
西野 智紀
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『ぼくと数学の旅に出よう 真理を追い求めた1万年の物語』「数」に秘められた歴史と驚異、そして情熱
閑話休題、本書は1984年フランス生まれの若き数学者ミカエル・ロネーによる数学普及運動を書籍としてまとめた一冊だ。内容を一言で説明すると、1万年以上前から現代に至るまでの数学の発見や歩みを平易かつ親しみやすい文章で紹介した数学史である。数学好……more
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『辞書編集、三十七年』ことばを編むとき、人間模様が見えてくる
1980年の春に小学館系の出版社に就職し、辞書編集部に籍を置き、以後異動することなく辞書を編み続け、2017年に定年退職した。華やかな仕事ではないし、起伏に富んだ人生だったわけでもないが、世の中に辞書一筋の編集者がそんなにもいるとは思えないの……more
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『「日本の伝統」という幻想』時代の変わり目を前にして
2018年12月06日本書『「日本の伝統」という幻想』は、昨年11月末に上梓された『「日本の伝統」の正体』に続く第二弾である。『「日本の伝統」の正体』は、日本にある伝統と呼ばれるものの多くが実は明治時代以降の発明であることを調べ分類した一冊で、発売後反響を呼んだ。……more
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『東西ベルリン動物園大戦争』きわめて人間くさい動物園の物語
2018年11月06日本書は動物園人たちを主人公とする骨太ノンフィクションだ。舞台は東西に分断されていた時代のドイツ・ベルリン。この都市には、壁を挟んで、二つの動物園が存在していた――西のベルリン動物園と、東のティアパルク。両動物園は、娯楽施設というだけでなく、2……more
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『進歩 人類の未来が明るい10の理由』悲観に入れ込みすぎないように
2018年06月24日連日ニュースを見ていると、そんなにメンタルの強くない筆者などはすぐ気が滅入ってしまう。ひどい時代に生まれてしまったものだと思わずにはおれない。そうしていだかれた悲観論に一石を投じるのが、本書だ。一言で説明すれば、人類がここ2世紀あまりで飛躍的……more
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『「日本の伝統」の正体』著者インタビュー
2018年02月08日柏書房に赴き、著者の藤井青銅さんにインタビューを行った。作家・脚本家・放送作家とマルチに活躍し、いっこく堂や伊集院光、オードリーといったタレントたちの仕事にも関わってきた藤井さん、どんな人だろうと内心びくびくだったが、お会いしてみると優しく面……more
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『「日本の伝統」の正体』言葉の魔力に振り回されないために
2018年01月03日日本の伝統とされるものは、明治以降の発明である場合が多い。100年近く続いていれば伝統と呼んでもいいんじゃ、という向きもいるだろう。断っておくと、本書はべつに伝統そのものを否定しているわけではない。著者はこう述べる。 「伝統があって、人間が……more
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『どうしても欲しい! 美術品蒐集家たちの執念とあやまちに関する研究』理想の自分に近づきたくて
2017年11月06日本書は、古美術品の私的コレクションを築き上げた人々の動機と自己認識について分析した一冊である。著者は美術品犯罪研究の専門としてアメリカで唯一の大学教授で、「古美術品コレクターの執念は虚栄心によるもの」とする世間の単純化されたイメージに反発して……more
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『森の探偵 無人カメラがとらえた日本の自然』人間社会に急接近する動物たち
2017年10月07日宮崎さんの写真の特徴は、何といっても「無人カメラ」を用いている点だ。長年の経験から、野生動物たちのセンサーをかいくぐって、その生態をとらえるためには、野ざらしの無人カメラしかないと考えた彼は、赤外線を使った自動撮影システムを独自に考案・開発し……more
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『科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか』凶悪犯罪と法科学の歴史200年
2017年09月01日多くのミステリードラマや推理小説の題材として扱われる科学捜査は、馴染み深い捜査手法であるが、現実とフィクションが違うのもまた事実である。実際のところ、科学捜査官たちはあの非常線の向こう側で何をしているのか? そんな素朴な興味から、英国を代表す……more
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『歴史の証人 ホテル・リッツ 生と死、そして裏切り』権力の交点となったホテルでの魅惑的な群像劇」
2017年07月31日第二次世界大戦さなかの1940年6月14日、パリはドイツに占領され、豪奢なホテル・リッツはナチスの拠点とされてしまう。ところが、ホテルの半分(カンボン通り側、バー、レストラン)は一般人にも開放されていたため、枢軸国の将校から裕福なフランス市民……more
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『Mr.トルネード 藤田哲也 世界の空を救った男』嵐のような天才気象学者の生涯を追う
2017年06月29日「とにかく私の人生は面白い。安定とは無縁だった」 気象学者、藤田・テッド(セオドア)・哲也は、自身の歩みを回顧して、そう語った。本書は、彼の生涯をつぶさに書きとめた評伝であるが、この引用の言葉どおり、とんでもなく面白い。なにせ、気象学者ながら……more
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『ベストセラーコード 「売れる文章」を見きわめる驚異のアルゴリズム』コンピューターによる文芸批評の時代
2017年05月31日本書『ベストセラーコード』は、タイトルに偽りなく、ベストセラーとなった小説の「売れる法則」をコンピューターで解き明かした一冊だ。それでもなんだか眉唾だ、と思う向きがいるかもしれないので、フォローすると、著者は二人ともアメリカのバリバリの文学研……more