
栗下 直也
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『戦前尖端語辞典』新語・流行語に見る「言葉」 今も昔も変わらないあり方
2021年03月20日寝る前に読む本、通勤時に読む本と状況に合わせて本を読み分けている人は少なくないだろう。私もそのひとりだが、意外に難しいのがトイレで読む本の選択だ。 トイレと聞いて馬鹿にしてはいけない。選書の難しさでは最高峰にある。トイレタイムには長短が……more
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『堕ちたバンカー 國重惇史の告白』「住銀を救った男」が銀行を追われた理由に迫る
2021年02月20日著者は國重氏の部屋で銀行時代の辞令をいくつも見つける。そして、本書の最後で國重氏に問いかける。なぜ銀行を離れなければならなかったのか。本当に私生活の問題からなのか。銀行を誰よりも愛し、出世レースの先頭を走っていたのに、後悔はないのか。果たして……more
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『医療現場は地獄の戦場だった!』社会構造のゆがみがウイルス蔓延につながる
2021年01月02日米ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、世界の新型コロナによる死者数が170万人を超えたという(2020年12月22日時点)。最も多い米国では30万人を超え、1日の死者数が3000人以上の日もある。いまだ収束の気配は見えない。 医療現……more
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『元号戦記 近代日本、改元の深層』元号決定過程の秘密 「密室政治の極致」に迫る
2020年12月05日本書は、多くの人は想像すらしないような特命を帯びた人がこの国にいることを教えてくれる。だが、それだけではない。元号制定の謎を解き明かそうとすると同時に、元号が誰のものかにも迫る。また、元号と政治の歴史には1章があてられており、その決定過程がい……more
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『ルポ新大久保 移民最前線都市を歩く』自ら移り住んだ著者が多国籍タウンの今を活写
2020年10月24日東京・新大久保といえば韓国のイメージが強い。韓流アイドルの関連グッズや化粧品を求めて客が押し寄せる光景はテレビでもおなじみだ。だが、コリアンタウンとしての顔は一面で、今や「東南アジアの下町」の様相が色濃くなっているというから驚く。本書では、新……more
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『ドキュメント 感染症利権 医療を蝕む闇の構造』国民の健康より省益優先、感染症の意思決定の歴史
2020年09月19日「隔離」は感染症対策の基本だが、元患者や家族が日常生活を送れなくなるのは異常だろう。例えば、ハンセン病は21世紀になってようやく、患者への隔離政策に違憲判決が出た。しかし、その後も元患者への差別がなくならないのが日本の現実だ。 社会をす……more
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『スポーツ・アイデンティティ どのスポーツを選ぶかで人生は決まる』「皆が野球」ではない、スポーツ選択を考える
2020年08月08日本書は文化論であり、組織論であり、教育論でもある。組織内のコミュニケーションに悩む人ならば、上司や部下がどのようなスポーツの経験者かを知ることで、会話を友好的に運ぶ方法を見いだせるかもしれない。小さな子どもを持つ親ならば、子どものスポーツ選択……more
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『ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか』「正しさ」という思考停止、集団暴走の仕組みを学ぶ
2020年07月04日白いシャツにジーパン姿の約250人が室内で足を一斉に踏みならす。「ハイル、タノ」の大声とナチス式敬礼で指導者に忠誠を誓う。屋外に出れば、いちゃつくカップルを集団で取り囲み、「リア充、爆発しろ」と糾弾する。カップルを退散させた「田野帝国」の構成……more
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『天才の考え方 藤井聡太とは何者か?』常人には理解しがたい? 天才棋士たちの思考を覗く
2020年05月30日勝負事にどのような気構えで臨むのか、運やツキを信じるか、自分の「型」にはどこまでこだわるべきか、事前の研究はどのようにすべきか、直感は正しいかなどなど。仰々しいタイトルだが、われわれ凡人の参考になることも多い。…more
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『ヤクザときどきピアノ』50代ヤクザ専門ライター、憧れのピアノに挑む
2020年04月18日運動でも始めようか、せめて食生活を変えようかと決意して何回目の春を迎えただろうか。実は、腹まわりがここ5年で10センチメートル増えた。かけ声だけは威勢がいいのだが、見た目が物語るように動きが重い。私のように、いま動かないでいつ動くんだ、と思い……more
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『昔は面白かったな 回想の文壇交友録』文壇を回顧する超高齢対談、見え隠れする死の影
2020年03月14日芥川賞を受け、時代の寵児になり、東京都知事も務めた作家の石原慎太郎氏と、同時代を生きた文芸編集者である坂本忠雄氏。対談形式で、昭和の文壇、戦後社会などについて語り合う。 三島由紀夫、川端康成、小林秀雄、大岡昇平など大御所の秘話が次から次……more
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『息子たちよ』週1日「五時間の父親」が2人の息子に寄せた思い
2020年02月08日著者は「本の雑誌社」の創業メンバーで文芸評論家としても名高い。書評を切り口に、家族の思い出を重ねるエッセー形式で、息子たちへの思いをつづっている。 子供たちへの愛にあふれる本であるが、決してイクメンのお父さんの回顧録ではないので安心して……more
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『お金本』カネには色がないが、使い手には色がある
2019年12月28日経団連の1次集計では、大手企業に限れば冬のボーナスの平均額は過去最高なのだという。ほくほく顔の人もいれば、まったくピンと来ない人もいるだろう。不思議なことに、収入が少なくても貯める人は貯めているし、多くもらおうがカネがない人は常にない。それは……more
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『「してはいけない」逆説ビジネス学』読むと起業したくなくなる? 傷だらけ試行錯誤の説得力
2019年11月23日2019年のビジネス本で一番の奇書といっても過言ではないだろう。タイトルの長さに目を奪われるが、内容も語り口こそ熱いながら読み手のモチベーションは上がるどころか下がりかねない。「俺がラーメン屋を始める前にこの本を読んでいたら、絶対にラーメン屋……more
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『奴隷船の世界史』それは過去完了では語れない、近代そして現代世界の暗部
2019年11月03日奴隷制は過去の西洋の暗部でもなければ、過去完了で語られる物語でもない。経済のグローバル化が拡大する今、自分が無自覚に誰かを「奴隷船」に乗せている世界に生きている、ということに気づかされる。…more