
冬木 糸一
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悪に科学で踏み込む──『悪について誰もが知るべき10の事実』
2019年09月25日本書は、人間が行う悪的な行動について、それがどのような原因によって引き起こされるのかを科学的に解き明かしていこうと試みる一冊である。悪を科学的に解き明かす──といっても、その前段階にある問い、悪とはいったい何なのか、というのがまず難しい問題……more
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時間とはいったいなんなのか?──『時間は存在しない』
2019年09月05日日本でも彼が提唱者の一人である「ループ量子重力理論」の解説をした『すごい物理学講義』が売れているが、本書はそのループ量子重力理論から必然的に導き出せる帰結から、「時間は実は存在しないのである」ということをわかりやすく語る、時間についての一冊で……more
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宇宙誕生の謎を解き明かしつつある人々の話──『ユニバース2.0 実験室で宇宙を創造する』
2019年08月08日序盤はビッグバンやループ量子重力理論について、中盤から後半にかけてはインフレーション理論およびひも理論について、しっかりとした紹介が行われていくが、おもしろいのはインタビューの軸に「宗教」があることだ。その理由の一つは、著者自身が人格神を信じ……more
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自律型兵器に関する、一般読者向けの最良の道案内となるノンフィクション──『無人の兵団──AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争』
2019年07月25日無人兵器についての一般向けのノンフィクションはこれまでも出ていたが、ようやく最新の政治、技術を踏まえた上で自律型兵器を網羅的に語ってくれる本が現れた!…more
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人文文化と科学文化の融合──『なぜ脳はアートがわかるのか 現代美術史から学ぶ脳科学入門』
2019年07月05日なぜ脳はアートがわかるのか。そんなことをいうと「いや、自分はさっぱりアートはわからん」という人がわらわら湧いて出そうだが、かくいう僕自身もそのタイプである。真四角の図形をぽこぽこ置いて赤だの黄色だので塗ったよくわからない絵が抽象絵でありアート……more
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物語はいかに、どれほどこの世界に影響を及ぼしているのか──『物語創世──聖書から<ハリー・ポッター>まで、文学の偉大なる力』
2019年06月25日本書では、そのような世界に対して強い影響力を持つ物語のことを「基盤テキスト」と呼称している。その格好の一例は聖書だ。たとえば、アポロ計画二度目の有人宇宙飛行ミッションにあたるアポロ8号が、月の周回軌道を回っている時に、聖書の『初めに、神は天地……more
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多様なイラストレーションによって彩られた、奇想小説執筆ガイド──『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』
2019年06月05日本書『ワンダーブック 図解 奇想小説創作全書』は、『全滅領域』(これを原作とした映画もnetflixで公開されている)から始まる《サザーンリーチ》三部作で知られる作家・ジェフ・ヴァンダミアによる執筆ガイド本である。本書には他の執筆ガイドと異な……more
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何でも治ることを売りにした最悪の治療法の歴史──『世にも危険な医療の世界史』
2019年04月25日現代でもインチキ医療、危険な医療はいくらでも見つけることができるが、過去の医療の多くは現代の比ではなくに危険で、同時に無理解の上に成り立っていた! 本書『世にも危険な医療の世界史』はそんな危険な医療史を、元素(水銀、ヒ素、金など)、植物と土(……more
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本のない原初の図書館から空想上の図書館まで──『図書館巡礼 「限りなき知の館」への招待』
2019年03月25日図書館巡礼という名の通り、本書は世界各地の図書館について、本のない時代からボルヘスによって想像されたバベルの図書館のような空想上の図書館まで、幅広く取り扱っていく一冊である。原題は『THE LIBRARY A CATALOGUE OF WON……more
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進化の方向性を支配してきた「移動運動」というテーマ──『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』
2019年03月05日というわけで本書『脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年』は邦題に入っている脚・ひれ・翼だけではなく、そもそも今のような生物の「かたち」はどのような物理法則の結果収束していったものなのか? を40億年のスケールで……more
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齢90を超えてなお新しい作品を生み出し続けた芸術家の人生──『スタン・リー: マーベル・ヒーローを創った男』
2019年02月25日映画『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の後編『アベンジャーズ/エンドゲーム』公開が間近に迫り、今か今かと待ちわびている昨今。現在も活躍するマーベル・ヒーローの多くの生みの親であり、基盤を作り上げてきたスタン・リーの伝記が本書『スタン……more
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予測精度の向上が、ビジネス戦略に破壊的な転換をもたらす──『予測マシンの世紀 AIが駆動する新たな経済』
2019年02月14日人工知能の発展・普及のすさまじい昨今だが、すっかりバズワード化してしまって「ここでいう人工知能って何を指しているわけ?」がわかりづらいケースも増えてきてしまっている。そんな中にあって本書は、人工知能とはいっても実際にはそれらは「知能」そのもの……more
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つまらない仕事を減らせ──『NO HARD WORK!: 無駄ゼロで結果を出すぼくらの働き方』
2019年01月25日『小さなチーム、大きな仕事』の著者(というか会社)による最新作は、たくさん働いたって成果なんか上がらないしやめようぜ、休暇もいっぱいとろうぜ、という一労働者としては至極ありがたい思想を具体的なメソッドに落とし込んだ一冊である。…more
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死とどう向き合うべきか──『現代の死に方: 医療の最前線から』
2018年12月25日死は一つだが死に至るルートは複数あり、自分はまだ死んだ経験はないので、備えようと思っても難しいものがある──と、そんなことを考えているうちに刊行されたのが、シェイマス・オウマハニー『現代の死に方』だ。アイルランドで医者として日々患者らと接し、……more
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異なる道筋で進化した「心」を分析する──『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』
2018年12月16日タコには5億個ものニューロンがあり(これは犬に近い。人間は1000億個)、脳ではなく腕に3分の2が集まっている。犬と同じニューロンってことは、犬ぐらい賢いのかなと考えてしまいそうになるが、タコは哺乳類らとは進化の成り立ちが根本的に異なるので、……more