『IDOL DANCE!!! 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい』

新井 文月2013年02月07日 印刷向け表示
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IDOL DANCE!!!: 歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい
作者:竹中 夏海
出版社:ポット出版
発売日:2012-12-07
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AKB48、ももいろクローバー、KARA、少女時代…2013年現時点でのエンタテイメント業界はその役者の揃いぶりからアイドル戦国時代とも呼ばれる。確かにPerfumeのライブは完成度も高く「アイドル=見習い」というイメージから逸脱している。単純に可愛く歌って踊るだけのプロトタイプのユニットは終焉し、これからは視覚的パフォーマンス、とりわけダンス部分がもっと重要視されていくだろう。

本書は表紙がとても可愛らしいが、中身はアイドルのダンスについて真正面から取り組んでいる。振付師である著者の竹中夏海はアイドルダンスというジャンルはそもそも存在するのか?と問い続けた結果、その特徴は振りコピの文化ではないか、と定義している。一般の人でも、映画を観るように会場に足を運び、振り付けを真似できる一体感にアイドルダンスの可能性を見出した。

そもそも著者は日本女子体育大学舞踊科の出身だ。ダンス界において信頼できるこの科の特徴は、入学すると1、2年生の間はそれまでどんなジャンルを踊ってきたか関係なくオールジャンルのダンスを学ぶことになる。モダンダンス、クラシックバレエ、ジャズダンスの必須科目に加え、さらに選択科目でタップダンス、フラメンコ、日本舞踊などあらゆる舞踊を学べる。大学側は全国の身体のきく女子に対して、構成や振付、舞踊批評、マネジメント、台本にまで興味ある人材を育てていく。踊りが好きな人にとってはなんて楽しそうなカリキュラムだろう。

ダンスの種類といえば、クラシックバレエ、HIPHOP、コンテンポラリーダンスにいたるまで多種多用なジャンルがあるが、最近はそれらのダンス公演もよく見られるようになった。しかし、それ自体の公演は客席もダンス関係者が多いのが現状だ。毎回新作なので、観客としては新しいショウを見られる楽しみがある一方、ハイここで観客と一緒にダンスタイム!という時間はまずもって無い。ディズニーランドでは、覚えていなくても簡単な振付があり、キャストがサポートに入るなり、その場で一緒に踊れて空間を楽しめるシステムになっているが、ダンスの公演に対して、参加面に疑問を持っていた著者は一体感を味わえるアイドルのステージに活路を見出した。

本書の見所は、観客と一体になろうとするアイドルダンスの創意工夫を、魅せる側からの立場から解説している点にある。例えば、ダンスは歌詞とリンクする。Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」では、歌うときに「計算する女の子」で自分を指し、「期待している男の子」の部分では前方、すなわちステージ前にいる観客を指す。このような曲の歌詞と振付が連動している瞬間はアイドルでは度々あり、世界感を表現する上での常套手段だ。

衣装も重要な要素だ。KARAのヒップダンスは、腰の動きを強調するためにサスペンダーを垂らし、揺らすことで観客の目を奪う。ユニゾンで統一感を出しながらも、それぞれのキャラが立つ絶妙のチョイス。ライブ会場で衣装を真似てくる同性ファンが多いことから、衣装はファン層に同性を取り込むきっかけにもなっている。

動画はこちら

KARA / ミスター (Short ver.)

筆者がなぜ振付師なったかの理由は、自分の作品が見れないからだという。本人は「私がフロントに立つよりも、人が自分の振りを踊っている方が楽しい」そうなのだ。また自分がダンサーとして踊る時は、踊り手としての自分を客観視出来ないので、どういう振付がいいのかは全然想像つかないらしい。

そしてKARAとくれば少女時代だろう。PVやライブで観られる完璧なフォーメーションに注目。仮にダンスが初心者でも、フォーメーションさえ揃えばステージは美しく見えるものだ。本書では同期のコンテンポラリーダンサー梶原未由(珍しいキノコ舞踊団)とも対談しているが、「少女時代を見なさい、あんなに足が揃っている」と、ダンス界の人間からみてもアイドルのダンスレベル向上には一目置いている。

表の華やかさとは裏腹に、アイドル達の「表は笑顔」「裏は苦労」話が面白い。ライブの回数を重ねる関係上、AKB研究生は一人で何人分ものポジションを覚えていたりする。アイドルもファンとの付き合い方は変化しているようで「今日もきてくれてありがとー!」と言うよりも「あんた何しに来たの?」と言うと喜んでくれるパターンもあり、どれが正解か答えはない。彼女達は、ステージを生活の一部として常に鍛錬を積み価値を高めようとしている。ファンからの視界を確保し、2階席など目線の空間に気をつかい、フォーメーションを崩さず踊りながら表情をつくる。これらを全部歌いながらこなすわけで、改めて驚く。

そして著者本人による振付ぱすぽ☆。「WING」の衣装はターンした際に360度ふわりと回転するようにつくられている。本書のタイトルにぴったりだ。

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