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こんにちは。HONZメルマガ編集部の栗下直也です。今週のメルマガはHONZが全力プッシュ中の『冒険歌手』の編集者が「編集者の自腹ワンコイン広告」に遂に登場!編集長の内藤順の怒涛の仕掛けは続きます。
未読の方は是非騙されたと思って読んでみてください。東京都福生市の顔面皮はぎ変死事件にも、米俳優チャーリー・シーンの怪しげな動画流出にも驚かない私ですが本書には絶句してしまいました。今週もメルマガ、スタートです。
ノンフィクションの醍醐味は「事実は小説より奇なり」を地で行く部分だと思う。小説は作家が人工的に創ったものだからどうしてもきれいな形で収まるが、現実はそうはいかない。あまりに予想外でどうしてそうなるのか─当事者や著者にさえ─さっぱりわからない… more
山と渓谷社 |
本書『眠っているとき、脳では凄いことが起きている: 眠りと夢と記憶の秘密』はその書名通り、眠っている時に脳で起こっていることを解き明かしていく一冊だ。そもそも動物はなぜ眠るのか、眠らないといったいどんな恐ろしいことが起こるのか。記憶と睡眠の… more
冬木 糸一 |
何かが根本的に変わってしまい、引き返す事が出来なくなる事態に至ったことが、遍く理解されるときというのは、その時代に生きる人々にとってはいつも手遅れだ。あの時代に生きていた人々を笑うことはできない。先んじて警鐘を鳴らす者が、人々の安心や社会の… more
麻木 久仁子 |
本書では北村孝紘、松永太、角田美代子など平成の凶悪殺人事件の主犯10人に迫っている。凶悪という言葉がかすむほど、彼らの犯行は理不尽で壮絶だ。被告である家族4人全員に死刑判決が下った「大牟田4人殺害事件」。残虐性からマスコミが報道を自主規制し… more
栗下 直也 |
人生の3分の1を占めているにもかかわらず、睡眠について知らないことはたくさんある。快眠の秘訣から楽しい夢を見る方法に至るまで、多様な実証的研究とエピソードにより明かされる眠りの秘密は興味深いものばかりで、読んでいて眠くならない。 more
峰尾 健一 |
副題にある「奇妙な友情」とは、著者である気鋭のアメリカ人女性ジャーナリスト、カーラ・パワーと、本書における彼女の対話の相手、イスラム学者のモハンマド・アクラム・ナドウィー師との友情を意味します。つまり本書は、フェミニズムに傾倒し、宗教にほと… more
文藝春秋 |
実際のところ、グアンタナモに拘禁された人びとはどのように扱われてきたのだろうか。それをまざまざと伝えてくれるのが、2002年に無実の罪でそこに収容され、いまだ釈放されていないモハメドゥ・ウルド・スラヒ氏が、2005年の夏から秋にかけて執筆し… more
河出書房新社 |
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はじまりは「元義理の妹」(←意味は考えてください)だった。
『冒険歌手』の底本にあたる小学館文庫『ニューギニア水平垂直航海記』は、彼女が外部編集者として編集に携わっていた。これはまったくの偶然。2004年当時、わたしは山岳雑誌編集者だったので、雑誌で紹介してもらえないかと「元義理の妹」からの打診があったように記憶している。その後二度ほど峠さんと山に取材に行って、ルポ記事を作った。
もうひとつ脈路があった。ユースケこと角幡唯介さんと同じ早稲田の探検部OBが当時編集部にいて、そのからみでも峠さんと山と溪谷社とのつながりがあった。
文庫版を読んだ当時、まだまっとうな登山雑誌編集者であったわたしには、充分に消化しきれなかった。これは「探検」というものではなく、昨今あまり使われない「探険」という表記が似つかわしい、危なっかしい旅の記録のようにも感じた。「冒険」というのもそぐわない、行き当たりばったりの旅。でも、妙なうねりがある本だと感じていた。
2010年ごろ、文庫が市場から消えて、自分自身も『くう・ねる・のぐそ』(伊沢正名)で単行本編集者としてスタートしたあとに「ヤマケイ文庫」への文庫化を提案したが、オーソドックスな作品が主流だったので、あえなく却下。今考えるとそれで良かったかも。
