『鵤工舎の仕事』

成毛 眞2009年01月04日 印刷向け表示
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鵤(いかるが)工舎の仕事―長泉寺建立記
作者:塩野 米松
出版社:文藝春秋
発売日:2008-12
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正月中このあまり分厚くもないこの本にかかりきりになった。普段は気になるページの肩を折って印とするのだが、その箇所があまりにも多くなりそうなのでポストイットのブックマークを使った。肩を折っていては本の厚みがそこだけ2倍になりそうだったからだ。

著者は法隆寺最後の宮大工といわれる故西村常一氏を紹介した『木に学べ』などこの分野では多数の著書がある作家だ。読み手も宮大工物が大好きで塩野米松の著作以外にも松浦昭次や笠井一子などの本を読み漁ったことがある。本書は2008年9月に落慶法要された新築のお寺についてのものだから、文化財修繕とはまた違う味わいがある。

このお寺を建てたのは奈良の鵤(いかるが)工舎であり、率いるのは小川三夫棟梁だ。小川氏は故西岡棟梁の内弟子であったという。ちなみに取材する塩野も、される小川氏も1922年生まれだ。この分野では油が乗り切った年だという感じがする。

本書は著者が材木、基礎、表具師、左官、建具、屋根瓦のそれぞれの職人から話を聞き、その順で章立てしている。棟梁にのみ焦点をあてた本ではない。そこが本書を価値のあるものにしている。それでは本書からポストイットを張ったいくつかのポイントを(感想)付きで紹介しよう。

仏がお座りになる本陣は鳴き龍仕立てにしてあるという。棟梁は鳴き龍にするのは難しくないという。その本陣の床は台湾製の檜で樹齢は3000年のものだ。(すごい)

この本堂は少なくとも数百年は持つらしい。しかし基礎は100年ほどしか持たないという。なぜならコンクリートにしたからだ。コンクリートにした理由は昔の工法では建築許可が下りないからだという。(やはり役人は役人だ)

良い木材とは山の中腹に生える木を、冬に山の頂上に向けて切り倒し、枝を付けたまま乾燥させ、下に運搬しては屋根のついた土床の倉庫に、横に寝かせてさらに乾燥させるものらしい。個々の理由すべてが紹介されている。(木がなくなる前に、技術がなくなりそうで怖い)

内陣の壁は金張である。表具師はその壁を作るために5層の紙を張る。2層目には100年前の大福帳などの和紙を張る。墨の膠成分が紙を引き締めるのだという。(この紙が案外安いのに驚く。関西は歴史の魔窟だ)

と、本書をざっと紹介したが最も面白いのは最後の瓦職人のお話だ。これほど瓦屋根が深いものだとは思わなかった。これは本書を買ってからのお楽しみにとっておこう。

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