『言葉はなぜ生まれたのか』 産経新聞 8月7日号 書評欄掲載

成毛 眞2010年08月09日 印刷向け表示
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言葉はなぜ生まれたのか
作者:岡ノ谷 一夫
出版社:文藝春秋
発売日:2010-07-13
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岩波書店から2008年に出版された前作『ハダカデバネズミ』も、めっぽう面白かった。全身無毛で出っ歯なネズミの生態と、その研究者を描いた本だった。なんと、ハダカデバネズミには女王様と兵隊とふとん係がいるのだ。そして鳴き声で自分の階級を伝えているのだという。

もちろん著者はハダカデバネズミを愛玩用に飼っているわけではない。理化学研究所で言語の起源を探るために飼育しているのである。ハダカデバネズミ以外に飼育しているのはジュウシマツ、ネズミの一種であるデグー、テナガザルなどだ。

ヒトはある日突然「言葉」を話せるようになったわけではない。いくつもの条件が揃ってはじめて、ヒトの最大の特徴である会話ができるようになった。

岡ノ谷は4つの条件をあげる。その4つとは、クジラのように息を止めることができる。デグーのように単語を使うことができる。ジュウシマツのように文法を持つ。そして、ハダカデバネズミのように挨拶をする、である。

 

これは相互分節化仮説という理論であり、文章だけで表現すると理解しにくいようにみえる。しかし、本書は文章よりも多い、最良質のイラストを使い、小中学生でも理解できるような構成でこの理論を説明するのだ。

そのおかげで本書は、小中学生にとっては魅力的な生物学と科学への導入本であり、大人にとっては言語の発生にかんする最新理論の入門書に仕上がっている。

小中学生の親であれば、この夏休みに、子供の前でこれ見よがしに読むことをお勧めしたい。もし子供が本書の明るく楽しげなイラストに興味をもったらしめたものだ。あとは本を渡すだけである。この夏最高の科学教育になるであろう。

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