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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。ゴールデンウィークも最終日ですがいかがお過ごしですか。

今週のメルマガは久々に「編集者の自腹ワンコイン広告」のコーナーがあります。取り上げるのは『ローラ・ブッシュ自伝』。これを読まずして何を読むのだという内容になっております。是非、ご覧ください。読んで頂ければ、今週は特に私が他に申し上げることはありません。決して、連日、公園で寝転んでビールばかり飲んでいて、前文を考える余力が無いわけではありません。

今週もメルマガスタートです。

最新記事

『悲劇の発動機「誉」』

第二次世界大戦時の戦闘機開発において、堀越次郎を擁する三菱と双璧をなす存在だった中島飛行機。その歴史の中で終戦後も語り草となってきたのが、奇跡のエンジン「誉」である。当時、世界最高水準とまで評された高性能を持ちながらも、相次ぐトラブルの発生… more


 峰尾 健一

『気候カジノ』気候変動を経済学から考える

地球温暖化あるいは気候変動。日々ニュースを騒がせるトピックであり、関連する書籍もたくさん出版されているにも関わらず、これほど良書に巡り会うのが難しい分野も珍しい。それは気候変動について書かれた本の多くが、仮説検証を繰り返して論理の精度を高め… more


 佐藤 瑛人

小さな虚構が闇を食う『黒い迷宮 ルーシー・ブラックマン事件15年目の真実』

世の凄惨な事件は、数多くの事象が複雑に絡み合って起きるケースが多い。それは現実の上に、様々な虚構が覆いかぶさっていることによるものだ。本書の真骨頂は、この虚構を現実の対極としてではなく現実の一部として描いている点にある。つまり、虚実を現実と… more


 内藤 順

『葬送の仕事師たち』 死の「裏方」を知る

ノンフィクション作家の井上理津子さんは、何を思い『葬送の仕事師たち』の取材に入ったのだろう。彼女は、葬儀の専門学校、遺体の防腐処理をするエンバーマー、納棺師、湯灌師、火葬場の職員に真正面から取材し、生と死について、深く考えさせられる言葉を聞… more


 新潮社

今週のいただきもの(5月第1週)

ゴールデンウィーク真っ只中ですね。みなさまいかがお過ごしですか? 事務局近くの根津美術館では燕子花がちょうど見頃。しかも、特別展で尾形光琳の「燕子花図」も見ることができます。 more


 仲尾 夏樹

まるで空の劇場『ハイジャック犯は空の彼方に何を夢見たのか』

飛行機に乗り込む前の厳重な手荷物検査は今となっては当たり前の光景となった。テロリストに乗っ取られて、飛行機丸ごとどこかに突っ込まれては困るから、我々は不満を持ちながらもそうした状況をある程度は受け入れている。しかしそれはかつては当たり前のも… more


 冬木 糸一

『私は中国の指導者の通訳だった』日中友好に奔走した対日工作員 最後の証言

中国に関する書籍は数あれど、本書は出版までの経緯からしてユニークだ。テーマは戦後の日中関係についてであり、中国人の著者が中国人の読者を想定して書いたものである。だが守秘義務の関係で何度も検閲が入り、香港を除き未だ中国本土では発売されていない… more


 佐藤 瑛人

PRえ!?あなたまだ青汁ですか?

青汁は、野菜不足を補うだけですが、ユーグレナには魚の持つDHAやEPAも。
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今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


 編集者のワンコイン広告 改め ワンコイン恋文

ローラ・ブッシュ自伝 - 脚光の舞台裏
作者:ローラ・ブッシュ 翻訳:村井 理子
出版社:中央公論新社
発売日:2015-05-08

拝啓 ローラ・ブッシュ様

木々の緑も色鮮やかな季節となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
思い返してみれば、全米で大ベストセラーとなったあなたの自伝を手にしたのは、数年前の冬でした。随分時間がかかってしまいましたが、ようやく出版の日を迎えることができました。なにせ長い道のりで、時々道に迷いもしましたが、ゴールに辿りつくことができてほっとしています。同時に、少し寂しい気持ちもあります。だから今日は、手紙を書くことにしました。あなたの人生の物語を、少しだけ振り返ってみようと思うのです。

