
秋元 由紀
-
『コーネル・ウェストが語るブラック・アメリカ 現代を照らし出す6つの魂』
2016年07月28日著者コーネル・ウェストは、肩書きや職業だけではとてもとらえきれない人物である。強烈なひとつの魂、ひとつのパワーがとりあえず哲学者の姿をとっているとでもいおうか。実際のウェストはどんな日も黒のスリーピーススーツに黒のネクタイ、白のシャツにゴール……more
-
『小さな民のグローバル学』支配装置に組み込まれつつある、海の民モーケン人たち
2016年02月21日本書は、市場経済中心のグローバル化の波にもまれ、ときには生活を脅かされながらも生き抜く人びとの世界や、そこにかかわる国際協力についての論考集である。世界経済を中心に考えれば、そうした人びとは周縁に置かれ、弱い立場にある。しかしそれぞれの論考か……more
-
『「見えざる手」と「見えざる心」』 白馬に乗った王子様には掃除をすべき城がある
2015年12月03日おとぎ話はたいてい、王子と姫が試練の末に結ばれ、その後ずっとお城で幸せに暮らしました、というところで終わる。物語としてはそれでいいのだが、本書はあえて王子と姫のその後を想像するところから始まる。考えてみれば、王子と姫はワーキング・カップルであ……more
-
『人質460日』イスラム過激派に拉致。絶望的な状況の中で、彼女は「天空の家」を打ち建てた
2015年10月26日監禁されて自由に動けなくなり、精神的にも追い詰められてからのアマンダの語りは澄みきり、力を増していく。とくに原書のタイトルでもある<天空の家>を建てる場面は圧巻だ。自分の弱さを取り繕わず、ありのままを語るアマンダの声はまっすぐ心に響いてくる。……more
-
『地図から読む江戸時代』認識が地図をつくり、地図が認識を変える
2015年09月20日どんな人が何を考えて日本図を作製したのか。その日本図には「日本」や「日本人」についてのどのような認識が見え隠れするのか。扇や屏風に描かれたもの、浮世絵師が趣向を凝らしたもの、南が上になっているもの、手描きのものから出版されたものまで、掲載され……more
-
『性からよむ中国史 男女隔離・纏足・同性愛』
2015年07月27日帯に「西洋的概念では捉えきれない、性の視点から中国近現代史を見渡す」とあるとおり、本書は西洋の尺度に対してどのくらい進んでいる、遅れている、という見かたをせずに中国での性のありようを描き出す。同時にその考察を通じて、読者が日本での性のとらえか……more