『独裁者プーチン』新刊超速レビュー

村上 浩2012年06月09日 印刷向け表示
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独裁者プーチン (文春新書 861)
作者:名越 健郎
出版社:文藝春秋
発売日:2012-05-21
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テレビ・スポーツ紙はとにかく選挙一色の一週間だった。国民的行事とばかりにあらゆる媒体で、選挙結果に涙する姿が大写しで報じられていた。全身全霊をかけた勝負が数字という言い訳のできない具体性を伴って示される選挙には、いつの時代も涙がつきもなのか。ネットの一部で“完璧超人”とまで呼ばれるこの男でさえ、選挙後の涙から逃れることはできなかった。

異例の涙が見られたのは、大統領当選が決まった2012年3月4日深夜のこと。あのプーチンがそこまで追い詰められていたのか、国民を一つにまとめるための演出か、それともただ疲れていただけか、何とも想像を掻き立てる涙であった。間違いないことは、プーチン人気の陰りが誰の目にも明らかな程に顕在化していたことと、それをプーチンが気にしていたことだ。

本書は、ロシアに欠かすことのできないロシアンジョーク、アネクドートにも凋落の兆候が現れていたと紹介する。例えば、ネット上ではこんなアネクドートが人気を集めていた。

大統領選の1ヶ月前、選挙管理委員会の委員長がプーチン首相にこんなことを報告する。

「大変です。昨夜中央選管に泥棒が入り、最高機密文書が盗まれました」

「どんな文書だ」

「大統領選挙の開票結果です。」

これ以外にもかなり過激なネタが飛び交っていたようだ。これは、資源高に沸いていた、プーチン人気絶頂の時には見られなかったもの。ちなみに、ロシアのアネクドート好きには『ジョークで読むロシア』がオススメ(成毛眞によるレビュー)。

元時事通信記者による本書は、プーチンの自伝や様々に出版されているプーチン本・情報を参照しながら、巷に溢れる伝説を検証していきながら、プーチンの人生をなぞっていく。

  • プーチンがKGB出身であることは皆が知るところだが、中佐止まりの男がなぜ大統領になれたのか?エリツィンに近づけたのか?
  • プーチン専用車のナンバープレートが「007」というのは本当か?(プーチンに殺しのライセンスというのは、シャレにもならないような気がするが)
  • 首相時代の4年間、F1カーに乗ったり、鯨撃ちに挑戦したり、カメラマンに襲い掛かっているアムールトラを麻酔銃でしとめたり、プーチンはどこへ行こうとしていたのか?

フランス、韓国、中国、アメリカなど今年は世界のリーダーがガラッと変わる(可能性のある)年である。実質的には13年目を迎えるプーチン体制のロシアはどのように変わっていくだろうか。

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暗殺国家ロシア―消されたジャーナリストを追う
作者:福田 ますみ
出版社:新潮社
発売日:2010-12
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本書でも何度も登場する、独立系新聞ノーバヤカゼータの活動を追った一冊。恐ろしくて、背筋が凍ります。レビューはこちら

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
作者:
出版社:中央公論新社
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