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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。関東地方もついに梅雨入りしましたね。雨の日は何かと憂鬱ですが、この時期は紫陽花が大変美しく咲いています。

前文っぽい前文を目指そうとHONZの隠れ人気コーナー「今週のいただきもの」の前文冒頭を写してみましたが、花より団子の無粋な私にはこの後が続きません。人間、無理は禁物です。

今週のメルマガは二週連続で「編集者の自腹ワンコイン広告」を掲載。『なぜ日本人は、一瞬でおつりの計算ができるのか』の編集者が登場します。ではでは。

最新記事

『漫画家、映画を語る』

本書は漫画界の鬼才9名により、映画&漫画論がインタビュー形式でじっくり語られている。『銀河鉄道999』の著者である松本零士や、『進撃の巨人』の著者である諫山創は知っている人も多いのではないだろうか。 more


 刀根 明日香

『夢へ翔けて』 踊ることは生きること

1995年、西アフリカ・シェラレオネ生まれのミケーラは内戦で両親をなくした少女。アメリカ人に養子として引き取られ、世界的なバレリーナとして活躍するようになるまでを義母と共に書き下ろした自伝である。生まれつきの皮膚病や人種差別にも負けず、夢見… more


 東 えりか

『21世紀の自由論』自由と不自由と非自由と

『21世紀の自由論』は、ジャーナリストの佐々木俊尚氏が、政治哲学の「これまで」と「これから」を、社会の変容という観点から論じた一冊である。ITが進化してアーキテクチャが変われば、集団のあり方が変わる。集団のあり方が変われば、政治も変わるはず… more


 内藤 順

全米が泣きそう『紋切型社会』

「若い人は、本当の貧しさを知らない」「会うといい人だよ」「うちの会社としては」「誤解を恐れずに言えば」……う、言っちゃってるよ。使っちゃってるよ。そう自らを反省してしまうあなたこそ読むべき一冊。さて、「言葉で固まる現代を解きほぐす」とはどう… more


 足立 真穂

勝者の記録+α 『二重螺旋 完全版』

よく知られているように、The Double Helixは、ワトソンが自分の記憶を頼りに書いた本だ。今回、あらためて読み直してみて、勝者の記録である、ということがよくわかった。歴史書というのは、勝った方が書くことになるので、すべからく勝者バ… more


 仲野 徹

『SAPEURS(サプール)』コンゴのオシャレ男子は、服を信じて福を呼ぶ。

世界最貧国の一つ、コンゴ共和国。ここにサプールと呼ばれ、人々の羨望と尊敬を集る集団がいる。平日は普通に働いているのだが収入のほとんどを洋服に費やし、週末になるとハイブランドのスーツを着こなし街を闊歩するという。 more


 内藤 順

夢はみんなで作る研究所! クマムシ博士の野望

地上最強の生物「クマムシ」を長らく研究されてきたクマムシ博士こと、堀川大樹氏。最新刊『クマムシ研究日誌』では、クマムシとの出会いから研究の最前線まで幅広く紹介されているが、将来的には「クマムシ研究所」の設立も目指しているという。今回は、クマ… more


 柴藤 亮介

『格差の世界経済史』 姓で読み解く階級社会の不都合な真実

 姓を手がかりに、歴史に埋もれたビッグデータを掘り起こした著者は、残酷な現実を突きつける。 ”基盤的な、または相対的な社会的流動性は、社会学者や経済学者が一般的に考えている水準よりはるかに低い。” つまり、従来考えられていたよりも、わた… more


 村上 浩

おもしろいだけじゃ、ダメですか?『ヘンな論文』

本書では、「論文」というお堅い響きからかけ離れた、研究の中身が突き抜けた珍論文ばかりが紹介されている。これが笑いあり感動あり悲しみあり。論文がこんなに人間臭いものだとは!と、びっくりしてしまう。著者はお笑いコンビ「米粒写経」のツッコミ役、サ… more


 塩田 春香

近代合理主義を育んだイギリス人が、世襲の君主制を支持しつづけるのはなぜか?
『ふしぎなイギリス』著者インタビュー 

知られざる大英帝国の姿を描いた『ふしぎなイギリス』。著者の笠原敏彦氏は、毎日新聞外信部で活躍した国際派ジャーナリストである。ロンドン特派員(1997~2002年)、欧州総局長(2009~2012年)を歴任し、イギリス王室や議会政治に関する数… more


 現代ビジネス

『超明解! 国語辞典』by 出口 治明

社会人になったころ、仕事が早く終わると本を読んでいた。見つかると何故か叱られた。しかし、辞書を読んでいると叱られないことに気づき、よく辞書のページを繰っていたものだ。本書は、7つの小型国語辞典、計53万語を、辞書探偵(著者)がとことん調査し… more


 出口 治明

今週のいただきもの(6月第2週)

関東地方もついに梅雨入りしましたね。雨の日は何かと憂鬱ですが、この時期は紫陽花が大変美しく咲いています。 more


 仲尾 夏樹

『セーラームーン世代の社会論』アタシたちのこと知らないなんて…… セーラームーンに代わっておしおきよ!

アラサーの私は、社会人になってずっと不思議に思っていたことが、いくつかあります。 「どうして女性は“一歩引いた仕事の仕方がよし”とされているんだろう……?」 「“遊びも、恋愛も、仕事も、結婚も……”って言ったら、なんで“欲張り”になるの… more


 版元の編集者の皆様

PRえ!?あなたまだ青汁ですか?

