
新潮文庫
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『つかこうへい正伝』”記憶”を”記録”へ
2020年06月10日単行本で550ページを超える本書は、4年の歳月をかけて書き上げられました。「つか以前」「つか以後」という表現を生んだ70~80年代の”つかブーム”。演劇界に革命をもたらした不世出の劇作家・演出家であったつかこうへいと日々行動をともにし、その強……more
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『組長の妻、はじめます。 女ギャング亜弓姐さんの超ワル人生懺悔録』裏社会に咲いた愛の物語
2020年04月13日面白い物語ではあった。しかし、予想は完全に裏切られた。エピソードの迫力は段違いで、半笑いで読み飛ばせる話はほとんどない。極めて重厚、ハードな犯罪ノンフィクションといって差し支えない。…more
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『ウルトラセブンが「音楽」を教えてくれた』
2020年02月27日本書は、1960年前後に生まれた世代のテレビや音楽やレコードへの接し方についての大切な記録であることはもちろん、クラシック音楽を好きになるとはどういうことなのかを考えるためのひとつの入門書でもあり、青山少年の成長物語でもあるだろう。 こ……more
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『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』
2020年01月29日米本浩二によるこの『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』はイギリス的な基準においてまこと正統な伝記である。 わざわざ大げさにイギリスのことを持ち出したのは、この評伝を読んだぼくが少し当惑しているからだ。米本は何百回となく本人にインタビューを……more
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『THIS IS JAPAN 英国保育士が見た日本』
2019年12月29日ニュースを共有するジャーナリストや、概念を共有する評論家と異なり、ライターのブレイディみかこは、風景を共有する。何かを語り、変えようとするためには、風景が共有されなければ始まらない。 ヨーロッパでも、一人の子供の死が、その写真という風景……more
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『あなたは、なぜ、つながれないのか ラポールと身体知 』
2019年12月28日刊行当初から否応なく気にかかる一冊だった。タイトルが目に飛び込んでくる度、反射的に目をそらしたくなる自分がいた。『あなたは、なぜ、つながれないのか』。他者と打ち解けることができない自分の弱さを責められているような不安、弱さを突きつけられること……more
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『マゾヒストたち 究極の変態18人の肖像』
2019年10月31日SMに関わる人たちをS女性・M女性・S男性・M男性の4種に分けると、もっとも興味深いのがM男性なのだ。興味深くはあっても、一人一人に直接話を聞ける機会は決して多くはない。それこそ、新潮社の社員だった天野哲夫さんなど、著名なマゾが著書を出してい……more
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『愛という名の支配』わたしたちを幸せにするフェミニズム
2019年10月30日田嶋陽子さんは、討論バラエティ『ビートたけしのTVタックル』への出演で高い知名度を得た、日本を代表するフェミニストだ。時は1990年代、平成がはじまったばかりのころ。フェミニストがどういう人なのか、フェミニズムがなんなのかまったく知らなかった……more
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『兵士に聞け 最終章』「戦後」を旅した24年
2019年08月14日杉山隆男の自衛隊の旅は長く多彩であった。レンジャー訓練をはじめ、空自のF-15、海自の哨戒機P-3Cに試乗した。すさまじいGに押し付けられて気を失いかけ、急角度の上昇と下降に嘔吐した。横須賀から海自の潜水艦に乗り組み、日焼けしない海の男たちと……more
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『今日われ生きてあり 知覧特別攻撃隊員たちの軌跡』
2019年07月30日思い切って告白するのだが、私はこの本を泣きながら読んだ。はじめてこの本を読んだとき、書斎で嗚咽した。号泣しそうだったが家族をおどろかせるのをはばかって声を殺して泣いた。なみだが幾度も流れた。…more
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『少年ゲリラ兵の告白 陸軍中野学校が作った沖縄秘密部隊』
2019年07月29日本書は2015年に放送されたNHKスペシャル「アニメドキュメントあの日、僕らは戦場で〜少年兵の告白〜」の取材記録をあらためて書き起こしたものである。番組は戦後70年という節目に制作されたが、不覚にも、僕はこのドキュメントを見て「護郷隊」の存在……more
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『骸骨巡礼 イタリア・ポルトガル・フランス編』身も蓋もありません
2019年07月02日本書は南欧での墓地巡礼の記録なのだが、旅行記としてはかなりヘンである。自分で始めておきながら、ご本人が「どうしてこんなこと、始めちゃったのかなあ。自分でもよくわからない」とつぶやいているし、墓地に出かける前にホテルに宿泊するとホテル批評がぶつ……more
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『幻の料亭 「百川」ものがたり』「百川」に「咄々」する
2019年05月31日本書最大の「咄々」は、最後にやってくる。黒船でやってきたペリー一行をもてなしたのが、他ならぬ「百川」だったって、皆さん、ご存知でした? アメリカ側三百人、接待する日本側二百人、合計五百人分。しかも、出張である。食材はもちろんのこと、大皿、小皿……more
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『バブル 日本迷走の原点』時代を見事に描き切った総括、形をかえた自伝
2019年05月10日内外の経済社会の流れや、その中に位置づけられる制度、慣行、政策を追う冷徹な眼と厳しい批判力。他方では人間に対する深い洞察力と愛情。相矛盾しかねないこのような二つの視点を併せ持ち、一つの時代を見事に描き切った本書は、やはり永野さんにしか書けない……more