幼少時代のあなたは、実直な父、自然を愛する優しい母に育てられた明るい女の子でした。
夏、ひょろりとした黒い枝に羽のような緑の草をつけるメスキートの林のなかを駆け抜けるシーンや、冬、強風に煽られた回転草が乾いた大地を転がるシーンなど、ページからいきいきと立ち上るその情景は、私を1950年代のテキサスにタイムスリップしたかのような、そんな気持ちにさせてくれました。優しい祖父母と過ごした穏やかな日々と、ゆったりと流れる時間は、あなたの心を豊かに育みました。

成績優秀で美しかったあなたは高校でも人気者でした。でも、ある日、大きな事故を起こしてしまいます。担ぎ込まれた救急病院の処置室で聞いた女性のすすり泣きの声を、今でも鮮明に記憶しているとあなたは書いています。その後、あなたは本の世界に閉じこもり、大学に進学し、故郷を離れました。十代で背負うには、あまりにも重すぎた十字架だったのでしょう。この痛ましい事故の後、あなたの心を支配していたのは、孤独と消えない罪悪感でした。大学を卒業したあなたは、貧しい世帯が暮らす地域を選んでは、教師として、時には図書館司書として働きます。でも、まるで根無し草のようにテキサス中を点々と移動し、30歳を過ぎるまで独身を貫いたのです。

図書館司書として働いていた31歳の時、友人が開いたバーベキューパーティーで出会ったのが、後に第43代アメリカ合衆国大統領となったジョージ・W・ブッシュでした。夏の夕暮れ時、青いサマードレスを着てパーティーに現れた美しい女性と、生涯の伴侶を探し求めていた一人の男性。出会うべくして出会った二人は、数週間後には結婚を決めます。この結婚ではじめて、大家族の暖かさを知ったとあなたは綴っています。彼は、あなたを暗い場所から明るい場所に導き出してくれた人だったのですね。

ホワイトハウスに入った後の日々は壮絶でした。9.11同時多発テロ、夫への酷い中傷、そして勝手に押しつけられた「退屈な主婦」というイメージとの戦い。もう無理だと思ったことも幾度となくあったに違いありません。それでもあなたはファーストレディという職務を全うしました。そして、ホワイトハウスを離れてはじめて、それまで封印してきた思いの全てを本書に綴りました。あなたの内面にある激しさ、そしてその率直な筆致には驚くばかりでした。

あなたがファーストレディ時代に成し遂げた仕事はいくつもあります。がんについて語ることが強くタブー視される中東の国々を訪れて行った乳がん撲滅キャンペーン「ピンクリボン運動」は、それまで乳がんであることが知られると追放されることが多かった地域で医師の診察を躊躇してきた女性達に、大きな勇気を与えました。文学を愛するあなたが発案し、開催を後押ししたナショナル・ブックフェスティバルは、毎年数十万人もの来場者を集める大イベントへと成長しました。

祖母が縫ってくれたコットンのドレスを着て夜空を見上げ、弟か妹が欲しいと一番星に願っていた幼い頃のあなたに、今のあなたの姿が想像できたでしょうか。世界中の女性の健康、そして識字率の向上の為に、人生をかけて取り組むあなたの活動を通じて、人生は何歳になってからでも輝かせることができると、多くの女性が勇気づけられたはずです。

微力ながら、あなたの人生の物語を読者の皆さんにお届けするための手助けができました。私にとって忘れられない一冊です。来年には大統領選挙戦が始まります。義弟のジェブ・ブッシュ氏が出馬すると報道で知りました。お姿を拝見する機会も増えることでしょう。楽しみにしております。

敬具

2015年5月6日
村井理子

村井 理子 ( @Riko_Murai )  翻訳者。著書『 ブッシュ妄言録―ブッシュとおかしな仲間たち 』(二見書房)、訳書『 ヘンテコピープルUSA―彼らが信じる奇妙な世界 』(中央公論新社)、『 ゼロからトースターを作ってみた 』(飛鳥新社)など。ブログは こちら

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