人物
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『硯の中の地球を歩く』1億年前の原石に命を吹き込む無名の名工の誇りと決意
端正な本だ。カバーと帯を取りはずすと、表紙には原寸大に近い一面の硯が刷られている。装丁だけでなく、紙質や印刷も素晴らしい。ゆっくりと味わうように読んだ。著者は書道道具店の四代目。浅草の店では定番の筆や墨なども取り扱っているが、高級な硯は代々の……more
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『ああ栄冠は君に輝く~加賀大介物語~』
2018年08月21日甲子園の定番メロディー「栄冠は君に輝く」だ。「雲は湧き、光あふれて…」ではじまる詩は、高校球児や高校野球ファンには定着した、つい口ずさんでしまう歌詞である。しかし、その作詞を担当した加賀大介は一度も甲子園を訪れていない。…more
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『ゲンバクと呼ばれた少年』いつだって星を見上げて
2018年08月11日この『ゲンバクと呼ばれた少年』は、さながらギリシャ神話の最高神ゼウスが人類最初の女性パンドラに与えた箱の中からあふれ出た、戦争、貧困、疫病、憎悪といった人類を取り巻くあらゆる災禍と、それでも箱の底に最後に残されたかすかな希望の物語のようである……more
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『自衛隊失格 私が「特殊部隊」を去った理由』完全燃焼を目指した男がぶつかった官僚組織という壁
著者、伊藤祐靖は自衛隊初の特殊部隊である海上自衛隊の「特別警備隊」の創設に携わり、部隊創設後は先任小隊長として技術の向上に努めた人物である。本書は日本初の特殊部隊を創設した男の半生を綴った自伝であり、自衛隊という国防の最前線のリアルを描いたノ……more
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『トレバー・ノア 生まれたことが犯罪! ?』世界は好きなように生きられるところだということ
2018年07月28日本書は、トレバー・ノアというコメディアンのエッセイ集です。2018年にはグラミー賞のプレゼンターをつとめ、アメリカでは知らない人はいないくらい大人気の彼ですが、本のなかで描かれるのは、コメディアンとしての躍進ではなく、彼が生まれ育った南アフリ……more
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『革命 仏大統領マクロンの思想と政策』
フランスでは、グローバリゼーションを真正面から受け止めEUの強化を愚直なまでに訴えたマクロン大統領が誕生した。「革命」はマクロンが書き下した本である。大統領選に出馬するために書いた本と聞けば、誰しも構えて読むのが普通だろう。それにも関らず、本……more
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『一発屋芸人列伝』大きく勝って、大きく負けた山田ルイ53世が、負けの中に見出した勝機
2018年06月11日ちょっと肩に力が入った状態で現場に向かったのだが、案に相違して、百貨店のバックヤードにある小部屋で待っていた山田ルイ53世は、あの良く響く美声と満面の笑みで迎えてくれた。もちろん怒ってなどいない。いや、言いたいことはあるかもしれないが、それを……more
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『料理人という生き方』破天荒金髪シェフの浪花節人生 ーこの本が、あなたの勇気になりますようにー
2018年05月27日けったいなおっさんである。大阪駅から環状線で一駅目の福島駅近くにある、知る人ぞ知るフレンチレストラン『ミチノ・ル・トゥールビヨン』のオーナーシェフだ。つむじ風を意味する店名トゥールビヨンに込められているように、旋風をおこしたいと常にたくらんで……more
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九歳でロケット、十四歳で核融合炉を作った「天才」──『太陽を創った少年』
彼は核融合炉を作り上げるだけで止まらずに、そこで得た知見と技術を元に兵器を探知するための中性子を利用した(兵器用核分裂物資がコンテナなどの中に入っていると、中性子がその物質の核分裂反応を誘発しガンマ線が出るので、検出できる)、兵器探知装置をつ……more
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『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』不完全だからこそやってみる
2018年05月21日「大谷翔平」はどのようにして生まれたか。その秘密の一端を解き明かしてくれるのが、『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』だ。著者は大谷が15歳の時からコツコツと取材を続けてきたジャーナリスト。家族にも信頼されているようで、大谷家のリビングに招き……more
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『ニュルンベルク合流「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源』にはノンフィクションを読む喜びの全てが詰め込まれている
本書は、フランク、ラウターパクト、レムキン、さらには著者の祖父であるレオン・ブフホルツの人生を軸としている。ナチ指導者、2人の著名なユダヤ人法律家、そして世間的には無名なユダヤ人の4つの人生は、その序盤ではそれぞれ別のものとして展開していく。……more
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話下手でもあきらめるな。We Shall Never Surrender『リンカーンのように立ち、チャーチルのように語れ』
「礼儀正しい始まりは、愚かしい始まりである」これはチャ-チルの言葉だ。スピーチやプレゼンにおいて、一番大事なのは第一声である。それなのに「みなさまの前でお話しできることを嬉しく思います。」というような、ありきたりで退屈な言葉で話しだす人がいか……more
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このカップルが大好き…『されど愛しきお妻様 「大人の発達障害」の妻と「脳が壊れた」僕の18年間』
著者は『最貧困女子』や『老人喰い』などのルポ作品で、犯罪現場の貧困問題をえぐり出してきた気鋭のノンフィクション作家だ。働き盛りの44歳。作家稼業だけでは食えなくなってきた出版界にあって、社会派マンガの原作もこなしながら、いささか問題のある奥さ……more
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『隠れナチを探し出せ 忘却に抗ったナチ・ハンターたちの戦い』悪の凡庸と時間に挑み続ける者たち。
1945年5月5日、アメリカ軍がオーストリアのマウトハウゼン強制収容所を解放したとき一人のユダヤ人男性の命が救われた。男の名はジーモン・ヴィーゼンタール。自信家で野心家。この男は、後に最も有名なナチ・ハンターとして頭角を現す。そして、最も、問……more