おすすめ本レビュー 山本 尚毅
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『社会問題とは何か なぜ、どのように生じ、なくなるのか?』こんなを教科書を10代の頃に読みたかった!
いくつかの出版社から社会問題についての本を書いてほしいと依頼されていた著者は、いつもお決まりの文句で断っていたそうだ。「私が書きたい本は、あなたが出版したい本ではありません。それに私は、あなたが出版したいような本は書きたくないのです」…more
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『患者の話は医師にどう聞こえるのか』コミュニケーションにこんなにエビデンスがあるのか!
本書はエビデンスを並べて、一つの事実を高らかに主張するタイプの本ではない。医師と患者、双方からのストーリーを聞くことで、チグハグになっている診療室でのコミュニケーションを浮き彫りにする本である。それと同時に、医師と患者のコミュニケーションが持……more
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『カフェから時代は創られる』パリのカフェ文化と天才以前の天才
レーニン、トロツキー、ピカソ、マネ、ヘミングウェイ、サルトル、藤田嗣治、ボーヴォワール、後に天才と呼ばれる彼らが、まだ何者でもないころ、通いつめ議論した場所がある。パリのカフェ、モンパルナス界隈のドゥ・マゴやロトンド、モンマルトル界隈のラパン……more
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『贈与の系譜学』純粋な贈与を考える知的冒険
本書が面白いのは、真に純粋な贈与の思索を深めていることである。それは、かけがえのない唯一の最愛のものを贈ることであり、見返りや返礼をまったく求めないことである。そんなことはあるのだろうか。日常的に行うプレゼントや冠婚葬祭のお祝いや香典には、お……more
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『直感で発想 論理で検証 哲学で跳躍』白黒はっきりつける決断に
2020年08月10日タイトルが結論である。装丁は黒を背景に白文字、力強いフォント、白と黒を反転させた帯。脱線のない文章で、余計な虚飾もなく、淡々と展開される。表題の結論の骨格に、4人の経営者の物語で肉付けしていく。安藤百福、小倉昌男、本田宗一郎、西山彌太郎、それ……more
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『人類学とは何か』分けられない人間性に取組む学問として
「他者を真剣に受け取ること」を人類学の第一の原則にすえ、ここから人類学がどのように未来を切り拓いていけるのか、人類学はどうあるべきなのか、その論を開いていく。フィールドでの経験や思索の断片が散りばめられ、話は大きく広がっていくいっぽうである。……more
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『旅の効用 人はなぜ移動するのか』STAY HOMEのGWは本を読んで、メンタルタイムトラベルする
2015年には全世界でのべ12億人が外国旅行をしたが、これは1950年の48倍に相当する数である。過去に3度の経済危機で海外旅行者は減ったことはあったが、今回のコロナ禍は、歴史に残る減少幅になるだろう。…more
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『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』あえて、幼い子どもがいる家庭にすすめたい
新たな地平を開拓する学術書でもなく、悩みを解消する自己啓発書でもなく、武器を与えるビジネス書でもない。ジャンルわけは難しいが、誰に贈りたい本かはすぐに思い当たる。子どもが生まれ数年経過し、言葉を紡ぐ時間もなく、必死に日々をやりくりする共働き世……more
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『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える 』イノベーションに今、何が起きているのか
イノベーションは、意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉として、多用されています。日本企業の「有価証券報告書」を調べると、1,100社以上がイノベーションという言葉を用いています。この10年で4倍以上(……more
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『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい
本書は、現在のペアレンティングと呼ばれるものの考え方は、科学的、哲学的、政治的な観点から、そして人の生活という面から根本的に誤りであると主張している。巷にあふれるハウトゥー本をぶった切る。自分が子育てハウトゥーに毒されていないかをチェックする……more
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『SHIFT:イノベーションの作法』あたまが自然と動きだす論文集
本論文集にある素晴らしい要素は、「どうすれば、学ぶものが教えるものを超えられるのか」という問いを立て、具体的な解を出していることだ。育成の本質を教える側が持つナレッジを学ぶ側にダウンロードすることと定義し、ナレッジを「やるべきこと」と「やり方……more
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効率より想像を探究する 3冊
どんな時代にも想像力は大事な意味を持つが、対局にある「効率」に打ち負かされる。効率はわかりやすく、想像力はわかりにくい。さらに、想像力はつかみどころがなく扱いが難しい。働き方改革で、わかりやすい業務の効率化が主要な施策で、想像力の出番はほぼな……more
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『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』学ぶことの遠い将来を見定める
学びや教育を題材にした書籍に多いパターンは、起こっている問題を分析した後に、あるべき姿や改革案を提案する本である。しかし、本書はそのような種類の書籍とは一線を画し、理論的な背景とそれを具体化したアイデアとその実践で敷き詰められている。…more
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『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』温故知新の読後感
2019年01月28日記憶の不思議を医学や脳・神経科学などから解説するサイエンス本は所狭しと本屋に並んでいるが、記憶術の歴史的なコンテクストを追いかけた本など、ほとんど見たことがない。この類まれな知的探検は古代ギリシャ人たちの物語からはじまり、18世紀に記憶術が廃……more
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『文系と理系はなぜ分かれたのか』単純だが、悩ましい分類のこれまでとこれから
日本の高校生の多くは、文系か理系かの二択を突きつけられる。本書を読んで、よりよい選択ができるようになるかは読み手次第だが、知らないうちに染み付いた常識を疑い、文系・理系のバイアスを外すことはできるだろう。必要なときに、必要なことを学ぶジャスト……more