人物
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『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』
2020年01月29日米本浩二によるこの『評伝 石牟礼道子 渚に立つひと』はイギリス的な基準においてまこと正統な伝記である。 わざわざ大げさにイギリスのことを持ち出したのは、この評伝を読んだぼくが少し当惑しているからだ。米本は何百回となく本人にインタビューを……more
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医学界の「怪物」、その壮絶なドラマ『ゴッドドクター 徳田虎雄』
難病・筋萎縮性側索硬化症(ALS)に冒され動かなくなった身を、自らが策を弄して設立した湘南鎌倉病院に横たえている『ゴッドドクター 徳田虎雄』。かつて、医療革命の風雲児として喝采を浴びた男の一代記だ。その壮絶な生き様から、昭和から平成にかけての……more
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『無敗の男 中村喜四郎 全告白』竹のようなしなやかさを特徴とする組織づくり
2019年12月24日「中村喜四郎」という名を聞いて何を思い浮かべるだろうか。もはやかすかな記憶…「なにか汚職で捕まった人じゃなかったかしら」。若い人たちなら思い出す記憶もなく「だれ?」というだろう。しかし、本書で改めて、あの事件後、中村氏がどうしていたのかを辿る……more
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天才プログラマーにして闇社会の帝王、超大金持ちにしてドケチ。その男の名はル・ルー。ドラマ化決定の『魔王: 奸智と暴力のサイバー犯罪帝国を築いた男』は超弩級のノンフィクションだ!
天才プログラマーであったル・ルーが次々と犯罪に手を染める。ドラッグ、武器、殺人、なんでもありだ。巨万の富を築き上げたが、麻薬捜査官の手が迫る。かつての部下が主役を演じたおとり捜査にまんまと引っかかり逮捕される。ル・ルーは何を証言し、どのような……more
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『悩めるローマ法王 フランシスコの改革』バチカンでいま何が起きているのか
ローマ法王が38年ぶりに来日する。滞在中は広島と長崎の訪問や、東日本大震災の被災者との面会などが予定されている。前回ヨハネ・パウロ2世が来日した時は、初めてローマ法王が日本を訪れたとあって、各地で熱狂的に迎えられた。今回はどうだろうか。フラン……more
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『海峡に立つ 泥と血の我が半生』生臭い社会を駆け抜けた「フィクサー」の半生
2019年11月09日戦後最大の経済事件といわれる「イトマン事件」で逮捕された許永中が自身の半生を綴った自伝である。 許永中が語る戦後からバブル期までの日本は、現代のような漂白された潔癖な社会ではなく、政、財、官と裏社会が分かちがたく深く結びついた社会である。良……more
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『アインシュタインの旅行日記―日本・パレスチナ・スペイン』天才物理学者が見た日本人と日本文化
2019年11月02日本書は旅行中にアインシュタインが書き残した日記や手紙類をまとめたもので、科学の世界に絶大な影響を与え続けている人物が当時の日本と日本人をどのように見ていたかを記した貴重な記録である。…more
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『地図と読む 現代語訳 信長公記』さらに読みやすくなった"信長の一代記"の現代語訳
著者太田牛一は長寿の人であった。名古屋市北区に生まれ、大阪市中央区で亡くなった。享年86。死因はインフルエンザをこじらせたためだといわれる。牛一は信長の家臣であったから、褒めこそすれ、評伝作家のような批判精神は持たない。淡々と事実を書き連ねる……more
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『実像 広島の「ばっちゃん」中本忠子の真実』
”広島のマザー・テレサ”の知られざる半生2019年10月28日「ばっちゃん」をご存知だろうか。中本忠子さん。84歳。広島市の基町アパートを拠点に、40年近くにわたって非行少年たちに無償で手料理を提供してきた人物だ。この活動と並行して、76歳の定年まで30年にわたり保護司も務めた。把握されているだけでも、……more
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『黙示録 映画プロデューサー・奥山和由の天国と地獄』プロデュースのスリルと快楽
2019年10月24日毀誉褒貶の人・奥山和由さんが、映画史研究家の春日太一さんを相手に、語り尽くしたのが本書である。果たして、当時マスコミを通じて私たちが見ていたものは何だったのか。数多くのエピソードの陰に隠されていた真実、奥山さんがあえて口を閉ざし、語らずにいた……more
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『タネの未来 僕が15歳でタネの会社を起業したわけ』
著者の小林宙(そら)くんは、15歳でタネの会社を起業した。会社の名前は、「鶴頸(かくけい)種苗流通プロモーション」。会社のホームページの事業説明を読んでみると、「1つは伝統野菜を主とするタネと苗の販売、もう1つは農薬と化学肥料不使用の野菜(伝……more
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悲劇のランナーが遺したことば『円谷幸吉 命の手紙』
2019年10月10日円谷幸吉、ある年齢以上の人にとっては決して忘れることのない名前だ。東京オリンピックのマラソンで三位になり、次のメキシコオリンピックをめざすも自殺する。はたして円谷になにがあったのか。そして、謎の女性とは。彼が遺した大量の手紙を一次資料にひもと……more
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「性」を選んで生きるということ~桜木紫乃の『緋の河』、モデルは同郷のカルーセル麻紀だ
パイオニアはすべからく苦悶するのだろう、「明日にならねば、開かぬ扉がある」と。『緋の河』は、ニューハーフの新時代を切り開いたカルーセル麻紀をモデルにした、直木賞作家・桜木紫乃による小説だ。…more
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『クロード・シャノン 情報時代を発明した男 』情報時代の本質とその未来を考えるために
2019年08月28日本書は「情報理論の父」と呼ばれる天才数学者の評伝で、著者はハフィントン・ポスト元編集長などを務めた名うてのジャーナリストである。シャノン以前にも情報という概念はあったが、量的に測定が可能で、瞬時にかつ誤りなく伝達できるようにしたのは彼なのだ。……more
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老舗×伊勢×ADHD×空手×酵母 =『発酵野郎!: 世界一のビールを野生酵母でつくる』
伊勢にある老舗餅屋の21代目がクラフトビール造りを始めた。酵母を愛し、伊勢を愛する発酵野郎こと鈴木成宗社長だ。その根拠なき発想と、汗と涙の努力、そして成功。世の中にこんな男がいると知っただけで、なんだか明るい気分になってくる。みんな、読んで飲……more