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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。書籍はアマゾンでもっぱら購入する私ですが、毎週、火曜日は定期的に都内の書店をパトロールをしております。

昨日も神田周辺をパトロールしていたら、『400文字の小宇宙』(中央公論新社)という本が平積みされていました。読売新聞の夕刊1面コラムの20年分の傑作選とのことです。毎週、メルマガで1000字以上を費やしても小宇宙はもちろん、何も築けず垂れ流し状態の私としては、読むべき本はエロやら酒やらのノンフィクションではなく、この本ではと飛びついてしまいました。

ネタの参考にと捲って気づいた結論としては、媒体の性質もありますが季節に関するコラムが多いことです。七草粥、ふきのとうなどなど。普段、窓際族よろしくで窓のない部屋で仕事をして季節の変化どころか天候の変化にも気づかない身としては、とてつもなく高いハードルを提示された気がしました。

秋ですので秋刀魚か松茸を切り口に書けばよいのでしょうか。安直過ぎますが、安直でもそれらを本と結びつける才能はありません。テクノロジーに頼るかと、アマゾンで秋刀魚と入力したら、【サンマ 北海道産 獲れたて】3150円って出てくる始末です。サンマも買えるのか、アマゾン。って気づいたら、508文字も書いておりました。

読書の秋ですので、書籍はネット購入派のあなたもHONZを参考に書店を巡ってみると意外な発見があるかもしれませんね。

今週のニュース

『ノンフィクションはこれを読め!2014』の発売が決定いたしました!

今年はきっかり100冊をセレクション。ベスト10はメンバーの投票で決定しました。1位は意外にもあの本!?HONZ発のベストセラーも続々と出ています。 今回は読み物も充実。メンバーの座談会を皮切りに、出口治明vs.麻木久仁子の読書マニア垂涎の対談、著者インタビューなど盛りだくさんです。 more

 東 えりか

最新記事

『ゼロ・トゥ・ワン』 - この面白さを、スタートアップ界隈に独占させるわけにはいかない

大学生くらいの時にこの本に出会っていたら、もっと違う人生があったのかもしれない。でも今だからこそ、この本に書かれていることを理解できるのかもしれない。そういうモヤっとした心のざわめきを呼び覚ましてくれる一冊だ。 more


 内藤 順

『逆転!』 非常識と逆境、もしくは不幸

俺は逆転したいだろうか? 『逆転!』という題名、「弱者の兵法」と書かれたオビを見て思った。自己申告で、どちらかと言えば弱者。勝ちたいかと言われれば、そりゃ勝ちたい。くらいか。原書の題名は、"David and Goliath"だ。ゴリ… more


 高村 和久

大地の奇跡に魅せられる!『美しい鉱物と宝石の事典: ロイヤル・オンタリオ博物館名品コレクション』

世界的に優れた鉱物コレクションを誇る北米屈指の博物館、カナダのロイヤル・オンタリオ博物館の収蔵品の中から、260種の鉱物と宝石の400点以上にも及ぶ標本写真が掲載された図鑑。 more


 野坂 美帆

『つながるカレー』赤字でいいじゃない!何より楽しむこと

「ひとと出会い まちでカレーをつくる」ことである。ただ、それだけである。朝、街で手に入る材料は探す。昼頃から作りはじめ、夕方に完成する。無理に街の人を巻き込みはしない。本当にただカレーを作るだけだ。カレーをつくっている間に、街で見かけた人が… more


 山本 尚毅

『日本の年金』by 出口 治明

少子高齢化が進む中、わが国では市民の2/3が日常生活での悩みや不安を感じているという。その内容を見ると、「老後の生活設計について」がトップだ。また、一説によると、市民のおよそ8割が年金不安を抱えているとも言われている。タイミング良く、わが国… more


 出口 治明

『おだまり、ローズ』by 出口 治明

とても面白い本だ。「事実は小説より奇なり」という格言が本当によく実感できる。ロンドンに駐在していた時、日本から賓客が来られたら、よくクリヴデンにお連れしたものだ。ヒースロー空港に近く、豪華で典型的な貴族のカントリーハウスであったからである。… more


 出口 治明

9月のこれから売る本-ジュンク堂書店大阪本店 持田碧

ジュンク堂書店池袋本店の名物フェアに「作家書店」があります。各界の著作家の方に数百点の本を選書してもらう大規模なフェアです。現在行われているのは「柴田元幸書店」。翻訳家の柴田元幸さんによるおススメ本がずらりと並んでいます。また、ジュンク堂の… more


 持田 碧

今週のいただきもの(9月第4週)

ついにiPhone6が発売されましたね!私は未だに3世代前のモデルを使っているのですが、最近さすがにあちこちガタが来ています。 まずは通話機能。相手の声は聞こえるのですが、こちらの声が向こうには聞こえません。このため電話は掛けないようにし… more


 遠藤 陽子

PRえ!?あなたまだ青汁ですか?

