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こんにちは。栗下直也です。お元気でしょうか。先週は「人生相談ばかり読んでいる」と書いた気がしますが、週末は、すべてを投げ出したくなり、著名人の日記を読みふけっていました。山本周五郎の若い頃の日記が最高です。「今日は何も為なかった」やら「今日も怠けた。昼に酒を呑んだ」やら私のような落伍者が勇気凜々になる記述にあふれており、昼酒がぐいぐい進む悪循環。まあ、永遠に何も為なかったら、山本周五郎は山本周五郎として名を残していないわけですが。
今週の編集者の自腹ワンコイン広告は、そんな私のような自棄っぱちのかたにはぴったりな一冊。「『国立科学博物館のひみつ』科博は子供が行くところ?いえいえ、大人が子供に戻れる場です」。今夏、私も行きましたが、確かに子供に戻れる場かも。今週もメルマガスタートです。
本書のテーマは1950年代アメリカ。この時代に、ファストフード、郊外の集合住宅、テレビ、性の開放、米ソによる核開発やショーアップされた政治など、その後の社会の基礎となるものが次々と生み出されたのだ。知れば知るほどに驚かずにはいられないほど、… more
村上 浩 |
本書『ナチュラル・ボーン・ヒーローズ(Natural Born Heroes )』は、人間の身体に本来備っていたはずの狩猟採集民モードに戻せれば、人間の可能性は大きく広がるというスタンスを貫く。狩猟採集民の食事や動き方には必然性があり、人間… more
内藤 順 |
凄惨な暴力、憎悪と怨恨を映画はどう描いてきたのか。テロリズムに対し映画に何ができるのか。テロリズムをテーマとした様々な映画を分析しながら、映画作品と社会との関係性、そしてテロリズムそのものについて紐解いていく一冊である。 more
アーヤ藍 |
「面白そう!だけど買えないっ!」でおなじみのこのコーナー。今週は、場が乱れに乱れまくっております。先週、声高らかに「予告SOLD OUT」を宣言した『世界の辺境とハードボイルド室町時代』(略してセカムロ)の運命は、いかに? そしてその後もハ… more
内藤 順 |
かつて日本の占領下にありながら、親日的だと言われる南洋の人々。しかし、統治下にあった時代の南洋について知る人は少なく、埋もれたままの歴史は多い。証言者が高齢化していく中で、消えゆく声を伝える本書は非常に貴重な記録といえる。 more
峰尾 健一 |
人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水 克行による、異色の対談集『世界の辺境とハードボイルド室町時代』。連載の最終回は「今生きている社会がすべてではない」ことについて。様々な国を知ることや歴史を学ぶことには、どのような意味があ… more
集英社インターナショナル |
日本におけるカレーライスは、いったいどのようなルーツを持ち、どのようにして生まれ、そして現在の形になったのだろうか。歴史を紐解くだけでなく、文化人類学的手法を使い、見事にカレーライス文化を体系的に明らかにした本書。体当たりで解き明かされてい… more
野坂 美帆 |
キリスト教以前の古代ローマでは、”Religio”という言葉は人間の血縁関係や婚姻関係といった結びつきを設定し、再設定する「行為」に関わっていたと著者は考える。行為はつまり儀式であり、信仰ではない。現在の宗教に連なる意味は、今日でも聖人とし… more
山本 尚毅 |
カイロの道端で著者は「それまでの生涯で見た一番粗末な食事(パンと小さな一束のネギ)」をしている男性2人から手振りで「いっしょに食べないか」と誘われる。その仕草はごく自然であった。著者の眼は啓かれる。ムハンマドは「二人前の食べものは三人に十分… more
出口 治明 |
今週は肌寒い日が続きましたね。夏の終わりは物悲しくなります。季節との別れは一年の辛抱ですが、そうではないものもたくさんありますよね。1962年開業のホテルオークラは「日本モダニズムの傑作」と評される本館を8月末に閉館、9月から建替え工事を開… more
仲尾 夏樹 |
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科博デビューはいつでしたか?
