『太陽に何が起きているか』 新刊超速レビュー

成毛 眞2013年02月19日 印刷向け表示
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太陽に何が起きているか (文春新書)
作者:常田 佐久
出版社:文藝春秋
発売日:2013-01-20
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著者常田佐久氏の経歴は東大天文学科卒、東大天文学専門過程博士課程修了、東大東京天文台助手、東大天文学教育研究センター助手、東大天文学科助教授を経て、国立天文台教授だ。まさに天文学一筋の人だ。毎日天空を見て暮らしている人なのだ。しかし、のんきに望遠鏡を覗いているだけだと思ったら大間違いである。

望遠鏡は「大坂夏の陣」の7年前にあたる1608年にオランダの眼鏡師によって発明された、それを知ったガリレオ・ガリレイは即座に改良にとりかかり、なんと3ヶ月間で100台の望遠鏡を作ったといわれる。もちろんレンズはすべて手研摩である。そして、はやくも1613年には本書のテーマである『太陽黒点論』を刊行しているのだ。古来から天文学者は自身で観測装置を作り、天体を観測する人なのである。

著書にとってガリレオの望遠鏡にあたるものは太陽観測衛星である。1991年に打ち上げられたSO「ようこう」、2006年に打ち上げられた「ひので」がそれだ。本書はその太陽観測衛星が発見した太陽のいまの姿について判りやすく、詳細に解説した絶好の読み物である。太陽には魅力的な秘密がいっぱい詰まっていることがよく判る。

じつはいま太陽で異変が進行中だ。100数十年ぶりに黒点数が少なく、11年周期だった太陽活動が長くなりはじめている。それだけではない。過去45年の観測史上、地球へ到来する宇宙線の量が最大になりつつあるのだ。観測の結果、これまで地球と同じように南極と北極にS-Nという2つの磁極があったのだが、これがS-Nそれぞれ2つづつという4極構造になり始めている。

太陽活動が低下する期間を極小期と呼ぶ。1700年前後のマウンダー極小期や1800年前後のダルトン極小期が有名だ。この時期に地球は寒冷化するといわれている。しかし、いまだにそのメカニズムが解明されていないし、地球温暖化ガスによる気候変化などを考慮すると予測は不能だ。多数の非線形現象の相互作用を予測することは不可能といっても良いだろう。想像を絶する変化がある日突然やってくるかもしれないのだ。

ともあれ、本書は警告の書などではない。しっかりと人類が理解している太陽のメカニズムや姿を説明してくれる。太陽の構造とメカニズム、観測衛星に搭載された特殊な望遠鏡群とその観測対象となる現象、国際研究協力体制や衛星開発現場の面白さ。サイエンスマニアにとってはコロナ加熱の謎、磁気リコネクション、アルベーン波などの専門用語も満載で楽しめる。もちろん、そのあたりを端折って読んでも充分にモトを取るであろう。

ところで、地動説を唱えたガリレオは1633年に宗教裁判で有罪となり、1642年に亡くなるまで幽閉された。ローマ教皇庁が正式にガリレオ裁判が不当だったと認めたのは350年後の1992年のこと。認めたのはヨハネ・パウロ2世だった。後任者のベネディクト16世は先日、600年ぶり歴代2人目となる生前退位を決めた希なる教皇になった。このベネディクト16世は2008年にヨハネ・パウロ2世の決定を覆し、ガリレオ裁判は正当だったと講演する予定だったという。さもありなん。

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