HONZ活動記 -ビジネスとプライベートの狭間で-

内藤 順2012年11月04日 印刷向け表示
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新しくなったHONZのサイト。8月くらいから少しづつ作業を進め、ついに完成しました。これまでにサイト制作は何度も経験してきているのだが、今回の作業は感慨もひとしお。感極まって、HONZ活動記にまとめてみました。サイト制作を担当するようになるまでのこと、そして作業をしながら感じたこと。

プロ、アマ混成集団の中に身を置くと何が起こるのか?

HONZのメンバー構成は、アマチュアのメンバーが大半で、それを2名のプロが支えている。これは一見、プロとアマの境界線がなくなっていく「アマチュアの時代」を象徴する在り方のように思えるかもしれないが、中にいて感じるのはプロの凄味でしかない。

だがやがて、メンバーは誰しも思うようになる。自分だって何かのプロだ。メーカーに勤務する「ものづくり」のプロ、新聞報道のプロ、研究のプロ、学生のプロ、かくいう僕だって広告業界に属する以上、広く告げるということに関して負けるわけにはいかないのである。

こうしてレビューは、異種格闘技の様相を呈していく。つまり大きな流れとしての垂直統合から水平分散へ、これによく似た構造変化を、書評を舞台にして繰り広げられているのがHONZというサイトの一面だと思う。

しかし時間を追うごとに、さらなる欲望がむくむくっと沸き上がってきた。有り体に言えば、評価経済の貨幣たる「いいね!」の一言が、もう少し欲しくなったのだ。そのためには、自分の中の何かプロフェッショナルな部分を提供しなければならない。

そんな中で降って湧いてきたのが、今回のサイト・リニューアルの話であった。

手慣れた業務の慣れない一面

今回のリニューアルの大きな目的は、増えすぎたエントリーをどのように整理するかということと、新しく新設した「ビジネスHONZ」というページの顔を作るということにあった。

そんなに難しい作業でもないかなと思いながら、意気揚々とサイト制作に取り掛かったのだが、フタを開けてみると色々な意味で勝手が違うことに気がついた。なにしろ頼れるいつもの部下がいない、ツーカーで話せる馴染みのスタッフがいない、判断を仰ぐ得意先は自分たち自身。

さらにそこへ、本の発売に伴うPOP制作、メルマガ開設の準備など、様々な出来事も一気に降り掛かってきた。普段はお茶の子さいさいで出来ることなのだが、一つ一つに手間がかかる。システマチックに業務を推進できる会社組織というもののありがたみを、嫌というほど痛感することになった。

会社と社会で、個人のエッジは違う

一方で、新たな発見もあった。サイトの完成までに、メンバー全員で打ち合わせしたのは一度のみ。またデザイナーの東海 吉輝さんは大阪在住のため、実はまだお会いしたこともない。これは会議やネゴシエーションを主体に進めていく広告会社の仕事の進め方とは大きく異なるものであった。

思えば、これまで本当に口八丁手八丁だけで生きてきた。だからメールやFacebookなどだけで仕事を推進していくのは、妙な緊張感がある。この環境下では、伝家の宝刀「それ、前言いましたよね」で話をすり替えることも、芸術的とすら言われた奥義「あとよろしく」を繰り広げることもできないのだ。

テキストベースのみでログを共有し、予算も人員もミニマムに仕事をやり抜く。様々な環境の変化に対応しながら、作業を推し進める。そんなサバイバル能力のようなものが自分に培われているとは知らなかった。これは自分の職業を外側から見つめ直すという意味においても、良いきっかけになったと思う。

失われていたDIY精神

会社組織において、人に任せるということは美徳である。それでなくても僕の仕事は代理業の営業職なのだ。今回の作業と同じようなことを会社でもやっていたら、僕の年次なら要領の悪いヤツだと思われるだけだろう。大切なのは関係各所とネットワークを築くことによってカバー領域を広げ、仕切りに専念するということにあるのだ。

