>> 正常に表示されない場合はこちらから

HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。先日HONZの忘年会がありました。忘年会レポートを書く気満々に乗り込んだんですが、案の定、肝心の一次会と二次会の中身をほとんど覚えていません。一次会の前までははっきりと覚えていますが。あたりまえか。というのも、一次会の前にゼロ次会を敢行していたので、それを覚えているだけでも自分で自分のことを褒めてあげたいのです。

メンバーの刀根明日香に当日の夕刻に「ゼロ次会をしましょう」と呼び出され、承知すると「30分前に集合です」と謎の連絡が。30分だけ飲む必要があるのかよと思いつつも、もはや身体はゼロ次会モードなので店に向かいました。

ちゃちゃっと飲もうと言って、ビールを飲み始めたら刀根に「最近、ジャケットとかスマホなくさないんですか?」と聞かれ、「いやいや、若者じゃあるまいし、酒を飲んで物をなくすとかありえないでしょ。そんなことより、30分しか時間ないから早く飲みなよ」と、その後何時間も飲む人が何を言っているんでしょうか。卑しすぎます。

で、生ビールを二杯飲んでそろそろ一次会の会場に行くかなと思っていると、刀根が「わたし、お酒をちゃんと飲まないと内藤編集長やみんなと話せないんです」と衝撃の真実を告白。それは俺に話すよりも、読売新聞の人生相談に投稿すべきだよと助言したい気持ちを抑えながら、「まあ、もうちょっと飲みなよ」とそれから中瓶を一本頼んでしまいました。飲めば何とかなるという安易な考えをひとに押しつける姿勢は我ながらもはや病気です。

まあ、このときは、その8時間後くらいに、こんな悲惨な状態になるとは思っていませんでしたが。おそらく、来週あたり、メルセデス新井が四コマ漫画で忘年会のレポートをしてくれると思います。

今週もメルマガスタートです。

最新記事

レイプはなぜ続くのか『ミズーラ 名門大学を揺るがしたレイプ事件と司法制度』

19.3%、実に5人に1人のアメリカ人女性が、年齢を問わず、これまでにレイプ被害を受けたことがあるとされる。これほどにも「ありふれた犯罪」である一方、被害者の約8割は警察に被害を届け出ず、アメリカ国内でもっとも報告率の低い重大犯罪でもある。… more


 アーヤ藍

永久保存版! 『WHAT’S NEXT? TOKYO CULTURE STORY』

まずはこの動画を見てほしい。TOKYO CULTURE STORY|今夜はブギー・バック(smooth rap) in 40 YEARS OF TOKYO FASHION & MUSIC|presented by BEAMSこの動画は公開さ… more


 田中 大輔

『バブル 日本迷走の原点』バブルを知らない我らが世代に送る

「岩瀬君のようにバブルを知らない世代に読んで欲しい本を書いている」バブル時代に日経証券部のキャップとして大活躍したジャーナリスト、永野健二氏からそのように言われていた本が、ようやく上梓された。あの時代をMOF担として渦中で過ごし、最近では読… more


 岩瀬 大輔

『バブル 日本迷走の原点』社会全体としての歴史の記憶と知恵の蓄積が必要だ

なぜバブルは繰り返し起きてしまうのかを考えた時に、永野氏と全く同じように、社会全体としての歴史の記憶と知恵の蓄積の必要性を痛感する。我々個々人には寿命があり、1人のビジネスマンが本当にビジネスの最前線で活躍できる期間はせいぜい20年である。… more


 堀内 勉

『住友銀行秘史』が大ヒット、経済ノンフィクションが今アツい!

『住友銀行秘史』が売れています。ノンフィクションジャンルでは発売たちまち大重版という言葉はなかなか聞かれないものなのですが、これはその希有な作品となりました。HONZレビューが掲載された10/12段階ではすでに売上率が50%程度になっていま… more


 古幡 瑞穂

『シリア難民 人類に突きつけられた21世紀最悪の難問』

イギリスの若手ジャーナリストのパトリック・キングズレーは、本書『シリア難民 人類に突きつけられた21 世紀最悪の難問』で、2015年のヨーロッパ難民危機が、私たち日本人にとっても、決して対岸の火事ではないことを教えてくれます。その軸となるの… more


 ダイヤモンド社書籍オンライン

『バブル 日本迷走の原点』邪悪なる善は甘い蜜に潜む

本書は「始動」「膨張」「狂乱」「精算」の4章、全21節で構成された好漢譚として楽しむことができる今年一番のおすすめ本だ。各節ごとにそれぞれ10人ほどの好漢たちが登場し、各々の役割を演じては舞台を去ってゆく。その好漢たちとは時の首相であり、日… more


 成毛 眞

不健康な脳から健康な心を推論する──『脳はいかに意識をつくるのか』

近年fMRIなど新技術の出現で脳の活動がより精確に観測できるようになり、脳科学/神経科学は飛躍的に進歩した。そうなると気になるのは、我々が「意識」や「心」と言っているものはいったいなんなんだという問いかけである。幾つもの神経科学方面の本がそ… more


