サイエンス
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『交響曲第6番「炭素物語」 地球と生命の進化を導く元素』
2020年09月10日題名にちょっとクラクラ来てしまったが、サブタイトルにあるように地球と生命に関する正統の科学書である。メインテーマは宇宙に大量にある炭素原子で、我々の身体を作る大切な要素でもある。「交響曲第6番」というのは炭素が6番元素で、地球を初めとして壮大……more
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『眠りがもたらす奇怪な出来事──脳と心の深淵に迫る』 夢遊運転病、セクソムニア、非24時間睡眠覚醒症候群
著者のガイ・レシュジナーは、睡眠を専門とする高名な神経科医である。彼が勤務するロンドンの睡眠障害クリニックには、種々の問題を抱えた患者がイギリス中から集まってくる。それらの症例はじつに不可思議で、彼らの経験談はじつに衝撃的だ。その点を鮮やかな……more
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進化の実験場たる都市──『都市で進化する生物たち: ”ダーウィン”が街にやってくる』
2020年08月27日通常、都市というのは人間以外の生物にとって一般的に良い環境とは思われていないだろう。緑や自然を切り開き、種の多様性を減少させる、必要悪的な存在である。野生の生き物たちの居場所は、都市から離れた自然豊かな世界中にあるのであって、都市ではない。……more
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裸で出っ歯の珍奇なネズミが、人類を救う? 『ハダカデバネズミのひみつ』
「そんな珍奇なネズミだけで、一冊分もネタがあるの?」と、思われるだろうか。とんでもないことである。今すぐデバに伏して謝ってほしい。キョーレツな見た目にばかりに関心が向かいがちだか、じつはデバは、もしかしたら人類を救う可能性を秘めているかもしれ……more
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『南極で心臓の音は聞こえるか 生還の保証なし、南極観測隊』逃げ場なしの極寒、懐にジョークを携えて
南極大陸内陸部、人間がいなければどんな生物もいない場所で、風すら吹かない時は、あまりの静寂ゆえに、己の心臓の脈打つ音や、血管を血が流れる音が聞こえてくるという。高校時代、学校に講演に来たOBからその伝説のような話を聞いた瞬間、著者の南極に行く……more
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『ピダハン』の著者による、言語獲得&形成の進化史──『言語の起源 人類の最も偉大な発明』
2020年08月05日言語はいつ生まれたのか。 この問いに何万何千年前のある瞬間──というわかりやすい答えがあるわけではない。そのうえ、音声記録など残っているはずもないから、遺跡や痕跡からその地点を確定させることも難しい。いまだに、人類史のどのタイミングで言……more
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『「役に立たない」科学が役に立つ』
2020年08月04日この日本語版の表紙は、とても美しいです。この本を手に取ったとき、わたしはまず、この表紙の絵に引き込まれました。ノアの箱舟であることはわかります。でもなぜ、ノアの箱舟なのだろう? そこからわたしの頭の中でいろいろな想像が駆け巡りました。…more
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真打ち登場!テレビを見るならこれを読め『新型コロナウイルスを制圧する』
いわずとしれた新型コロナウイルス。さまざまなことについて百家争鳴といってもいいような状態だ。我々が知るべきなのは、なにがわかっていてなにがわかっていないのか、そして、確実なエビデンスに基づいてどう考えるべきなのか、である。文字通り日本を代表す……more
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『ノヴァセン <超知能>が地球を更新する』
2020年07月21日「人生100年時代」と言うが、本書は1世紀を超えてなお旺盛な知的活動を行う著者が、地球と生命の未来を大胆に構想した本であり、最先端の知性はどこへ進むべきかを提示する。ビジネスパーソンや学生に限らず、アフターコロナの今こそ視野を広げたい全ての読……more
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『ポスト・スポーツの時代』いま、私たちが
見ているのは、これまでとは違う「スポーツ」だプロスポーツの試合が再開され、スタジアムに観客も戻ってきた。だが野球もサッカーもすっかり様変わりしてしまった。withコロナ云々を言いたいのではない。もちろんそれもあるが、実は今回のコロナ禍以前に、野球もサッカーも大きく変質していたのだ。いま……more
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『合成テクノロジーが世界をつくり変える』生命・物質・地球の未来と人類の選択
2020年07月02日本書は、人類の及ぼす惑星規模の変化を、テクノロジーの面から探究する。今や人類は、自然の仕組みの最も奥深くまで手を延ばし、それをつくり変えようとしている。原子・遺伝子・生命・種(しゅ)や生態系・人類自身・気候に至るまで、思い通りに設計し合成(人……more
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『まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために』陰謀論や疑似科学のあやしげな論理を見抜く
彼が戦ってきたのは主に疑似科学、反科学、陰謀論だ。マドックス賞の受賞理由も、反HPVワクチン、気候変動否定論、反原子力といった運動の誤りを科学的かつ精力的に指摘したためである。本書は、著者が目撃してきた非合理的な考えにハマらないための論理的な……more
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VRの父と呼ばれるジャロン・ラニアーによる、激動の半生とVRについて──『万物創生をはじめよう──私的VR事始』
この『万物創生をはじめよう』は、最初期のVR技術の探求、起業者であり、VRの父と呼ばれる(バーチャルリアリティという言葉の発案者でもある)ジャロン・ラニアーによる自伝的な一冊である。幼少期からはじまり、VRとは何なのか、どこを目指すことが可……more
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AIなんか怖くない(ような気がする)『スマートマシンはこうして思考する』
2020年06月05日自動運転、アルファ碁、IBMのワトソンなど。魔法のように見えるスマートマシンはどのように「思考」しているのだろうか。その開発の歴史を追いながら、「思考」の方法を解説していく。なるほどすごい、けど、そうでもない、という気がしてくるはず。ちょっと……more
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『人類学とは何か』分けられない人間性に取組む学問として
「他者を真剣に受け取ること」を人類学の第一の原則にすえ、ここから人類学がどのように未来を切り拓いていけるのか、人類学はどうあるべきなのか、その論を開いていく。フィールドでの経験や思索の断片が散りばめられ、話は大きく広がっていくいっぽうである。……more