『日本復興計画』

成毛 眞2011年04月28日 印刷向け表示
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日本復興計画 Japan;The Road to Recovery
作者:大前 研一
出版社:文藝春秋
発売日:2011-04-28
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編集部からの緊急献本である。著者とも古くからの知り合いだ。著者が代表をしている株式会社ビジネス・ブレークスルーの設立当初からの株主の1人でもある。ちなみにまだ1株も売却していない。若干の損失が出ていることになる。

本書は著者が「ビジネス・ブレークスルー 大前研一ライブ」で3月13日と3月19日に語った福島原発を中心とした現状分析と予測、および5年から10年先の日本の将来について書き下ろした本だ。

前半の現状分析と予測は、巻末に記載されている無料のYouTube映像の文章化なのだが、文そのもののリズムが非常に良く、思わぬことに本を置くことができない。一気に読んでしまった。大前節の科学技術講談である。

もちろん、著者らしくけっして批判だけに終わることなく、原発問題については建設的な提案をしているし、原子力産業のゆくえや計画停電などに対しても納得できる実現可能なアイディアを提供しているから、面白おかしい講談で終わってはいない。

復興国債発行にともなう消費税アップや、東電の配電会社化と原発の国有事業化、などは本ブログにもまとめたがまったく同意見である。ただし、日本の家計所得がマイナス成長であるという点については、名目値であることを著者こそが本当は良く理解しているはずなので、恣意的引用だとしてつっこみが入りそうである。

ルール違反かもしれないが本書の最後の言葉の一部を引用してみよう。

「政治家に頼ってはいけない。政府に頼ってもいけない。国がなんにもしてくれないことは、すでに明らかだ。自分自身が頼みの綱と覚悟を決める。」

まったく、そのとおりだと思う。

著者は根本的な解決法として道州制を提案し、建築基準法などを自治体に任せることなどを提案しているのだが、このような大胆な改革が実行されることはないだろう。もはや平均年齢が50歳を超えた国民には大胆な変革を求めるだけの気力はない。それゆえの政府に対しての決別と、自分自身の覚悟が必要だということだ。

著者は下手をするとスペインやポルトガルみたいに400年は停滞したままで行ってしまう可能性があるという。そのうえで「唯一のグッドニュースは、日本の400年の長い衰退のうち、もう早くも20年が過ぎたのだから―」と自嘲してみせる。これにも完全に同意する。

国民も政治家も官僚も司法も結果平等をもとめてきた。その結果としての全体としての衰退である。これからはお上頼りの大多数の人々と、覚悟を決めた少数の人々の間に決定的な格差がつくことになるであろう。しかも、その少数の人々は海外に身を隠すことも覚え始めるはずだ。テレビにも登場しないであろうし、発言も少なくなるであろう。嫉妬が社会的制裁で終わることなく、法的制裁にまでいたる国になった結果である。

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