この何でも取り扱えるというところが、まさにクセモノだ。これは、常日頃から痛感していることでもある。レビューを書く立場でありながら言うのもナニなのだが、僕のプロフェッショナリズムは、自分で文章を書くことではなく、人にキャッチコピーなどを書いてもらうというところにあるのだ。ちなみに良いコピーを書いてもらうための「くすぐり方 四十八手」というのも持っているのだが、詳細は秘密である。

そんな僕が文章を書くわけだから、当然のように毎回フラストレーションを感じる。自分のオーダーのイメージに到達することなど、ほとんど出来ないのだ。今回の作業においても、これに近い状況が発生していた。何でも出来るということと、何も出来ないということは、まさに表裏一体なのである。

それでも自分にとって、非常に得難い経験であった。振り返ると自分でも、なぜここまでやったのだろうかと思う。それは本の世界において、自分が新参者であることを自覚していたということに尽きる。同じウェブサイト制作ではあるのだが、周縁からものを見るという客観性、この世界で失うものなど何もないというチャレンジャーとしての姿勢を忘れることはなかった。僕はきっと広告の仕事でも、こういう気持ちを取り戻さなければならないのだ。

働き方にもBYODを

最近注目を集めている動きに、BYOD(Bring Your Own Device)というものがある。私物のスマホやタブレット、クラウドサービスを業務で利用することを意味する言葉だ。僕はデバイスやサービスだけでなく、そこに紐付くソーシャルグラフなどの一切合切も持ち込み、良い意味での公私混同が進んでいけば、もっと面白いことになるんじゃないかと考えている。

もちろん、気をつけなければならないことは多々あるのだが、それ以上に効能も考えられるだろう。それぞれの領域におけるシナジーを狙えるということや、一つの仕事を長く続けることで生まれる「視野の狭さ」を防ぐということもある。今回の作業は、まさに自分自身のプロとアマが入り混じった、ハイブリッドな状況下におけるものであった。このような環境こそが、自分にとっての成長空間なのである。ビジネスマンとして老け込む前に、こういう体験が出来たのは本当に良かったと思う。

フラットな組織の罠

HONZのようなフラットな組織で仕事をするうえで、特有の難しさがあることを発見できたのも収穫であった。具体的に言うと、たとえば強制力の行使が憚られるということがある。これをやってしまうと、築いてきたカルチャーなど簡単に壊れてしまう。だからといって放っておくと、狭間に陥ってしまうような領域が出来てしまうのだ。

会社組織じゃないから、甘いアウトプットになってしまった ー そんな言い訳が通用する訳もない。変な実績だけは、どうしても作りたくなかったのだ。このようなことに対処するためには、言い出しっぺが最後まで責任を持ち、周囲はそれを支えるという、至極単純なことが必要になってくると思う。

みんなの「家」のようなサイトに

最近富に思うのは、HONZという組織がメンバーにとって、セーフティネット的な役割も果たしつつあるのではないかということだ。メンバーの職種は、いわゆる大手企業勤務、フリーランス、ベンチャー企業勤務と大きく3つのタイプに分類されるのだが、どちらを向いても先行きは不安定。そんな状況下だからこそ、個人では解決できないことを、つながりでカバーする。月2回しか会わない間柄にもかかわらず、そんな光景をよく目にする。

これは、かつての地縁・血縁のようなものにも非常によく似たつながりだと思う。もはやネットがあれば、住んでいる場所など関係ない。だから僕は、このサイトがみんなの「家」のような存在になれればいいなと思い、作業をしていた。きっかけは共通の趣味でつながったメンバーなのだが、各々がバックエンドで保持する多様性が実に不思議な空間を生み出している。

単に面白い書評を書いてアクセス数を稼ぐということだけではなく、人も羨むようなチームでありたいと思う。そんな僕たちのサイトを、どうぞ隈なくご覧になっていってください。

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