そして2014年春、電子書籍とPODのシリーズを立ち上げることになり、テスト刊行物として改めて本書の復刊を画策した。テストということもあり、企画は通った。だが諸事情あってすぐに刊行できずにいた。その折りに、ロタ島へ嫁いだと思っていた峠さんに復刊打診のメールを送ってみたところ返信があり、日本に戻っているというではないか。数年前に峠さんからいただいた年賀状には、ロタ島の写真のカラーコピーを切り貼りしてあり、「ロタ島のダーリンに嫁ぎます」「いまごろカラーコピー?」などと記してあったのに。そのあたりの事情は本書の巻末にあるとおりだが、後日談を記した峠さんからの長文のメールを読むと、『ニューギニア水平垂直航海記』は峠さんの人生の冒険譚に変成し、書名の原案だった『冒険歌手』という物語に醸成されていた。
これはもう単なる覆刻でなく、改めてその後の人生の冒険も交えて新たな本として刊行すべきであると、誰に賛同されたわけではないが勝手に決めた。いや、文庫で解説をされていた椎名誠さんのほか、高野秀行さんや風間深志さんなど、一部の理解者がいらっしゃることがネット上で確認できたのは心強かった。それに、いまや人気作家となった角幡唯介氏がこの旅をどう捉えているのか、峠さんとの対談を加えて明らかにしたかった。
さらにいえば、藤原一孝という特殊な登山家への興味が本書刊行の底辺にある。藤原さんは若いころに穂高の岩壁でいくつかの記録を残しているが、個人的には太平洋に屹立する孀婦岩の数少ない登頂者として記憶に残る。普通のクライマーでは思いも付かないようなことを思い立ち、実行してしまう情熱と実力は、ただならぬものがある。そして、よろしくない業界内の噂も耳にしたが、少し前の登山家には、藤原さんのような社会に適応しにくい人間(失礼!でも事実)が少なからずいた。いや、社会に適応できないから山を登っていた人間も少なくなかった。時は流れて、ある者は立派な登山家として名を成し、ある者は山で命を落とし、ある者は山から離れていった。そして百名山・中高年登山ブーム、近年は山ガールブームなど、山の社会的環境は大きく変わった。もはや藤原さんのような登山家・冒険家は存在そのものがアウトである。だからこそ、藤原さんのような存在を世に伝える必要性を(たぶん必要性はないが)感じてしまったからしょうがない。
思えば、単行本編集者になってからの著者や登場人物は、奇人・異人が少なくない。糞土師、きのこライター、食虫植物愛好家、毎日登山家、クラゲ愛好家、昆虫食研究家、黒部の山賊、山怪マタギカメラマン……。藤原さん、峠さんらの本に関わらせいただくことになるのは、奇人フェロモンを発しているのかも知れない自分にとって、当然の帰結だったのだろう。奇人の記録を後世に伝える妙な使命感さえ湧いてきていた。
2014年末、本書の単行本での刊行を企画会議で再提案したのだが、角幡さんとの対談掲載が奏功したのか、とくに社内的な反対意見はなく、この秋の単行本刊行とあいなった。今回の刊行までを振り返ると、まあ、この時期に出るべくして出たとしかいいようがない。そういえば『くう・ねる・のぐそ』もはじめ企画会議で却下され、数年後に刊行できた。出版企画との出会いの不思議さを感じる。
さて最後に、わかる人にはわかる編集上のこだわりをひとつ明かそう。峠さんが着用している登山装備は、峠さんの冒険のころの装備に近いものを再現した。峠さんは当時の装備を処分していたので、わたしが保管していた昔の登山装備を着用していただいた。ポイントは、豆電球使用のナショナルの黄色いヘッドランプ。最近は小型の発光ダイオードタイプが主流だ。ただ、今考えると峠さんの冒険は2001年だから、自分の若い頃の装備では古すぎたかも。このあたり、曖昧にしておきたい。
なお、このカバーイメージはすぐに思いついたものだが、社内会議でイメージを予め伝えたり、カメラマンにどんな絵柄を撮ってほしいのか的確に伝える必要がある。そこで、セルフシャッターで撮影して作成したカバーダミーがこれである。
自宅にマイクがなかったので、手近にあった長いものが長ネギだった。ヘッドランプは仮なのでダイオードタイプ。社内会議では黙殺されたが、カメラマンほか一部で好評だった。千冊に一冊このカバーを混ぜる案もあったが、勇気が足りなくて実現しなかった。
ほかにも逸話はあり、対談の司会が途中から饒舌になるなど版元がいうのも変だが突っ込みどころも満載だ。理由はあるが、紙幅が尽きた。どんどん突っ込んでいただきたい。
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