
土屋 敦
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『イタリア料理の本』優しくたくましい、太陽と土とともにある手料理
ザラッとした紙に、少しくすんだような薄暗い写真が載っている。パッと見たときに、ぐっと引き込むような派手さはまったくない。しかし、じっくりと眺めていると、ものすごく力強い写真であることがわかる。手打ちパスタにしかないマチエール、加熱された完熟プ……more
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熱くて面白い。不思議な科学本『サルバルサン戦記』
著者の岩田先生は、不思議な本を書く人だ。自身の専門である感染症を核にして、抗生物質、ワクチン、さらにはパニックに対するリスクコミュニケーションなどを明快に論じると同時に、自らの知見、思い、そして生き方の根本的な思想までもを、人に伝えようとする……more
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日本を愛したスパイ『ドクター・ハック 日本の運命を二度にぎった男』
書影を見て、「ドクター・ハックって、あのハックか」と思わず手に取った。著者は『満州国皇帝の秘録』『トレイシー−−日本兵捕虜秘密尋問所』そして『四月七日の桜−−戦艦「大和」と伊藤整一の最後』の中田整一氏だ。面白くないわけがない。1914(大正3……more
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『洲崎球場のポール際』猥雑で、いいかげんで、すばらしい。
2015年01月23日洲崎球場。東京の木場から東陽町あたりのいわゆる海抜ゼロメートル地帯で、かつては吉原と並ぶ歓楽街。映画ファンには川島雄三の『洲崎パラダイス赤信号』がまず思い浮かぶだろう。昭和4年の統計によると、遊郭には2329人の娼妓がおり、1日に3760人が……more
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『ブルネイでバドミントンばかりしていたら、なぜか王様と知り合いになった。』
2005年、著者は経産省から外務省に出向し、在ブルネイ日本大使館の二等書記官となる。ブルネイは石油と天然ガスにめぐまれ、東アジアでもっとも裕福な国だ。ブルネイ王室は、世界一裕福な王族であり、その資産は4兆円といわれる。「ポルシェ、フェラーリな……more
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パンをめぐる濃密な冒険『パンの世界』
2014年12月03日パンを買うのが好きな人はもちろん、パンを自分で作る人たちにとっても、志賀さんは天上人のような存在だ。大ヒットした高橋雅子さんの『少しのイーストでゆっくり発酵パン』シリーズや、最近ブームになってきている、ストウブやル・クルーゼで作る「こねないパ……more
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やっぱり日本の翻訳家はスゴイ!『翻訳問答』
シンプルでセンス溢れる軽快な装丁、帯には江國香織と穂村弘の推薦文、著者は、僕らの世代だと、ハワイやサーフィンのイメージがすぐに浮かぶ、作家・翻訳家の片岡義男と、クッツェーの翻訳や『嵐が丘』の新訳で知られる鴻巣友季子。そしてタイトルの「蒟蒻問答……more
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ノンフィクション好きなら必読!『ジャーナリズムの現場から』
『メルトダウン』などの作品で知られる大鹿靖明が、10人のジャーナリストをインタビューし、まとめられた作品。人選のセンスの良さに思わず手に取った。 …more
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カカポ奇跡の復活! 『ねずみに支配された島』のもうひとつのメインストーリー
ニュージーランド原産のオウムであるカカポは、体重は3〜4キロとオウムのなかでもっとも大きく、そして飛ばない。 哺乳類のいない世界で進化した彼らの敵は、上空から襲いかかる猛禽類だけだった。その攻撃を避けるためにカカポは夜間に活動し、……more
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ナニコレほしい!『侍達ノ居ル処。』
2014年03月13日細部の質感まで見事に表現された甲冑、絶妙な表情、「シャネル」ロゴの配置における洗練されたセンス、作品の背景として創作されたストーリーの面白さ、そして、人間の肉体そのものの、滑稽さを伴うリアルで生々しい表現。もう最高だ。題して「シャネル侍着甲座……more
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山に行きたい!『定本 黒部の山賊』
この本、実は1964年に発売され、その後1994年に復刊されたものの入手が難しくなり、近年は著者とその家族が経営する北アルプスの山小屋でしか入手ができなくなっていたもの。そして今年の2月下旬に2度めの復刊となったたとん、忽ちamazonの「登……more
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終了しました→『もっと面白い本』刊行記念 HONZ公開朝会のお知らせ
2014年02月27日尚、公開朝会など、HONZのイベントにつきましては、HONZ会員にご登録いただけますと、メールマガジン等でお知らせいたします。この機会にぜひご登録をお願いいたします。 …more
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『教誨師』 死刑囚と向き合い続けた男
教誨師とは、拘置された死刑囚と唯一面接できる民間人である。面接を望む死刑囚と対話し、ときに悔悟を促し、教え導く役割を負う。そしてさらに、面接を続けた死刑囚の刑の執行にも立ち会う。本書はそんな過酷な任務を全うした僧侶をめぐるノンフィクションだ。……more
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ストン、ストン、胸に落ちる音がする。『あわいの力』
2014年01月23日甲骨文字や古代哲学に詳しい能楽師が語る、身体感覚に基づくまった新しい論考。不安と悲しみが満ちる「心の時代」を次を生きるために。…more
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2013年 HONZ 今年の1冊
2013年12月30日各レビュアーが今年の一冊をご紹介する、恒例の「HONZ 今年の一冊」、いよいよ発表。というか、やっと出揃いました(某ノーレビュー師匠がなかなか書かないのはレビューだけではなかったのだ)。毎度のことながらみんなバラバラですが、それぞれの個性がい……more