おすすめ本レビュー 首藤 淳哉
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『分水嶺』専門家たちの葛藤を描いた傑作ノンフィクション
本書は、未知の新型コロナウイルスに立ち向かった「専門家会議」の内部で何が起きていたかを徹底取材した傑作ノンフィクションである。雑誌『世界』で大きな話題を呼んだ連載がついに単行本になった。著者は現代を代表するノンフィクション作家のひとりだが、本……more
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一気読み必至の警察ノンフィクション!『警視庁科学捜査官』
地下鉄サリン事件の翌年、著者は警視庁史上初の科学捜査官に任命された。科学捜査の必要性は昔から叫ばれてきたものの、これまではスローガンの域を出ることはなかった。だがオウム真理教事件が状況を変えた。なにしろ教団は化学プラントを持ち、毒ガスや細菌兵……more
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『福島モノローグ』他者の言葉に耳を澄ます 花びらのように声を拾う
2021年04月03日本書の著者いとうせいこう氏は、東日本大震災の死者をテーマにした小説『想像ラジオ』を書いたのをきっかけに、福島を訪れて人々の話に耳を傾けるようになった。本書は著者が聞き取ったさまざまな声をまとめたものだが、手に取った人は少々驚くかもしれない。著……more
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『「低度」外国人材』日本社会が依存する外国人はどんな人たちなのか
2021年03月31日「人材」という言葉がちょっと苦手だ。どうもこの言葉には人をスペックだけでとらえているようなニュアンスを感じてしまう。使えるか使えないか、そんな限られた側面だけでしか人間をとらえていないような。だから「高度外国人材」という言葉を目にした時はドン……more
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『日本の包茎』作られた「恥ずかしさ」をめぐって
「包茎は恥ずかしい」という感覚はどこから来たものなのだろうか。なぜ包茎は恥ずかしいとされるようになったのだろうか。いや、それ以前に、そもそも包茎って恥ずかしいものなのか。本書はこうした疑問に答えてくれる一冊だ。日本人男性の多くは包茎を恥ずかし……more
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『メンター・チェーン ノーベル賞科学者の師弟の絆』オンライン時代にあえて読みたい「密」な関係の物語
2021年02月27日科学の世界では、濃密な「メンターと弟子」の関係が今も生きている。弟子はメンターから研究テーマへのアプローチ方法などを学ぶだけではない。時を忘れて共同作業に熱中し、まるで同志のように発見の喜びを分かち合うこともあれば、競争相手として火花を散らす……more
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地図の世界がいまアツい!『地図づくりの現在形』
2021年02月26日読書の楽しみは、煎じ詰めれば、「これまで知らなかったことを知る」ことにある。その喜びは何物にも代えがたい。だから本好きにとって最高の本というのは、書かれていることが「知らないことだらけ」の本なのです。本書はまさにそういう一冊だった。店頭で思わ……more
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『鬼才』不世出の編集者の知られざる生涯
「◯◯の天皇」という形容がある。出版界にはかつてこの呼称がぴたりと当てはまる人物がいた。 「新潮社の天皇」、齋藤十一である。齋藤は伝説の編集者だ。その業績でもっとも有名なのは雑誌ジャーナリズムへの貢献だろう。1956年(昭和31年)に『週刊……more
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アメリカ発「私たち」のムーブメントが時代を変える『Weの市民革命』
2021年01月26日アメリカは巨大な国だ。陰謀論者や科学を信じない人は日本にもいるが、その層の厚さは日本の比ではないだろう。連邦議事堂襲撃事件で私たちが目にしたのは、そうした人々のほんの一部に過ぎない。だが、愚かな連中が存在を誇示すればするほど、反対側から異議を……more
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『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』二児の母の小さな挑戦が、まちを大きく変えるまで
2021年01月23日本書の著者も結婚を機に流山市に移り住んだ一人だ。移住してしばらくはビジネスパーソンとして忙しい毎日を送っていたが、第一子の出産後育児休業に入ったのをきっかけに、地域が抱える課題にも関心を持つようになった。そしてある日、ふと妄想を抱く。その妄想……more
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『2016年の週刊文春』個人的2020年のベスト・ノンフィクションはこれ!
文藝春秋は、「文藝」と「春秋」がくっついた会社だとよくいわれる。もちろんこれはふたつの会社が合併したということではない。文藝は文字通り文芸作品のこと、春秋は日々の出来事が積み重なった年月を指す。文藝春秋という会社は、文芸と日々の出来事を追うジ……more
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『ノーベル平和賞の裏側で何が行われているのか?』世界で最も栄誉ある賞 その知られざる舞台裏
2020年12月12日著者は90年から2014年まで25年間にわたりノーベル研究所所長とノーベル委員会事務局長を務めた。受賞者を決定する瞬間に居合わせただけでなく、受賞者と連絡を取る役割も担っていた。委員会はどのように受賞者を選んでいるのか。受賞者たちはどんな人物……more
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『声が通らない!』居酒屋で店員に声を届かせたい!
2020年11月30日こんな経験はないだろうか。ガヤガヤと混み合う居酒屋で「すいませーん」と店員に声をかける。だが、まったく気づいてもらえない。もう一度叫んでみても結果は同じ。世間には「声が通らない」ことに悩む人たちがいる。たしかに特定の人に向けて発せられた言葉が……more
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『黒魔術がひそむ国 ミャンマー政治の舞台裏』
大統領の誕生日は国家機密!?政治家は孤独な職業だと言われる。未来がどうなるかわからないにもかかわらず、たったひとりで決断を下さなければならないのだから、それも当然かもしれない。政治家という人種は多かれ少なかれ占いやまじないなども含めた「宗教的なるもの」と親和性があるので……more
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『ロッキード疑獄 角栄ヲ葬リ巨悪ヲ逃ス』
44年後に初めて解き明かされた事件の真相!全日空が導入を予定していた旅客機の選定に絡み、アメリカのロッキード社から巨額の金が日本の政界関係者に渡っていたことが発覚し、田中角栄元首相をはじめ多数の逮捕者を出した「ロッキード事件」。だが、これほど有名な事件でありながら、実はその全容は解明……more