『クリーニング革命』プロフェッショナル 仕事の流儀好きにオススメ

久保 洋介2012年04月05日 印刷向け表示
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クリーニング革命―すべては喜ばれるために
作者:古田 武
出版社:アスペクト
発売日:2012-01
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「遅い、高い、でも上手い」と言われるクリーニング屋が東京・麻布十番の二の橋付近にある。入り口はホテルのようであり、普通のクリーニング屋らしからぬ店構えだ。お店の名前は『レジュイール』、本書の著者である古田武 氏が創業したお店であり、別名「服のお医者さん」である。

『レジュイール』でのクリーニングの手の凝り様は半端ない。まずこのお店で預かった服は、点数・素材・ブランド名・シミの有無等がチェックされ(しかも間違いがないよう3重チェック!)、ドライクリーニングか水洗いかに分類され洗い場に移される。ドライクリーニングの場合はもちろん臭いのないフッ素系溶剤を使用する。水洗いの場合はすべて手で押し洗いだ。すすぎは、洗う温度で5分、その後水で30分かけて行う。ここまで手間ひまかけないと白いものを白く仕上げることはできないそうだ。「洗濯機でガラガラ回すだけでは汚れをしっかり落とすことはできない」と言い切っている。もちろん、シミ抜きにも手間ひまを惜しまない。ネクタイなど、糸を全部ほどいてシミを抜き、また縫い直すこともあるほどである。

アイロンにもこだわりがある。何でもビタッと押さえつけるのではなく、元のデザイン・風合いに復元させるよう様々なテクニックが駆使される。例えば、ベルベット素材であれば、留め針を並べたピンボードに乗せ、裏から毛を興すようにかけていく。生地の特徴やデザインのポイントを理解していないと、出来ないテクニックだ。エルメスのプリーツスカーフは幅5mmのブリーツを扇子を作るように、少しずつ生地を山型につまんで、アイロンの先端を徐々にあてていく。一瞬たりとも気の抜けないアイロン技である。

その後、最終チェックが入る。チェックの基準は、洋服屋に置いておいたら売れてしまうくらいの仕上がりかどうか。使い古された服もこの段階には新品同様になっている。そして最後に特注のカバーで包装して、お客に返す。これだけ手間ひまをかければ「遅い」と言われるのもうなずける。全行程を終えるのに、短くても1週間はかかるそうだ。値段はもちろん普通のクリーニング屋の数倍する。「高い」と言われる所以である。数十万円する服が毎月何十点もお店に届くそうで、それだけ信用があるということはきっと「上手い」に違いない。

しかも、『レジュイール』に服を持って行くと必ず「クリーニング契約書」にサインを求められる。クリーニング屋で契約書なんて前代未聞である。まるで手術を施す前の誓約書のようだ。ここまでくれば、ただのクリーニング屋ではなく、「服のお医者さん」と言われる所以も分かるし、クリーニング業界に革命をもたらしていると言われるのも理解できる。

『レジュイール』が他の一般的なクリーニング屋と違うことが分かってくると、今度はこの会社の創業者である古田武 氏がどういう人間か興味がわいてくる。本書を読み進めるとすぐに分かることだが、古田武 氏はクリーニングオタクである。シミを抜くことやアイロンがけに夢中なのだ。一般人からしてみれば、「何で?」であるが、そこが古田武 氏の強みである。「人とは違うことをする」「何かに夢中になる」この二つを兼ね備えた人ほど強い人はいない。(その他、彼の「飽きっぽい性格」や「負けず嫌い」であることが分かってくると、なんか成毛眞に似てる気がしてくる。)

貧しい新人時代は睡眠数時間が続く下働き、若手時代はアイロンがけの専門家、9年目くらいから営業を任され、朝から昼は外回り、夜はアイロンがけと四六時中働き続け、結果数年後には年商3,000万円を稼ぎだすトップセールスマン。35歳で独立。もともと赤字であった会社を35年かけて成長させていく彼の人生は、まさに波乱万丈である。テレビ番組、「プロフェッショナル 仕事の流儀」「情熱大陸」好きにはたまらない内容だ。

巻末には、自宅でも手軽にできる衣類のお手入れ法を紹介する。私のように近くに満足のいくクリーニング店がない人にはもってこいだ。さ、そろそろ衣替えの季節、その前にぜひ本書をご一読たまわれ。

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