
鰐部 祥平
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『ロシアン・ルーレットは逃がさない プーチンが仕掛ける暗殺プログラムと新たな戦争』「ロシアの敵」は世界のどこにいても殺される
2020年12月19日本書はバズフィード・ニュースの国際調査報道エディターであるハイディ・ブレイクと彼女のチームがプーチンによる暗殺事件を追った調査報道をまとめたものだ。 中心となるのは、新興財閥オリガルヒの一員でプーチンと対立するベレゾフスキーとその側近た……more
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『地下世界をめぐる冒険 闇に隠された人類史』地下愛好家が追い求める、人間の脳に眠る「古代」
2020年11月14日地下愛好家という人々がいるらしい。皆が寝静まった真夜中に都市の下水溝や地下鉄のトンネルに忍び込み、日常では味わうことのできない感覚を求める人々だ。 本書の著者、ウィル・ハントもそんな地下愛好家の1人だ。きっかけとなったのは、16歳のとき……more
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『言論の不自由 香港、そしてグローバル民主主義にいま何が起こっているのか』強権化する大国中国と それに抗う若者たち
2020年10月10日2017年から香港特別行政区行政長官選挙を普通選挙で行うという約束を、14年に中国政府が反故にしたことに反発する市民らが行った抗議活動、「雨傘運動」は、日本でも大きなニュースになった。この運動で中心的な役割を果たした組織が「学民思潮」だ。本書……more
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『KGBの男 冷戦史上最大の二重スパイ』ソ連のエリートがMI6に、歴史を動かした二重スパイ
2020年09月05日スパイ小説といえば007シリーズの作者イアン・フレミングや、ジョン・ル・カレといった英国の作家の名が頭に浮かぶ。「やはり、スパイ小説は英国に限る」と通ぶってみたくなるが、実は、ノンフィクションの世界にも同じようにスパイ分野の第一人者といえる作……more
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『邦人奪還 自衛隊特殊部隊が動くとき』小説だからこそ書けた安全保障問題の不都合な事実
2020年08月26日元海上自衛隊の特殊部隊「特別警備隊」の創設者のひとりで先任小隊長を務めていた伊藤祐靖氏が書いた小説だ。ノンフィクション書評サイトのHONZでは基本的には小説を扱わない。しかし、フィクションだからこそ、逆に安全保障問題という難題をリアルに描いて……more
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『イスラエル諜報機関 暗殺作戦全史』テロと暗殺が交錯する、紛争地帯の現実と倫理
2020年07月24日まるで映画か小説のような話だ。本書には、イスラエル建国以来行われてきた暗殺作戦の詳細が、全編にわたり書き記されている。敵に囲まれたイスラエルでは、国家の存亡をかけた戦いが常に行われてきた。…more
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『シリア原子炉を破壊せよ イスラエル極秘作戦の内幕』極秘裏のシリア原子炉空爆、その背後の覚悟と戦略
2020年06月20日2007年、シリアの砂漠地帯で密(ひそ)かに建設されていたアルキバール原子炉を、イスラエルが空爆した。イスラエル政府がこの攻撃を公式に認めたのは18年になってからだ。本書は、秘密裏に行われ、その後もイスラエルが黙秘してきた原子炉攻撃の全貌と、……more
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『文化大革命 人民の歴史 1962-1976(上・下)』文化大革命が破壊したもの、暴かれる独裁政権の本質
2020年05月16日本書は、膨大な資料を徹底的に読み込み「大躍進政策」の全貌と中国人民の塗炭の苦しみを暴いた良書『毛沢東の大飢饉』の著者、フランク・ディケーターによる新刊だ。…more
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『下級国民A』格差社会が生み落とすもの、美しい国の不都合な真実
2020年04月04日本書は62歳で「住所不定無職」の新人作家として鮮烈なデビューを果たした作家、赤松利市が経験した、東日本大震災の復興事業に関するルポルタージュだ。 著者、赤松は35歳で起業し、一時は年収2000万円を超えていた。しかし、ある事情により会社……more
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『クリーンミート 培養肉が世界を変える』若者たちは培養肉で新たな緑の革命を目指す
2020年02月29日2013年にマーク・ポストとピーター・フェアストラータというオランダ人研究者2人が、世界初の培養肉で作られたハンバーガーを発表した。培養肉でできたパテの値段は33万ドルという高額なものだった。 わざわざ動物の細胞を採取し試験管内で高価な……more
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『21Lessons 21世紀の人類のための21の思考』急速に変化する世界をどう生きる 知の巨人が語る現代の問題21章
2020年01月25日近年、急速に発展するテクノロジーと科学の進歩は、産業革命を超える社会的変化を私たちに強要しつつある。その変化は産業革命よりもはるかに大きく、そして速い。そのような現代の問題に警鐘を鳴らすのが、世界的なベストセラーとなった『サピエンス全史』の著……more
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『しらふで生きる 大酒飲みの決断』生きることは寂しい、だからこそ酒を断つ
2019年12月14日30年間毎日欠かさずに酒を飲み続けてきた作家、町田康の断酒エッセーである。こう書くと酒をやめて健康になった暮らしぶりを健やかにつづったエッセーを想像してしまうが、決してそんな生易しいものではない。…more
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『海峡に立つ 泥と血の我が半生』生臭い社会を駆け抜けた「フィクサー」の半生
2019年11月09日戦後最大の経済事件といわれる「イトマン事件」で逮捕された許永中が自身の半生を綴った自伝である。 許永中が語る戦後からバブル期までの日本は、現代のような漂白された潔癖な社会ではなく、政、財、官と裏社会が分かちがたく深く結びついた社会である。良……more
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『「戦場のピアニスト」を救ったドイツ国防軍将校 ヴィルム・ホーゼンフェルトの生涯』憎悪と暴力の渦の中で人間愛を失わなかった男
2019年10月05日本書は、狂気に満ちた人物がいったん権力を握り、官僚機構の組織力と扇動された大衆の熱狂とを強大な原動力にして、虐殺のシステムを運用するとき、個人の善意と抵抗がいかに無力であるかも教えてくれる。 イデオロギーのいかんにかかわらず、このような……more
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『世界の危険思想 悪いやつらの頭の中』世界の裏社会から見えてくる、犯罪者の思考と人間の深い業
2019年08月31日本書は著者が取材した殺し屋や売春婦、ドラッグディーラーやジャンキーなどといった裏社会に生きる人々が、何を考えて犯罪という道を選び、行動するのかを考察した1冊である。著者自身が言及しているように、「思想」といっても体系だったイデオロギーのような……more