 冬木 糸一

『衛生害虫ゴキブリの研究』年季入りの本格的ハードコア・ゴキブリ書

何のてらいもないタイトルの通り、本書は、屋内で遭遇する衛生害虫ゴキブリの研究書である。著者は、民間の研究所などで50年以上にわたってゴキブリ研究に従事してきており、ちなみに昭和7年生まれ。そして本書には、著者らによる圧巻の研究成果の数々が、… more


 堀川 大樹

『落葉樹林の進化史』

本書の醍醐味は何といっても、著者の視野の広さだろう。落葉樹林を切り口にして、中生代からの森林生態系の進化史を論じるという時間的広がりもさることながら、人間社会からの影響などを、3つの大陸にあてはめて論じるという空間的広がりも実… more


 築地書館

『「移動」の未来』はわたしたちの未来そのものだ

小雨降る冬の日、空腹を満たすために凍える外気にその身をさらす必要はない。ネットでピザをオーダーすれば、数十分で熱々のチーズがあなたの口元にやってくる。ピザが届くまでの数十分も、お気に入りのコーヒー豆で淹れた一杯があれば苦痛ではない。世界中の… more


 村上 浩

『たった一呼吸から幸せになるマインドフルネス JOY ON DEMAND』

「メンタル弱い系」天才プログラマーが、いかにしてグーグルの「陽気な善人(= Jolly Good Fellow:自分で勝手につけた役職名がそのまま正式になった)」として世界中で活躍するマインドフルネスのリーダーに自らを変… more


 NHK出版

かわいいあいつも、食べるとおいしい。『世界のへんな肉』アルパカもビーバーも、肉。

本書は3年かけて世界一周の旅に出た著者が、いろんな国で出会った心温まる肉とのふれあい……じゃなくて、動物とのふれあいと、そのお肉の味を、おおらかな文章とゆるいイラストでたっぷり紹介してくれます。著者はアルパカのステーキやアルマジロのブラウン… more


 塩田 春香

適切な移民政策とは何か──『移民の経済学』

本書はテキサス工科大学経済学教授のベンジャミン・パウエルを編者とし、総勢11人もの執筆陣で、包括的に移民の影響、移民政策はどうあるべきかを詳細なデータ分析を元に論じていく。基本的にはアメリカのデータを用い、アメリカの移民政策はどうあるべきか… more


 冬木 糸一

『周―理想化された古代王朝』

中国では、常に古代の聖天子の時代が憧憬される。伝説の堯や舜はともかく実在が確実視される周の文王や武王、周公旦の時代である。周は約800年続いたが、これまで意外なことに読みやすい通史がなかった。本書は待望の1冊である。 more


 出口 治明

お腹が空いてくる! 『韓国食文化読本』

変なかたちの本なんである。そして、やたらとたくさん、韓国料理の写真が出ているんである。発行元は「国立民族学博物館」。115項目にわたって、隣の国の「食」についてまとめられている。そういえば、知っているようで知らない韓国のごはん。たとえば、韓… more


 足立 真穂

『キラーストレス 心と体をどう守るか』そのストレスがあなたを殺す!

キラーストレスという言葉は造語であり、学術的に特別なストレスが存在するわけではない。しかし、近年の目覚しい科学の発展によって、いくつものストレス要因が重なると、ただのストレスでも命に関わるような病気の原因になる事が明らかになってきた。本書は… more


 鰐部 祥平

『バブル 日本迷走の原点』

「失われた20年」が続き、今なお抜けられぬデフレ状況。本書『バブル 日本迷走の原点』は、その起点となったバブル時代の正体を様々な角度から捉えた一冊である。特筆すべきは経済モノとしての確かさだけではなく、物語としての面白さも群を抜いている点だ… more


 新潮社

『ニワトリ 人類を変えた大いなる鳥』

今日の産業化したニワトリの状況は、「絶滅よりも悪い運命」に置かれている。その強烈な栄光と悲惨――それは、この類い希な生き物に自身の欲望を反映させてきた私たち人類が負っているものでもある。本書はニワトリを鏡とした文化・文明論だが、ニワトリの足… more


 インターシフト

今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


『ヒットの崩壊』「PPAP」はヒットなのか? 編集者の自腹ワンコイン広告

ヒットの崩壊 (講談社現代新書)
作者:柴 那典
出版社:講談社
発売日:2016-11-16

ピコ太郎、RADWIMPS、宇多田、星野源…

「最近のヒット曲って何?」
そう聞かれて、すぐに答えを思い浮かべることのできる人は、どれだけいるだろうか? 
よくわからない、ピンとこないという人が多いのではないだろうか。

こういう書き出しで『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)ははじまります。心当たりのある「ヒット」曲、ありますか?

AKB48、三代目 J Soul Brothers、嵐……あたりが筆頭でしょうか。実際、オリコン年間シングルランキングを見てみると、ここ5年間のトップはすべてAKB48です。さらに5年分のトップ5(全25曲)のうち、なんとAKB48が23曲を占めています。やはりAKB48=ヒットなのでしょうか?

