『古代道路の謎』新刊超速レビュー

久保 洋介2013年04月08日 印刷向け表示
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古代道路の謎―-奈良時代の巨大国家プロジェクト(祥伝社新書316)
作者:近江 俊秀
出版社:祥伝社
発売日:2013-04-01
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1995年、東京都国分寺市で長さ340mの幅12mの道路が発掘された。造られた時代は約1300年前の飛鳥時代。そして驚くべきことに、この巨大道路は寸分の狂いもなく一直線に造られていたのである。

その後の調査の結果、現在では、7世紀ごろには日本中を張り巡らす巨大道路網が建設されていたことが判明している。東北から九州までの長さ約6300kmもの距離を、最大幅30mで敷設するというまさに巨大道路だ。田中角栄議員立法により実行された1966年の高速道路計画は6500kmであるから、それと同じ規模の距離をより幅広で建設していたことになる。

いったい誰がいつ何のためにそんな巨大プロジェクトを遂行したのか。驚くべきことに、これほど巨大プロジェクトにも関わらず、実はこの国家的規模の大規模事業がなされた理由はまだ正確に分かっていない。文献史料には何も記されていないのである。本書はそんな「謎の巨大国家プロジェクト」に、文化庁文化財調査官が迫る一冊だ。

著者は「この古代道路建設は天武天皇による列島改造であった」と表現する。律令国家という新しい国づくりのための象徴的なインフラ事業であったと考えているのである。天皇を中心とした中央集権的な律令国家建設を目指した天武天皇が、国家の巨大さを感じさせるために、どこまでも続くまっすぐで幅広の道路を建設したと考えられている。

幅30mの道がまっすぐに数十km伸びている、、巨大プロジェクトに思いを馳せながら本書を読んでいると何だかタイムスリップした気分になれる。第六章ではまさしく想像を交えながら備中国(現在の岡山県)からの景観を再現させる。まっすぐに走る古道、それを基準に広がる街や条理地割り。古代の人々が新国家の力によって創出された新たな光景に圧倒されている様子が目に浮かぶ。

そんな立派な道路であったが、悲しいかな結局は廃絶してしまった。筆者によると、国家が道路の維持管理の責任を地方に押し付けたことが主な原因だったようである。例え立派な道路であっても、日々の業務では使わない道路を維持管理するのは地方官にとっては苦痛だったのだろう。地方分権が進む11世紀頃にはこの巨大道路は姿を消したようである。公共事業に関する国と地方の関係は現在特有の問題ではなく、1300年前にもあったことがよく分かる。同じ過ちを繰り返さないためにも本書を読んで過去を知ることは大切である。

本書は紹介していないが、古代道路は世界中で発掘されている。古代ローマ、秦の始皇帝、インカ帝国などが典型例である。総距離290,000kmに及ぶローマ街道や、幅広140mの御道、標高5000メートルのアンデス山脈に沿って整備されたインカ道などと比較しながら本書を読むと、古代日本の政治が何を目指していたのか、なぜローマ街道は現代まで残り日本の古代道路は廃絶してしまったのかがより良く分かるだろう。

本書は最後に古代道路の見つけ方を解説する。史料と地図と航空写真を使えば、誰でも古代道路を見つけることが出来るそうだ。本書読了後は誰でも「謎の巨大国家プロジェクト」の研究者になれるのだ。さー、暖かくなってきたし、週末は地図を持って探検に行こう!

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