青汁は、野菜不足を補うだけですが、ユーグレナには魚の持つDHAやEPAも。
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『なぜ日本人は、一瞬でおつりの計算ができるのか』-本ができるまでのいきさつと、著者の優しさについて 編集者の自腹ワンコイン広告

なぜ日本人は、一瞬でおつりの計算ができるのか
作者:川口マーン惠美
出版社:PHP研究所
発売日:2015-06-04

本書はドイツ在住30年、 『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』(講談社+α新書) などのベストセラーを持つ著者が日独の教育を比較した意欲作である。 多作な著者だが、教育について語るのは2007年発刊の 『母親に向かない人の子育て術』(文春新書) に次いで2冊目。

その当時10代だった娘さん方はみな成人し、親元を離れた。一区切りついた今、子育て経験を振り返りつつ日独の教育事情を比較する文化論をつづってほしい。そう依頼して出来上がったのが本書である。

川口さんに初めてお目にかかったのは、都内某所のルノアール。「普段はドイツ在住の川口さんが、ちょうど来週まで日本にいる」と聞いて、慌ててご連絡先を入手し、面会の約束を取り付けた。ところがあろうことか、その待ち合わせに私は30分遅刻してしまった。

初対面で、しかも依頼者側の人間が30分遅刻してくるなんて馬鹿な話を聞いたことがあるだろうか。私はない。大変な非礼を、川口さんは快く許してくださった。「企画の方向性には概ね賛成、とにかく書き始めてみます」と、何とか依頼を受けていただいた。 即刻お礼と謝罪の手紙を投函した。すると驚いたことに、翌日川口さんからこんなメールをいただいた。

「ハガキありがとうございました。原稿、なんとか書いてみます」

正直なところ、お礼状に返答してくださる方は滅多にいないし、こちらもそのつもりで書いている。それが謝罪の手紙ならなおさらだが……なんと丁寧な方なのだろう! その二日後、川口さんは慌しくドイツへ帰っていかれた。

次にお目にかかったのは、日本料理店だった。年始を日本で過ごすために帰国されていた川口さんは、ドイツの可愛らしいクリスマス菓子をお土産にくださった。美味しい料理も食べ、すっかり気を緩めてしまった私は、つい夫の愚痴を漏らしていた。

「うちの夫は、いっつも引き戸をバーンッて音を立てて閉めるんです。ほんとアメリカ人って、ガサツでやんなっちゃいますよ」我が家も国際結婚。ドイツ人の旦那様と長く暮らしている川口さんなら共感してくださるのではないかと思って口にした言葉に、川口さんはちょっと考え込み、このように答えられた。

「ガサツというのは、違うんじゃないかしら。西洋にはそもそも引き戸がなかったから、音を立てずに閉めるという文化もないのでしょう。反対に日本では、開き戸のマナーがなっていない人が多いじゃない? 次に入る人のために開けて待っているという。でもそれは日本人がガサツなんじゃなくて、開き戸の文化がなかったからよね」その言葉に、目からうろこがぼろんぼろんとはがれ落ちる思いだった。

そう、川口さんはいつもこのように中立だ。『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』『住んでみたヨーロッパ 9勝1敗で日本の勝ち』がベストセラーになっただけに、「ドイツ批判の日本擁護者」と思われることが多くなったらしいが、その評は全くの筋違いである。川口さんほどバランスよく日本と諸外国を眺めている人はなかなかいない。今までの著作がそうだし、今回の本も同様である。

たとえば日独の大きな違いとして、「やり方を徹底的に教える日本と、やり方を考えさせるドイツ」というものを挙げている。日本では小学1年生のうちに100までの数字を習い、その後は九九や数式をたたき込む。一方ドイツの小学校1年生は20までしか習わないが、その代わりひとつひとつの素数について念入りに学習する。どちらがよいかは明言しない。ただ「違い」があることを教えてくれるのが川口さんの筆致である。

もう一つ本書の魅力としては、娘さんたちのエピソードが生き生きと語られていることだ。この三人娘さんたちが、三者三様でたまらなく面白い。たとえば次女のMさんは、まったく勉強をせずに退学を繰り返し、いわゆる問題児となっていた。ところがある日突然「南米に行きたい」と言い出す。

普通なら「そんなことより勉強しろ」とでも言いそうなものだが、川口さんご夫婦は違った。南米の中でも比較的安全だと思われるコスタリカを選んで、「行ってこい」と背中を押したのである。帰ってきたMさんは見違えるように生気に溢れていた。Mさんの南米紀行も必読だ。私はここで、涙がこぼれた。

2ヶ月ほど前、東大秋入学合格者の7割近くが、東大を蹴って外国の有力大に進学したというニュースが報じられた。日本の最難関大が“滑り止め”にされているという事実。「日本の教育はもう終わりだ」「これからは海外だ」と危機感を覚える人も多かったのではないか。

ただ、川口さんは少なくとも「日本の初等教育は世界一だ」と仰る。単なる“日本擁護”ではない。日本とドイツの間に立って中立に物事を見た結果、「日本の初等教育は優れている」と結論付けられたのである。では、具体的にどんな部分が世界一なのか?それはぜひ本書を読んでいただきたい。

大井美紗子 PHP研究所 人生教養出版部
2010年新卒入社以来ずっと単行本の編集者。育児書、レシピ、語学書、グルメガイド、自己啓発書など多種多様なジャンルの本を制作。つい最近、担当書『勉強嫌いほどハマる勉強法』(宝槻泰伸)に2刷がかかって嬉しい限り。

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