いやいや今年はピコ太郎「PPAP」でしょう。RADWIMPS「前前前世」でしょう。宇多田ヒカルも復活したでしょう。星野源「恋」もみんな踊っているでしょう。……そんな声も聞こえてきそうです。

ピコ太郎(Getty Images)

「PPAP」はヒットなのか

たとえばピコ太郎。世界中でPPAPの派生動画がどれだけアップロードされ、広がっていったのかをグラフで可視化したサイト「 Songrium Summary - PPAP 」によれば、これまで10万もの動画が公開され、合計再生回数は13億回以上になっているようです。

この2ヵ月間、毎日1000〜2000もの派生動画が公開されていることを見れば、世界的ヒットと言って差し支えないでしょう。

しかし、この大ヒットは「ヒットの崩壊」後のことなのです。

YouTubeでミュージックビデオを公開し、ジャスティン・ビーバーがTwitterで紹介し、Billboard HOT 100に日本人として26年ぶりにチャートインし、Spotifyのバイラルチャートでは(偽物が)全米1位を記録しました。

これまでの音楽における「ヒット」と言えば、CDの売り上げ枚数を指していました。でも、AKB48が独占するオリコンランキングからは流行を知ることはできません。

いまやヒットの定義は揺らぎ、ヒットの生まれ方も場所も多様になり、ひとつの指標で時代を感じることがむずかしくなりました。「ヒットとは何なのだろう」と考えるタイミングがやってきているのかもしれません。

YouTubeで人気、Twitterでバズっている、Spotifyのプレイリストがきっかけとなり世界で聴かれる、フェスで入場規制になる……実際、いろんなところで、いろんなヒット(のようなもの)が生まれているのです。

(Getty Images)

キーパーソンたちの葛藤、希望、危機感

ヒットなるものが変われば、ひとびとの考えもどこか変わってくるでしょう。

小室哲哉さんはいい曲を売れる曲にするには「刷り込みは必要」と言い、CD売り上げがピークに達してからは「次に行かなきゃいけない」と思っていた(けれど業界がCDをビジネスの中心にし続けていた)ことを明かしています。

いきものがかりの水野良樹さんは「環境がどんどん厳しくなっていくことを感じる10年間」と振り返りながら、「音楽という存在が社会に対して与える影響が弱くなった」ことに危機感を抱いています。

オリコンへの取材からは、「モノのランキング」のようで「人間のランキング」であることや、AKB48を巡る状況やデジタル配信のランキング化への対応、総合ランキング企業へと進化を遂げる同社の未来像が浮かび上がってきます。

これ以外にもビルボード・ジャパン、JOYSOUND、フジテレビ、注目のレーベルやマネジメント、プロデューサーなど計10名に取材を行い、興味関心が細分化し、流行が局地的に生まれる社会の変化に向き合うキーパーソンたちの考えや葛藤を本書では丁寧に描いています。

「不易流行が大切」と言いながら…

これから年末年始にかけて、生放送の大型音楽番組がたくさん放映されます。特にNHK紅白歌合戦には、宇多田ヒカルやRADWIMPSなど今年を象徴するアーティストやバンドが登場します。さらに12月21日には、SMAPのベストアルバムが発売され、おそらくCDというメディアにおける最後の大ヒットを見届けることになるでしょう。

SMAP(Getty Images)

いろんな意味で「ヒット」が出た2016年ももうすぐ終わるという中で、自分が好きなアーティスト、憧れのバンド、推しているアイドルがどういう環境の変化に向き合っているのかをぜひ知ってほしいと思います。なぜなら、ヒットが変われば、好きな人やモノを応援し楽しむことの意味や仕方までもが変容するからです。

本書では「歌は世につれ、というのは、ヒットは聞く人が作る、という意味なんだよ」という大瀧詠一の言葉が出てきます。『ヒットの崩壊』は「ヒットの作り手」であるわたしたちにとっても大きな意味を持っているのです。

ヒットが崩壊するということ。それは、モノから体験へ、マスからソーシャルへ、という重大な変化の波に飲まれた業界では、作り手も受け手もおおよそ当てはまることが多くあるでしょう。

本が売れないのは、本を売っているから。

ではどうすればいいの? 不易流行が大切、といえば一言で済みますが、激変するエンタメ業界では不易ばかりに意識を置きすぎて、必要な部分であっても変わろうとしない場面によく出くわします。「音楽(出版)不況だから…」を言い訳にしないために、本書を手にとっていただけたらと思います。

売れないモノ、消えたヒット、続かないブーム……作り手と受け手が一緒になり、エンタメの未来を明るくしていきましょう。

佐藤 慶一  編集者。1990年生まれ。新潟県佐渡市出身。greenz.jpライターやコンテンツマーケティング企業での編集を経て、「現代ビジネス」エディター。『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)がはじめての担当書籍。

送信専用メールアドレスから配信されています。
このメールにご返信いただいても内容の確認・回答はできません。
お問い合わせ、ご不明な点は info@honz.jpまでご連絡ください。配信解除はこちらからお願いいたします。

ノンフィクションはこれを読め!http://honz.jp/
Copyright © HONZ All Rights Reserved.