに招き……more
-
『遅刻してくれて、ありがとう』加速の時代に「ほどほどの人生」をいかに取り戻すか
2018年05月14日本書でフリードマンが目をつけるのは、「加速化」だ。世界はいま信じがたいスピードで変化している。その速さは私たちの思考や制度が追いつかないほどだ。フリードマンによれば、その節目となった歴史的な年は2007年だったという。フリードマンはこの年以降……more
-
『宿命 警察庁長官狙撃事件 捜査第一課元刑事の23年』「真犯人」はなぜ封印されたのか
2018年04月24日あの日、あなたはどこで何をしていただろうか−−。1995年(平成7年)3月20日。警察担当の記者だったぼくは警視庁にいた。こんなふうに当時の記憶が一挙に甦ってきたのは、『宿命 警察庁長官狙撃事件捜査第一課元刑事の23年』を読んだからだ。平成の……more
-
『経済学者、待機児童ゼロに挑む』難攻不落の社会問題への挑戦
2018年04月04日本書はみずからも待機児童問題に苦しめられたことがある経済学者が、行政の最前線でこの問題と格闘した経験を記した当事者ノンフィクションだ。問題解決のヒントが多数示されている上に、小池都政の興味深い内側も明かされている。読んで面白く、実践的なアイデ……more
-
『アーカイブズが社会を変える 公文書管理と情報革命』事実の積み重ねが未来をつくる
2018年03月20日実はこの分野についてわかりやすく解説してくれる本は少ない。そんな中、多くを教えられた一冊が『アーカイブズが社会を変える 公文書管理法と情報革命』松岡資明(平凡社新書)だ。公文書管理法施行のタイミングにあわせて出版された古い本だが、非常に重要な……more
-
『ルポ 川崎』リバーズエッジから見る日本の未来
2018年02月21日本書の取材のために著者は毎回、自宅から多摩川を渡って対岸の川崎へと赴いていたという。やがて行きつけの店ができ、そこで知り合った友人たちの紹介で次々と取材の輪がつながっていった。そして川崎が馴染みの街になるにつれて、そこで起きている問題が、自分……more