おすすめ本レビュー 山本 尚毅
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『野生化するイノベーション 日本経済「失われた20年」を超える 』イノベーションに今、何が起きているのか
イノベーションは、意味のあいまいなままに、いかにも新しい内容を伝えているかのように思わせる言葉として、多用されています。日本企業の「有価証券報告書」を調べると、1,100社以上がイノベーションという言葉を用いています。この10年で4倍以上(……more
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『思いどおりになんて育たない: 反ペアレンティングの科学』あれこれ子育てに悩んだら、真っ先に読んだらいい
本書は、現在のペアレンティングと呼ばれるものの考え方は、科学的、哲学的、政治的な観点から、そして人の生活という面から根本的に誤りであると主張している。巷にあふれるハウトゥー本をぶった切る。自分が子育てハウトゥーに毒されていないかをチェックする……more
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『SHIFT:イノベーションの作法』あたまが自然と動きだす論文集
本論文集にある素晴らしい要素は、「どうすれば、学ぶものが教えるものを超えられるのか」という問いを立て、具体的な解を出していることだ。育成の本質を教える側が持つナレッジを学ぶ側にダウンロードすることと定義し、ナレッジを「やるべきこと」と「やり方……more
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効率より想像を探究する 3冊
どんな時代にも想像力は大事な意味を持つが、対局にある「効率」に打ち負かされる。効率はわかりやすく、想像力はわかりにくい。さらに、想像力はつかみどころがなく扱いが難しい。働き方改革で、わかりやすい業務の効率化が主要な施策で、想像力の出番はほぼな……more
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『クリエイティブ・ラーニング 創造社会の学びと教育』学ぶことの遠い将来を見定める
学びや教育を題材にした書籍に多いパターンは、起こっている問題を分析した後に、あるべき姿や改革案を提案する本である。しかし、本書はそのような種類の書籍とは一線を画し、理論的な背景とそれを具体化したアイデアとその実践で敷き詰められている。…more
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『記憶術全史 ムネモシュネの饗宴』温故知新の読後感
2019年01月28日記憶の不思議を医学や脳・神経科学などから解説するサイエンス本は所狭しと本屋に並んでいるが、記憶術の歴史的なコンテクストを追いかけた本など、ほとんど見たことがない。この類まれな知的探検は古代ギリシャ人たちの物語からはじまり、18世紀に記憶術が廃……more
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『文系と理系はなぜ分かれたのか』単純だが、悩ましい分類のこれまでとこれから
日本の高校生の多くは、文系か理系かの二択を突きつけられる。本書を読んで、よりよい選択ができるようになるかは読み手次第だが、知らないうちに染み付いた常識を疑い、文系・理系のバイアスを外すことはできるだろう。必要なときに、必要なことを学ぶジャスト……more
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『脳と時間: 神経科学と物理学で解き明かす〈時間〉の謎』全方位から迫ればわかるのか、わからないのか
英語で最も頻出する名詞は「time」である。いっぽう、時間をどう定義するかについての見解は一致していない。著者はカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の神経生物学・心理学部教授であり、時間にまつわる神経科学/脳科学研究の第一人者として……more
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『幸福とは何か -思考実験で学ぶ倫理学入門』快楽説、欲求実現説、客観リスト説
2018年10月26日「幸福とは何か」と思い耽ったときに、まっさきに読みたい本である。幸せの数値化にこだわる社会科学や幸せのメカニズムを科学するポジティブ心理学は、どういうときに幸福になるか、何が幸せの実例かは説明してくれるが、幸福の概念を過不足なく解明してくれる……more
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『成績をハックする:評価を学びにいかす10の方法』学びの再起動ボタン
本書はニューヨークで英語やジャーナリズムを教える高校教師が、成績を用いず、生徒を評価する挑戦を行った記録である。通知表を捨て、成績をつけないクラスの実験を5年ほど前にはじめた。そのやり方に、一部の教師が熱狂し、教えてほしいという依頼が殺到した……more
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『3000万語の格差 : 赤ちゃんの脳をつくる、親と保育者の話しかけ』3歳までの言語環境に、3つのTで
教育の研究者やジャーナリストが冷静に書いたポップサイエンス、現場で活躍する教育者が熱量を込めて書く啓蒙書のどちらとも一味違う魅力がある。科学への深い理解と丁寧な説明、そして、育児現場に対する冷静な目、さらに豊富な臨床経験と3000万語イニシア……more
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『知ってるつもり -無知の科学』知らないことを知らないと、どうなるか
いざ当たり前に知っているだろうと思っていることを質問されたときに、言葉にする前は自信があったのに、いざ言葉にしようとすると答えに窮するという経験は誰にでもあるだろう。これは知識の錯覚-実際にはわずかな理解しか持ち合わせていないのに物事の仕組み……more
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「図書館の隠れたポテンシャル」を引き出す4冊
2018年03月26日机は勉強する大学生や高校生に占領され、読みたい本はだいたい貸出中、音を立てれば「シーッ!」と怖い目で睨むメガネをかけた図書館員、映画で登場する図書館の典型である。いっぽうで、日本の各地でアップデートされた図書館が登場している。…more
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『評価の経済学』まわりの評判が気になったときに手に取る本
本書の主題は、レピュテーションである。評判をゲームとしてモデル化し、そのゲームを勝ち抜くためのお作法をまとめている。知ることで冷静になれる、単純明快な実用性がある。評価が問題になるのは、人間は悪人でなくとも、ズルしたくなり、さらにちょっとし……more
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『時計の科学 人と時間の5000年の歴史』時計と時間のズレた関係
時計の精度向上は、生活を徐々に変える通奏低音となり、私たちの時間への価値観を変えた。時計がズレたり、間違って困ることはほとんどなくなった。その分、時間に対して神経質になり、待ち合わせなどではすぐに時計をチェックしたくなる。 …more