行かなくてもいいくらいに解説されてるけど、やっぱり行きたくなってしまう『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』

仲野 徹2017年04月15日 印刷向け表示
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国立科学博物館のひみつ 地球館探検編
作者:成毛 眞
出版社:ブックマン社
発売日:2017-04-03
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HONZの成毛代表、何を考えているのか、忙しいとぼやきながらも、今年はめったやたらと本を出すらしい。大丈夫か。しかし、いちばん気合いがはいってるのはこの本だ。なんせ、ADHDを誇る成毛代表が、国立科学博物館という同じテーマに固執して二冊目の本を出すのだから。ただし、本人に確認した訳ではありませんので、まぁ、いま巷に流行る忖度いうやつですわ。

しかし、相当に力がはいっているのは間違いない。案内される成毛眞、興奮しまくら千代子状態なのである。少なくとも私が知る限り、呑まずにこんなにご機嫌で楽しそうな顔をしてわざとらしいポーズをとるような男ではないのだから。


一冊目の科博本は、当時の折原守副館長に日本館を案内してもらうというのがメインであった。今回は、日本館と双璧をなす地球館について、それぞれのセクションのエキスパートに教えを請うというスタイルだ。さすが成毛眞、二匹目のドジョウを狙うとはいえ、一応は趣向を変えてある。ちょっとだけですけど…。

思いおこせば、外国出張のついでに、ニューヨーク、ボストン、シカゴ、ワシントンDC、ボストン、ミュンヘン、ロンドンなど、いろいろな都市の科学系博物館を訪れたことがある。大都市にはそれにふさわしい科学系博物館のあるのがあたりまえなのだ。東京では科博が当然それにあたる。灯台もと暗し、であった。どうでもええけど、いきなり、東大にモトクラ先生いうのがおられて、えらく感動したことがあるのを思い出した。

最近あった『ラスコー展』は驚くほど素晴らしかったし、『生命大躍進』、『医は仁術』、『グレートジャーニー人類の旅』と、ここ何年かは、確実に年に一度は訪れている。しかし、特別展ばかりで、常設展を見た記憶がほとんどない。もったいないことをしておったわ。お隣にある国立博物館では、特別展に行けば、同時に常設展もよく覗くのに。 

1F 地球史を体感し生物の多様性に触れる
2F 暮らしの中の科学技術
3F 世界の動物たちに会う
B1F 科博の恐竜コレクション
B2F 46億年の生命進化
B3F 宇宙と物質の関係

今回の本のラインアップは、地球館のフロア割りの通り、それぞれの自慢の展示が次々と紹介されていく。美しいカラー写真に見応えがあるだけでなく、展示のツボが解説されているので、おぉそうなんか、とえらく感心しながら読んでいける。特におもろいなぁと感心したのをいくつか紹介してみたい。

まずは1Fからは、『熱帯雨林の一本の木から採取した昆虫とクモ』である。熱帯雨林をテーマにすると決めた時、研究者から提案があったのがこの展示だ。写真ではわかりにくいかもしれないが、一本の木に生息していた昆虫とクモのすべてが標本として貼り付けてある。その数、なんと12,382匹!いかに熱帯雨林が自然に恵まれているかが、一目瞭然に、もぞもぞと体感できる。

もう一点、1Fから『ミンククジラの腸』。長い。それはあたりまえだが、左下の写真のように、よく見ると、内壁にびっしりと寄生虫が巣くっている。むちゃくちゃな数だ。長いだけでなくて気色悪い。熱帯雨林のムシもミンククジラも、成毛とまったく同じく「これを展示しようと思ったのがスゴい」と素直に思う。

もちろん、こういったキワモノっぽい展示ばかりではない。2には、伊能忠敬の日本地図と測定器具、杉田玄白の解体新書、「イ」の字を写す高柳健次郎のテレビ、かつてはメートルとキログラムの定義であったそれぞれの原器、など、どれも、科学フリークには垂涎の物が展示されている。中でも圧巻は零戦だ。まさか、そんなものが展示されているとは思わなかった。復元模型かと思ったら、なんと1972年海底から引上げられた」とある。ちょっとすごすぎるんとちゃいますか。涎を垂れるだけじゃなくて、おしっこちびりそう。

B1Fの恐竜化石もでかくて見応えがある。と書いてて気がついたのであるが、熱帯雨林、ミンククジラ、零戦、恐竜、と大きい物ばかりに感心している。ひょっとしたら、大きさに幻惑されているちっこい人間だと思われてるかもしれん。ということで、B3Fにある小さくて渋い展示物にも目を向けてみたい。もっとちっこいと思われるかもしれんけど、生命科学者としては、決して見逃すことのできない展示物が目白押しだ。

いまや英語でもUmamiとして知られる「うま味」というものがあって、それがグルタミン酸であることを発見した池田菊苗の薬品類、オリザニン(=ビタミンB1)を発見した鈴木梅太郎の米糠抽出物、高峰譲吉の下でアドレナリンを精製した上中啓三のノートなど、日本の生命科学の歴史に燦然と輝く業績の展示物なのである。

展示物の各論をあげればきりがないけれど、全編を通じて驚いたのは、科博におけるその解説の素晴らしさである。説明しすぎないように、できるだけ簡潔にしてあるのだ。なんとなく、博物館というと説明過多なイメージがあるのだが、科博は真逆である。そうすることによって、来館者により興味を持たせる、自分で調べるといった姿勢を身につけてもらう、といったことをめざしている。単に展示だけじゃなくて青少年の教育も考えている科博、えらいぞ。

この本を読んでいると、ほんとにそうなったらちょっと怖いけど、自分が成毛眞になって、直接レクチャーをうけながら科博を巡っているような気分になってくる。きれいな写真が多いからなおさらだ。素晴らしい展示物が多いことに感心していたら、常時展示の品は、科博が所有するなんと440万点から選ばれたものであるらしい。そらすごいはずですわなぁ。

この本を片手に科博に行きたくなった。出張ついでなどではなく、ゆっくり見学したい。でも、広いから歩き回ったら疲れるやろうなぁ、と思っていたら、地球館の屋上には、憩いのためのハーブガーデンまである。至れり尽くせりやないの。やっぱりえらいぞ科学博物館!それをこんな本にまとめた成毛眞もむっちゃえらいぞ!と、代表を思いっきりよいしょして今回のレビューをおひらきにいたしたいと存じます。ちゃんちゃん。

※写真は『国立科学博物館のひみつ 地球館探検編』から

国立科学博物館のひみつ
作者:成毛 眞
出版社:ブックマン社
発売日:2015-07-02
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国立科学博物館、成毛眞第一弾は、日本館の紹介でありました。まだの人はこちらも読んでやってください。 

藤森照信×山口 晃  探検!  東京国立博物館
作者:藤森 照信
出版社:淡交社
発売日:2015-11-16
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東京国立博物館は、建築家・藤森照信と美術家・山口晃が探検しています。成毛眞の相手にとって不足なし。どっからでもかかってきなさい。

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