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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。ブーメランといえば、蓮舫議員より西城秀樹と常々思っていましたが、その西城秀樹さんが16日に急性心不全で亡くなりました。物心ついたときには全盛期を過ぎていましたが、YMCAのおじさんとして非常に親近感を覚えた記憶があります(おじさんといっても30代前半だったと思いますが)。 故人を偲ぶ番組がテレビでも相次ぎましたが、ネットニュースを見ていたら西城さんをスカウトした上条英男さんという方が談話を寄せていました。

不勉強で存じ上げなかったのですが、ウィキペディアを見たら、かなり豪快な方のようです。「巡業していた時期に暴力団の事務所に日本刀を持って討ち入り逮捕されている」、「マネージメントを担当していた小山ルミが男性ミュージシャンにたぶらかされていたのを見かねて、二人の前でハサミを自分の胸に突き刺し『俺はこれほどまでにルミのことを思ってるんだ』と叫び気絶。小山ルミを更生させた」などとあります。

俄然興味がわき、西城さんを偲んでいたはずが、気づいたら上条さんの著書をネットで購入してしまいました。何ともレトロな装丁なのですが、これ2007年発刊ですよ。中身が中身とはいえ、今世紀の香りが全くしない作りに唸らざるをえません。

で、なぜ討ち入ったのか。当時バンドで巡業していた上条さん一行が地元のヤクザに「ウチのシマで興行するのに挨拶がない」と因縁をつけられ、楽器を破壊されたのがきっかけとか。こう振り返っています。

僕はファンからもらって持っていた日本刀をとって真夜中に飛び出し、やくざの根城に飛び込んだが、逆にヤクザに抑えこまれてしまった

どんなファンなんでしょうか、巡業先にも日本刀を常備してるんですかなどと突っ込みたくなりますが、とらわれの身となった上条さんは二度とギターを弾けないようにと小指を煉瓦で潰されます。Vシネマも真っ青です。

それでも上条さんは気にしません。「幸いなことに、ギターを弾くには右手の小指は一切必要のないものだったので私は助かった」って、助かったのか、これ。ヤクザどころか、警察にも捕まっちゃってるし。

上条さんは、館ひろしさんをスカウトしたことでも知られています。館さんが暴走族のリーダーだったということで、売り出しに際し、関東全域の暴走族のリーダーを代々木公園に集結させミーティングをさせるという企画を練ります。メディアに根回しをし、読売新聞やNHKのドキュメントでも取り上げる計画でしたが、当日になって警察から中止命令が出てしまい、全てが流れてしまいます。考えてみれば、そりゃそうだろうと思うのですが、はしごを外され、怒り心頭の一部の暴走族が上条さんに襲いかかることに。逃げようにも30台くらいのバイクに囲まれ、道路に釘やガラスの破片がばらまかれ、その上をバイクできずられ体はズタズタに。最後は鉄柵にぶつけられたとか。前歯を全て失い、8カ月立ち直ることができない重傷を負います。もはやVシネマでも放映できない惨状です。

それでも上条さんはやはり気にせず、こう総括します。

僕は体を張ることが芸能界の基本だと思っている。

張りすぎです。

このように、たまには洪水のように流れるニュースから突っ込んで本を読んでみるのも面白いかも。なぜ芸能ニュースにあえて突っ込むのか、何の役に立つんだと聞かれても困りますが。

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