本書の取材中、当時国立科学博物館(通称、科博)の副館長だった著者の一人、折原守さん(2015年3月退館)にそう尋ねられた私は、一瞬答えに窮したのでした。おそらく子供の頃に来ているのだけど、思い出すのはお隣で見たパンダの記憶ばかり。勉強嫌いで、ともすればボーっとしてしまう子だった私には、動いたり鳴いたり臭ったりする動物園のほうが刺激的だったのかもしれません。後に嬉々として科博の本を手掛けることになると知ったら、さぞ驚くでしょうね。「この楽しさに早く気づかんかい!」とぶん殴ってやりたいくらいです。
国立科学博物館 は、JR上野駅公園口から徒歩5分ほどのところにある、我が国が誇る最大級の博物館施設。機関車や、大きなシロナガスクジラが目印です。
休日は家族連れが多い印象ですが、平日に訪れると小さなお子様を連れた若いママや、同じ制服を着た中学生の団体、カメラを持った男性、学生と思しき女の子2人組、海外からの観光客まで、老若男女、国籍も問わず、様々な人たちが思い思いに目を輝かせながら展示物を覗き込む姿が見られます。
触れるものや体感型の展示も多く、単純な学びの場というよりは、レジャー施設のような側面も。実は科博には、このような多くの施設に見られる「順路」の矢印がありません。森の中を探検するのに順路がないように、科博を探検するのにも順路はないのです。そのため来館者は、見たいところから、面白そうなところから、好きなようにじっくり見て回ることができます(ちなみに「おすすめルート」は HPなどで案内 があります)。
子供目線でも大人目線でも、それぞれの立場で楽しんで学べる。その工夫が随所にちりばめられていて、ひとつひとつを丁寧に見ていけば、とても1日では回りきれないほどの充実度です。
私が子供の頃も、こんなに面白い場所だったのでしょうか……。記憶が定かではありませんが、しかし、科博再デビューのときのことはよく覚えています。2013年、特別展「深海」が行われたタイミングでした。『 深海魚ってどんな魚 』(尼岡邦夫著、2013年出版)の担当を前任者から引き継ぎ、トータル数年がかりでやっと完成というときに奇跡的に起こった深海ブーム。仕事に託けて何度も足を運び、もったいないのでそのチケットで常設展を見て回り、それがもう楽しくて楽しくて。「科博の本、作りたいな」という思いが自然と沸き起こったのは、編集者の性です。
とはいえ国の主要施設であるため、小社のような小さな版元からの出版は現実的ではないというのが当時の個人的な見解で、その後、別企画にともなった運命的な出会い(参照: 「小林凛くんと国立科学博物館に行く!」 )から、あれよあれよという間に企画が現実味を帯びてきたときには、どこか信じられない気持ちとともに、「科博の楽しさを伝える本を作らなくては!」と、ものすごいプレッシャーに押し潰されそうでした……。
ただ実際に始まってしまえば、直前まで狼狽えていた自分はどこへやら。取材中、仕事を忘れて大はしゃぎしていたことを、正直に白状いたします。
だって、ご存知でしたか? あのシロナガスクジラ像にヒゲが生えていることを! なんの説明もなしに密かに動いている模型があることを! ケースに収まりきらないほどの長ーいコンブが天井に飾られていることを!
就任以来まるで天職とばかりに情熱をもって科博を盛り立て、研究者にも負けない情報量で私たちを案内してくれる折原守さんと、高度な専門知識や凡人には考えもつかないような疑問を繰り出して折原さんを困らせる(笑)もう一人の著者、成毛眞さん。ああ、このお二方と科博を回れるなんて、なんて幸せなの! これが仕事だなんて本当にすみません。そんな気持ちで、上野の本館はもちろん、科博の巨大バックヤードである筑波の研究施設までお邪魔し、本書にたっぷり盛り込ませていただきました。
「読むよりも直接行ったほうが楽しい」なんてレビューも稀に見受けますが、それは半分正解で、半分不正解です。読んで行く、あるいは持参して行くのが大正解。これまでなんとなく通り過ぎてしまっていたところに、実はこんな意図やこんな仕掛けがあったのかと、科博の心憎い演出に何度も驚かされると思います。
科博は年間200万人以上が来館する人気施設である一方、「子供が行くところ」「特別展は行っても常設展は久しく行っていない」「そもそも科学に興味がない」なんて方も少なからずいらっしゃることでしょう。でもそれはとてももったいない話。かつての私と同様に、科博の楽しさに気づいていないだけでは?
夏休みも終わり、熱気に満ちた科博も落ち着きを取り戻す頃です。本書が、一人でも多くの方の足を再び科博に向かわせるきっかけになれば、こんなに嬉しいことはありません。
というわけで、最後に折原さんの受け売りですが、この言葉で締めたいと思います。
もう大人の皆さまも、“科博再デビュー”、いかがでしょうか?
その際はもちろん、本書をご持参くださいませ。
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