『気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年』 by 出口 治明

出口 治明2013年09月30日 印刷向け表示
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気候で読み解く日本の歴史―異常気象との攻防1400年
作者:田家 康
出版社:日本経済新聞出版社
発売日:2013-07-23
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歴史は文系の学問ではない(そもそも、大学が文系・理系と分かれているのは、先進国ではわが国ぐらいのものではないか)。グローバルには、自然科学の知見を存分に活用し、例えばBC1200年のカタストロフィや、モンゴル・ウルス崩壊など、歴史的な超大イベントの原因を気候変動に求める見解が有力であるが、日本史においては、著者の作品以外にそういった書物にはこれまであまり出会わなかった(私が知らないだけかも知らないが)。本書は、太陽活動と火山噴火を車の両輪にして(それに、エルニーニョも加味して)、わが国の歴史上の気候変動を詳述し、それをベースにして日本史を、いわば再構成したものである。

人間の歴史を大雑把に振り返ると、産業革命以前の主要産業は、農業や牧畜であった。そうであれば、自然破壊や気候変動の影響をモロに受けることは、当然である。わが国では、平城京では、遷都が繰り返された(推古天皇から桓武天皇まで、200年間に21回)。ところが、平安京以降は遷都がほぼなくなる。何故か。著者の答は、明解である。畿内での森林資源が払底したからだ、と。檜皮葺、漆喰、畳というトリオや松茸(アカマツ林)も、森林資源枯渇の産物なのだ。

何故、源平合戦で源氏が勝ったのか。それは西日本の凶作が主因ではないか。新田義貞が鎌倉を落とせたのは、小氷期による海退によって、海岸線の道が開けたからではないか。上杉謙信が12回も関東平野に出兵し、うち8回も越冬しているのは、本国の凶作に対応した「口減らし」ではなかったか、等々、興味深い指摘が豊富なデータに基づいて、次々と示される。とても面白く、かつ、ほとんど全てがストンときれいに腹落ちする。

このような気候変動に、私たちの祖先は、どのように対応してきたのだろうか。平凡なようだが、技術の発達による克服(灌漑設備や品種改良等)と、統治の安定と的確な対策の2点に尽きると筆者は述べる。それは、これからもその通りだろう。市場経済については、気候変動の影響を増幅するのではないか、と筆者は指摘するが、この点については、舵取り次第で緩和にも増幅にもどちらにも振れるように思われる。ともあれ、歴史好きの皆さんには、ぜひともお薦めしたい1冊だ。

出口 治明

ライフネット生命保険 代表取締役会長。詳しくはこちら

*なお、出口会長の書評には古典や小説なども含まれる場合があります。稀代の読書家がお読みになってる本を知るだけでも価値があると判断しました。

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