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HONZの「今週はこれを読め!」

こんにちは。栗下直也です。HONZメルマガは栗下→栗下→新井のローテーションなのですが、たまに当日の午後まで自分が当番であることを忘れています。本日も14時前に事務局の仲尾夏樹から「今日、大丈夫ですか?」と連絡があり、あまり大丈夫じゃないですと返すわけにもいかず、書き始めた次第でございます。

世間は日大タックル問題をいまだにひきずっており、まるで悪の帝国が崩壊していくかのような叩かれっぷりです。そこまで叩かなくてもなどと考えながら、ネットで古本を漁っていたら、『暗黒の日大王国』『壊れる大学 ドキュメント日本大学国際関係学部』と絶妙なタイトルの本が見つかり、何とも言えない気分に。後者はまだ手に入れやすい状況なので買ってみたら、気が滅入ることこの上なく、ここで紹介するのは、はばかられる状況なのです。メルマガの存在を先ほどまですっかり忘れていたため、紹介するのが面倒になったワケでは決してありません。そもそも本を今日は持ち合わせていません。ごめんなさい。

さて、今号は久々に編集者の自腹ワンコイン広告があります。我ながら少し強引な展開ですがが、記事から、少し引用してみましょう。

”今後必要とされるのは「中心」からは程遠く、想像力たくましく生きてきた「辺境」の知恵ではないか? 虎視眈々と「中心」の動きを見ながら、斜め上をゆく新たな変革の芽を育てていたのは、いつの時代も辺境だったのではないか? さらには、世界的な行き詰まりを突破する方途は、複数の「辺境」の知恵をつなぎ合わせてまだ見ぬ星座を形作ることにあるのではないか?”

何とも読みたくなりますね。気になる方は是非、メルマガ最後に掲載されている全文をご覧下さい。

今週もメルマガスタートです。

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 麻木 久仁子

今週の「読むカモ!」今週のレビュー予定です(変更されることもあります)


 編集者の自腹ワンコイン広告

辺境の思想 日本と香港から考える
作者:福嶋 亮大
出版社:文藝春秋
発売日:2018-06-01

「中国化」する日本と香港

中国返還から20年がすぎ、「中国化」(大陸化)がじんわり進む中で、かつてのイギリス植民地下で育まれた自由の気風が減じている香港。しかし2014年の民主化デモ・雨傘運動以降、足もとでは新たな変化も起きています。一方、2011年の東日本大震災を経てオリンピックを控える東京には、どこか表層的な雰囲気が漂い、政治と社会の底ぬけが感じられるのではないでしょうか。

そうはいってもしかし、トランプ大統領の誕生以後、「中心」が抜け落ちてしまった世界で、今後必要とされるのは「中心」からは程遠く、想像力たくましく生きてきた「辺境」の知恵ではないか? 虎視眈々と「中心」の動きを見ながら、斜め上をゆく新たな変革の芽を育てていたのは、いつの時代も辺境だったのではないか? さらには、世界的な行き詰まりを突破する方途は、複数の「辺境」の知恵をつなぎ合わせてまだ見ぬ星座を形作ることにあるのではないか?

中国とアメリカという大国のはざまにありながらも、もはや「このようにありたい」「こうあるべき」という確固たるモデルを失い、どこかディストピア的、そして虚無的な領域に足を踏み入れつつある日本と香港。2つの「辺境」の足もとから、時空を超えて次なる辺境へ想像力のバトンをつないでゆこうとする1年にわたる往復書簡は、トランプ大統領誕生以後の世界の変化を、足もとから真摯に見つめた記録です。

「辺境」の想像力を過去に探り、未来に接続する

著者は、中国文学が専門ながら、東洋と西洋の思想を自由自在に越境する博覧強記の文芸評論家・福嶋亮大さんと、日本語に堪能でサブカルからアカデミックなシーンまで日本文化を心から愛する香港人社会学者・チョウイクマンさん。

雨傘運動を機に頻繁にやりとりを交わすようになった雑種的知性の持ち主ふたりは、情と理、それぞれタイプは異なりながらも、時空を超えてその対話を深めてゆきます。国民国家の枠組みにはもとからなかった自由都市香港は、中国の脅威がますなか、どんな変化にさらされているのか。

チョウさんの時に詩情あふれる現場報告は香港からマンチェスター、ボストン、再び香港へと移動を重ねますが、異国の地にあっても「辺境・辺縁」への視点に絶えず縁どられ、刻々と変化する香港情勢が文のなかに色濃くにじみます。

対する福嶋さんは、東京から日本の辺境たる東北、さらには九州へ、はたまた中東や東欧にもその想像力をとばし、時空を超えた「辺境」に思いをはせながら、立体的な応答を重ねます。

垂直ではなく水平方向の兄弟的つながり

大局的に見ればネガティブな時代の転機に思われるかもしれませんが、過去を発掘することでいかようにでもヒントを見出すことができる、という心強い思想にも貫かれた本書は、いってみれば日本と香港という合わせ鏡のような存在から出発して、まだ見ぬ地図を描きだそうとする探究的試みなのです。

さらには、国民国家の枠組みがゆらぎ、自由と民主が不確かに思われるいま、求めるべきは垂直方向にある「父」的なモデルではなく、都市と都市をつなぐ水平方向の兄弟的なモデルにある、という見立てが、この往復書簡のひとつの核となるでしょう。都市と都市、都市のエートスを丁寧につなぎ直そうとする試みは、都市に身体性を発見して、その文脈を浮き上がらせようとする創造だといってもいいかもしれません。

鳥の目虫の目的な往還によって、問い不在の現在を問うてゆく二人が見つめるのは、内田樹さんのベストセラー『日本辺境論』に抜け落ちた視座を補ってアップデートしようとする野心的試みともいえそうですし、何よりも、心と文化をめぐる熱き対話です。混迷を深める世界を切り開く雑種的想像力に富んだ未来への書を、ぜひひも解いてみてください。

鳥嶋 七実  
編集者。2006年文藝春秋入社。週刊文春編集部、文學界編集部、文春新書編集部を経て文藝局第一文藝部。担当した本に、千葉雅也『勉強の哲学』『メイキング・オブ・勉強の哲学』、井上智洋『人工知能と経済の未来』、かこさとし『未来のだるまちゃんへ』津田一郎『心はすべて数学である』、羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』、村田沙耶香『コンビニ人間』ほか。

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