『なぜ院長は「逃亡犯」にされたのか』 新刊ちょい読み

内藤 順2012年03月16日 印刷向け表示
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<福島・双葉病院 患者だけ残される 原発10キロ圏内 医師らに避難指示で>

そんなショッキングなニュースが配信されたのは、東北と北関東を襲った大震災から数えて6日目の3月17日のことである。病院にはたちまち非難が殺到、またたくまに「悪徳病院」のレッテルが貼られることとなった。

しかし、実態は報道されたものとは大きく異なるものであったのだという。はたしてこの時、病院の内外では一体何が起こっていたのか?本書は、震災当日の3月11日から誤報が発表される3月17日までを、時系列で克明に追いかけたドキュメントだ。

双葉病院は、福島第一原発からは4.5キロの場所に位置する。専門は精神科だが、神経科や内科も併設された医療機関だ。患者の平均年齢は80歳。そんな場所も、未曾有の大震災は容赦なく襲いかかる。

電気・水道・ガス・電話など全てのライフラインがストップ、相次ぐ余震、全員が被災者という状況の中、家族の安否も確認できていないスタッフが総出で、震災当日はなんとか乗り切ることが出来た。流れが一気に変わるのは、政府からの避難指示があって以降のことである。

すぐに次の避難車両が来ると信じ、209人の患者と大半の職員を送り出し、129名の患者と一人で病院に残った院長。圧倒的な人手・物資の不足、患者の容態急変、原発の水素爆発、次から次へと津波のように困難が襲う。しかし待てど暮らせど、次の避難車両は来ない。さらにそこへ、マスコミ報道が追い打ちをかける。一体なぜ、救援は来なかったのか?そして、なぜ事実が正しく報道されなかったのか?

部分最適の積み重ねが全体最適につながらず、惨事を引き起こす。複雑化した社会ゆえのシステム・エラー。これはきっと、誰が悪いわけでもないんだ - 願望も込めて、僕はそう読み進めていったのだが、著者はエラーの綻びをさらに丹念に追い詰めていく。

今後の教訓としなければ誰もが報われない、そんな執念を感じる一冊だ。

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