青汁は、野菜不足を補うだけですが、ユーグレナには魚の持つDHAやEPAも。
59種類の栄養で、野菜・肉・魚の持つ栄養をバランスよく補います。
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今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


『冬の薔薇 立ち向かうこと 恐れずに』 編集者の自腹ワンコイン広告

冬の薔薇 立ち向かうこと 恐れずに
作者:小林 凜
出版社:ブックマン社
発売日:2014-09-19

あれはまだ、東京に地下鉄副都心線も存在しなくて、私の頬にほうれい線も存在し なかった若かりし頃。作家さんやオッサン編集者に連れて行ってもらって、何度か足を運んだ新宿や銀座の文壇バー。慣れない水割りを舐めるように呑みなが ら、うっとりして聞いていた会話はいつもこんな感じだった。

「あそこに座っている編集者の○○さん。あの人がね、作家の△△△を育てたんだよね」
「この前、直木賞を獲った□□□っているだろ? アイツを育てたの、俺なんだよね」

たいしたもんだねえ、とか言いながらまたウィスキーをおかわり……夜な夜なそんな会話を楽しみ、始発を待った。どんな酒の肴よりもそうした会話が好物らしかった。

今ならわかる。出版界に限らず世のオッサン達は、「オレがアイツを育てたバナ シ」が大好きな生き物なのだと。だからこの手の話題は3割引き、いや、時として7割引きくらいで聞いておくべしと。でもその頃は若かったのでぼんやりと夢 見ていた。私もいつか編集者としてこんな会話に参加できる日が来るのかなあって……来るわけがないじゃん(笑)。いや? それがこの夏ついに来た、のか な?

ランドセル俳人こと、小林凜君である。

私が、『ランドセル俳人の五・七・五』(2013年4月出版)を作るため、最初に著者の小林凜君に会いに行ったのは、彼がまだ小学校5年生の頃だった。

凜君は予定日より3カ月も早く生まれたのだという。944グラムの超低体重児。生まれてすぐにサランラップに巻かれ全身に管をつけられ、命の危険と ずっと隣り合わせの幼少期だったとお母さんの史さんが話してくれた。小学校に入っても、皆より体が小さく体力もなかったために、ひどいいじめを受けた。同 級生に集団で小突かれたり、腕をねじ上げられたりといった暴力的ないじめは、小さな彼の命を脅かす行為だった。不登校を選択するしか、道はなかった。

いじめられて不登校となった日々が、彼の目線を道端にひっそりと咲いている小さな花や、庭を訪れた小さな生き物たちに向かわせて、それが句作へと繋がっていく。

いじめ受け 土手の蒲公英(たんぽぽ)一人つむ

生まれしを 幸かと聞かれ 春の宵

これは昨年、 成毛眞さんがHONZでも取り上げてくださった 『ランドセル俳人の五・七・五』の中の句だ。

この句から想像できるように、小5の彼は細くて小さくて、すぐに壊れそうで、突然あらわれた私の存在にちょっと怯えていた。自分の本ができるなん て、半信半疑だったのだろう。だけど、本が発売されてその反響がだんだん大きくなり、成毛さんをはじめ、たくさんの方からの応援の声が届くごとに彼の目は まっすぐ前を見つめ、体つきもしっかりしてきたように思う。


そして、今年の8月。第二弾として本書『冬の薔薇 立ち向かうこと 恐れずに』が出版できる運びとなり、凜君とお母さんに東京に来てもらった。彼は中学生になっていた。久しぶりの再会である。

凜君、大きくなっている! 育っている! 160センチ足らずの私は、凜君に身長を抜かされていた。手も足も大きくなっていた。少年というより、もう青年の顔つきである。

「凜君、育ったねえ」……そう呟いてから、初めて気が付いた。

編集者になって私、いま初めて、「育った」という言葉を口にしたんだ!あははは……凜君、本当にありがとう。だって本当に大きくなったんだもの。著者に身長を抜かされた担当編集者って、あんまりいないんじゃないか? すごく嬉しかった。

無論、私が育てたのではない。この原稿を書きながら今、私の脳裏には俵万智さんの有名な短歌「親は子を 育ててきたと 言うけれど 勝手に赤い 畑 のトマト」(『サラダ記念日』)が浮かんでいる。完成したばかりの『冬の薔薇~』を手に取りながら、しみじみと、私が著者・小林凜君に育てられた二年間 だったのだと思う。

蟷螂や 鎌下ろすなよ 吾は味方 」……カマキリを蟷螂と言うなんて知らなかったよ。

初ゴーヤ ほろ苦き味 祖母の味 」……ゴーヤって夏じゃなくて秋の季語だったんだね。

無花果(いちじく)や 割れば無数の 未来あり 」……イチジクの実をそんなふうに見たことなんて、なかった。

羽化したる 天道虫や 我に似て 」 (著者による句意:生まれたてのてんとう虫の成虫は、柔らかくて未熟で弱くて、小さいころの僕のようです。でも、今の僕はもう弱くはありません)
 ……凜君。君がいつのまにかそんなに強くなっていたなんて私、知らなかったよ。

君は、もう大丈夫。そして、私を育ててくれてありがとう。時間ができたら、私も君にあやかって俳句を詠んでみようと思うから、その時は私を育ててほ しい……これほど編集者冥利に尽きた二年間はもう仕事人生の中に訪れないかもしれないな。そう思って見上げる秋の空は、少しせつない。

小宮 亜里 ブックマン社編集長
仕事しているか酒飲んでるか、お風呂で読書しているだけの人生をそろそろ変えないとマズイと思いつつ何も変えられない。今朝、半蔵門線の中で「ホットロード」を読み返して、人目を気にせず号泣。ここで一句、「自分でも 痛いと思う 40代」 ハルヤマ…。

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