『「国境なき医師団」を見に行く』最大限の敬意を払って支援を尽くす人びと

東 えりか2018年02月16日 印刷向け表示
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「国境なき医師団」を見に行く
作者:いとう せいこう
出版社:講談社
発売日:2017-11-29
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 編集者であり、作家、クリエーターとしてマルチな才能を見せるいとうせいこうが「国境なき医師団」を見に行こうと思ったのは、取材を受けたときに、この団体の活動が多岐に渡っていることを初めて知ったからだ。通常発祥の地であるフランス語(Médecins Sans Frontières)の略語「MSF」と呼ばれることが多いこの組織は全世界70数か国に展開している。紛争や天災に見舞われた地域に真っ先に入り医療や精神的、社会的ケアを行う。

2016年3月から17年4月の間に、いとうが赴いた国は、ハイチ、ギリシャ、フィリピン、ウガンダの4か国。MSFジャパンの広報、谷口博子さんとともに訪問した。

2010年の大震災の疵が癒えないうちに、16年に大型ハリケーンに見舞われたハイチは、保健医療体制がまったく機能していなかった。

ギリシャに難民が多い、と聞くとなぜ?という疑問がわいたが、中東やアフリカなどからの難民や移民が到着する最大の拠点だからだと知って驚く。EUとトルコの難民対策合意により、行き先を失った5万5000をこえる人々が約50のキャンプにいるというのだ。

「女性を守るプロジェクト」を行うフィリピンのマニラでは、都市の中心部にあるスラムの過密人口と貧困に衝撃を受ける。

自衛隊も派遣された南スーダンから現在100万人に届く難民を受け入れているウガンダ。難民の9割が女性や子どもの理由は、家や土地を守ろうと男性は地元に残るからだという。

自分はジャーナリストではない、という著者は、写真撮影を最小限にして人々の話を聞くことに徹する。難民たちの事情が複雑なのは当然としても、そこで活動する医師や物流・流通の専門家、事務職員たちが持つ奉職した理由や使命感もさまざまだ。

彼らは難民やスラムの人びとに対し最大限の敬意を払って支援に当たっていた。日本の災害でも派遣されていた組織なのに、私たちはこのことを知らな過ぎた。本書で多くの人に興味を持ってほしいと切に思う。(信濃毎日新聞 1/28 加筆して転載)

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 「国境なき医師団」の日本事務局をつくった男。

 

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