『死と神秘と夢のボーダーランド』 新刊超速レビュー

村上 浩2013年02月25日 印刷向け表示
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死と神秘と夢のボーダーランド: 死ぬとき、脳はなにを感じるか
作者:ケヴィン ネルソン
出版社:インターシフト
発売日:2013-02-05
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幽体離脱、金縛り、死者との遭遇。本書には、テレビや雑誌で「奇跡の瞬間」として紹介されるようなスピリチュアル体験が数多く紹介されている。しかし、本書はいわゆるオカルト本の類ではない。本書は、ケンタッキー大学・神経学教授の著者が、これらのスピリチュアル体験を最新の脳科学で解き明かしていくサイエンス本だ。

スピリチュアル体験者はどのような環境で、どのような体験をしているのか、そして、スピリチュアル体験者の脳はどうなっているのか。スピリチュアル体験という特異な領域に光をあてることで、ヒトの意識に関する新たな知見が明らかにされていく。

スピリチュアル体験には、ボーダーランドが深く関わっているという。ボーダーランドとは、神経科学で認められる3つの意識の状態(覚醒、レム睡眠、ノン・レム睡眠)の狭間のことを指す。意識の状態がどのように切り替えられているか、切り替えの瞬間に何が起こっているかを掘り下げていくことで、神秘のベールは一枚ずつ着実にはがされていく。ちなみに、このボーダーランドという概念は、『妻を帽子とまちがえた男』等で知られるオリヴァー・サックスが生み出した概念だという。

本書では、スピリチュアル体験にまつわる過去の学術研究も多数紹介されており、その内容が科学的に検証されている。例えば、2001年に『ランセット』という有名医学誌に載った、多くの臨死体験者についてまとめた論文がある。この論文では、「臨床死の状態にあった患者が何らかの知覚を経験した」と報告されており、肉体が死んでも魂は生きていると信じる人たちの拠り所となっている。著者のこの論文への評価は以下の通り。

唖然として言葉も出ない。(略)血流が停止しても、脳は10秒やそこらはしっかりと機能し続ける。死んではいない。(略)臨死体験中の脳に、肉体的な死に近い要素などひとつもない。脳は生きていて、意識もあるのだ。

本書の範囲は、脳幹や大脳皮質、辺縁系などの脳の各部がどのように働いてスピリチュアル体験を引き起こしているかを解説するだけにとどまらない。なぜ、ヒトにはスピリチュアル体験を促す仕組みが備わっているのか、ヒト以外の動物でもスピリチュアル体験は起こりうるのかが進化論的側面から考察されている。現実と非現実のボーダーランドから、新たな発見がもたらされる一冊。

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