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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。最近、電車を乗り過ごすことが多く、困っています。本を読むのに夢中になっていた気づいたら3駅程、降車駅の先まで行ってしまうことが週に一度はあります。お酒を飲んで乗り過ごし、電車で帰れなくなったり、折り返しの電車に乗ったら戻りすぎてなぜか飲んでいた駅の近くで目覚めたりすることも週に二度はあります。HONZメルマガ、久々にお約束の流れです。

我ながら困ったものなのですが、先日、本を読んでいたら、「会食や飲み会の後に寝過ごす」は知性や品性や知識の量に関係なく悩ましい問題であることがわかりました。

戦前から戦後まで活躍した評論家でいまや絶滅危惧種である「知識人」と呼ばれた亀井勝一郎も悩みをかかえた一人だったようです。「誰だよ、それ」って人はWikipediaを読んで下さい。昭和の時代には「現代文の試験によく出る評論家」として小林秀雄と双璧をなした人物です。

時代は戦後間もなくタクシーもそんなに走っておらず、飲んだら電車で帰るのが当たり前だった頃。中央線の吉祥寺に住んでいた亀井は三鷹や立川まで乗り過ごすことが何度もあったとか。ある日、新宿で亀井と別れるときに心配になった担当編集者が乗り過ごさないようお気をつけてお帰り下さい、と言ったら、いいんだ、いい方法を見つけたんだとドヤ顔の亀井。

”当時、中央線の下りの電車は左側の扉が開くのは、吉祥寺だけだったか、あるいは中野駅と二つの駅だけだったかで、どんなに空席があっても絶対に坐らず、左側の扉に額をつけて立ち、うつらうつらしていても開く扉が起こしてくれるから大丈夫なんだ、と亀井氏は乗り過ごし防止法を話してくれた。”

『理想の文壇を』より

もの凄い単純な方法なんですが、強制的に起こされることは間違いなさそうです。当時の扉の性能や吉祥寺駅のホームの形状まで調べる余裕がありませんでしたが、シラフならともかく、乗り過ごすくらい呑んでいる人が額を扉に付けて立っていたら、開いた瞬間に大惨事になりそうなんですがどうなんでしょうか。頭をホームに打ちつけるリスクを抱えながらも乗り過ごしたくなかったのでしょうか。

頭を痛打したら知識人として致命的な気もしますが、知識人とは対極に位置する身の私としては、これからの忘年会シーズン、一回は試したいと思います。今週もメルマガスタートです。

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今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


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