『カバに会う』

成毛 眞2008年12月16日 印刷向け表示
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カバに会う―日本全国河馬めぐり
作者:坪内 稔典
出版社:岩波書店
発売日:2008-11-13
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えーと、日本全国のカバに会う本である。巻末の著者略歴をさらに略すと、俳人にして歌人、佛教大学教授、1944年生まれ、研究の対象は日本文学のほか、あんパン、柿、そしてカバとある。

「はじめに」の1ページ目からでいきなり、「総入れ歯そう嫌でない河馬の馬鹿」「河馬の馬鹿成功せずとも性交し」などの句の紹介がある。左党放犀という俳人の句集「河馬の馬鹿」からの転載だ。この句集200頁が河馬だらけなのだという。評者としては買うつもりはおきない。

著者は福岡市動植物園のカバに会って「水澄んで世界の一部河馬の尻」という句を思い出す。沖縄こどもの国のカバにあって那覇市の歌人である岸本マチ子の句を紹介する。「憂鬱を食べてるカバのモモエチャン」。

著者ご本人は1984年に句集『落花落日』を出しているのだが、そのなかで神戸市王子動物園を訪ねて「恋情が河馬になるころ桜散る」だ。畳み掛けるように「全国の河馬が口あけ桜さく」とくる。

本書も3分の2を過ぎるころにナメコロジー研究会が紹介される。ナメクジとエコロジーの合成語だというのだが、このあたりなにやら頭がクラクラしてくる。番外編で著者がこのナメコロジー大賞をもらったことが報告される。

そして最後の章では中島敦の漢詩が紹介される。

悠々として独り住む別乾坤

美醜賢愚は俗論に任す

河馬の檻中 春自ら在り

団々たる屎糞ニ三痕

あらら、この本じつは立派な詩歌の入門書なのかもしれない。バカバカしいと思いながら最後まで読むと、旅をして、対象を坦懐によむ面白みがなんとなく感じられてくるのが不思議だ。

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