事件・事故
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『全電源喪失の記憶 証言・福島第1原発 日本の命運を賭けた5日間』あのとき何があったのか
2018年03月10日この本を読むと、当時は政府も原子力安全・保安院も、東京電力本店も、現場で何が起きているか把握できていなかったことがわかります。原子力の専門家だと思っていた原子力安全・保安院の院長が東京大学経済学部の卒業で、原子力の専門家ではなかったという描写……more
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『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』大川小学校の悲劇。あまりにも複層的な物語
リチャード・ロイド・パリーの新刊である。そう聞いただけでピンときた人はよほどのノンフィクション好きか、あるいはHONZファンであろうか。英《ザ・タイムズ》誌アジア編集長、東京支局長でもある著者は前作『黒い迷宮』で二〇〇〇年におきた英国人女性ル……more
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『青年市長は“司法の闇”と闘った』弁護士が記す最高裁までの詳細
2018年02月06日2017年12月11日、最高裁は浄水設備導入を巡る収賄などの罪に問われた岐阜県美濃加茂市長、藤井浩人被告の上告審で市長の上告を棄却する決定をした。懲役1年6月、執行猶予3年、追徴金30万円とした二審の有罪判決が確定し、公職選挙法の規定により……more
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『津波の霊たち 3・11 死と生の物語』
2018年01月28日東日本大震災についての著作はいくつもあるが、外国人記者の視点から描かれているというのが本作のもっとも大きな特徴であることは言うに及ばない。ベテラン報道記者のロイド・パリーは在日期間が22年に及ぶものの、英国人らしい客観的かつ批判的(クリティカ……more
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絶望的にヒーロー不在『八甲田山 消された真実』フィクションとノンフィクションと
本書は生存者の証言や当時の資料などを独自に調査して事故の状況やその背景に迫ったものだが、じつは著者も元自衛官で、慰霊のための八甲田演習に参加している。厳冬期の山の過酷さを実体験として知るゆえだろう、行間ににじむのは無謀な計画の実態や軍の隠蔽体……more
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『北朝鮮 核の資金源』国連制裁の最前線で、何が起きているか?
2018年01月15日『北朝鮮 核の資金源 「国連捜査」秘録』は、国連制裁の最前線で何が起きているかを当事者が初めて白日の下にさらした貴重な一冊だ。本書を読んで北朝鮮問題についていかに上っ面の知識しか持っていなかったかを痛感した。ここに書かれていることは、日本で暮……more
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『消された一家』北九州・連続監禁殺人事件の発覚から15年、やるせなさと救いが同時にやってきた
今年もたくさんの新しい本と出会い、様々な刺激をもらってきた。だが今年読んだ本の中で、最も印象に残ったものを挙げよと言われれば、それは「再会」した一冊になる。それが本書『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』だ。 事件の詳細に関する記述……more
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『レッド・プラトーン 14時間の死闘』耳をつんざく砲弾の音、着弾時の振動、立ち込める煙
2017年11月24日本書は欠陥だらけの前哨・キーティングが、2009年10月3日の早朝、タリバンの総攻撃を受けてからの14時間の出来事を、分単位、ときに秒単位で克明に記述したものだ。レッド小隊のチームリーダーの一人だった作者のクリントン・ロメシャが、退役後、生き……more
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『全員死刑』父も母も兄も弟も死刑確定
2017年11月10日2010年11月に刊行された『我が一家全員死刑』(コアマガジン、後にコア新書で再刊)は衝撃的な一冊であった。「人は見た目が9割」ならば確実にお近づきになったらヤバそうな4人の家族の顔写真が表紙にならんでおり、実際、見た目通りヤバかった北村実雄……more
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『レッド・プラトーン 14時間の死闘』ある小隊の対タリバン攻防戦 濃密な描写による記録文学
2017年11月10日読後感はひとこと「凄絶にして重厚な戦争映画を飽きることなく最後まで観てしまった」である。本書はアフガニスタンの一拠点における14時間の攻防戦を記述しているだけの、いわば記録文学だ。にもかかわらず、大切な仕事を後回しにしてまでも読みふけってしま……more
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『人を襲うクマ』すべて自己責任、なのか?
被害者の男性は「助けてー」という悲鳴を聞いて現場に駆けつけ、倒れていた女性の背中にのしかかるクマの鼻を杖で殴りつけた。女性を助けたい一心だった。次の瞬間、クマは驚くべき速さで立ち上がり、男性の頭部へ前脚をふりおろした。…more
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『組長の妻、はじめます。』犯罪社会学者による労作 そして異常な面白さ
2017年10月15日数多の犯罪に手を染めながら、ヤクザの組長の妻に納まり子供を授かることで、やっと更生した女の半生記である。父は大阪市生野区の在日韓国人二世のヤクザ社会の人である。関西のアウトローたちにとってはレジェンドであり、いまも憧れの存在だという。現役時代……more
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悪事から足を洗いました。そして『組長の妻、はじめます。』
2017年09月19日タイトルを見てどんな本だろうと思った方に、あらかじめ申し伝えておきたい。最後には「更生」するので、安心して読み進めて欲しい、と。だが本書は、更生してヤクザの世界から足を洗いましたといった類の単純な話ではない。更生して辿りついた先が、組長の妻で……more
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一級の事故事例集『大惨事と情報隠蔽』
本書は多くの歴史的大惨事の主因が情報隠蔽であったという新しい視点を提示する一冊だ。原発事故、大規模リコール問題、金融危機に至るまで情報隠蔽が問題を深刻化させたと分析しており、とても興味深い指摘である。特に金融危機の原因の一つが情報隠蔽というの……more
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『大学病院の奈落』「新聞協会賞」受賞記者がスクープの裏側を詳細に描く
2017年09月15日2015年9月、読売新聞東京本社は同年度の新聞協会賞を受賞した。受賞理由は「群馬大学病院での腹腔鏡手術をめぐる一連の特報」である。その特報取材班のリーダーだったのが本書の著者である高梨ゆき子記者だ。その特報とは、10年から14年にかけて群馬大……more