『スパイと公安警察』

成毛 眞2009年01月29日 印刷向け表示
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スパイと公安警察-ある公安警部の30年
作者:泉修三
出版社:バジリコ
発売日:2009-01-07
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いま読み終えた。じっくり読んだ。なんともいえない切ない気分である。日本はこの本の著者や佐藤優など、見えない公務員の努力によって支えられきたことだけは間違いない。本当にありがたいことだ。ちなみに佐藤優はいまだに刑事被告人だし、本書の編集者に聞いたところ、著者は一人の飲んだくれの警官退職者だという。

本書は日本において異例な防諜活動の赤裸々な記録だ。すなわちスパイをいかにして監視するかという、それ自体が秘密のベールに閉ざされている公安警察のエピソードを語ったものだ。こんなこと書いても発禁にならないのかというようなエピソードが満載だ。

ところで、アメリカの防諜組織はFBIでありイギリスではMI5だ。積極的に対外諜報をしかけているのはそれぞれCIAとMI6だ。しかし、日本では防諜しか行われず、それも一般採用された警察官が担うことになる。本書の著者も派出所勤務から本庁に異動し、CIAなどと情報交換していたにも関わらず、田舎の警察署に飛ばされる。なんという非効率だと呆れるのだが、秘密警察を作らないためのうまい仕組みだ。現場の警察官は辛いだろうが、その意味で日本の警察システムは優れているのかもしれない。

ともあれ、本書はこれからのサスペンスを作る上でのバイブルになるかもしれない。視察すなわち監視のテクニックなどリアリティは小説の比ではない。情報源を作る方法も文学的である。NATOの老将軍に近づいたKGBがとった作戦は、単にお話を聞いてあげるというものだったらしい。老人が若者に自分の話を聞いて欲しいという願望は2000年前から変わらないと筆者はいうのだ。

本書の著者は明らかに天才気質なのだが、いまや日本の知的ヒーローになった佐藤優に比べるとずいぶん不利だ。1944年の生まれだから、もうとっくに65歳を過ぎている。しかし本書はけっして回顧録などではない。いまでも十分の戦えるネタが満載だ。歌舞伎でも白波物が好きなボクはこんな本を読んで生きる力がわいてくる。すばらしくエネルギーが詰まっている本だ。

ところでイギリスのスパイ組織はMI5とMI6の二つがある。本書でもMI5は情報局保安部、MI6は情報局秘密情報部として紹介されている。じつはこのMI6が人材を募集中だ。今年の1月10日号のロンドンエコノミスト20ページにMI6の人材募集広告が載っている。「この部屋にあなたが味方にしたいと思っている外国人が3人います。あなたはどのように彼らに親近感を持たせますか?」という4行文だけの広告だ。凄すぎる。

ロンドンエコノミストの人材募集広告がじつに面白いのはご存知だろうか。12月20日号ではEUがDIS(Director Infomation systems)を求人している。1月17日号ではアフガニスタンの危機管理オフィサーを求めている。1月24日号では世界一お金持ちの「ゲーツ&メリンダ財団」が世界を対象とした農業振興のマネージャーをはじめ6つのポジションを探している。

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ノンフィクションはこれを読め!  2014 - HONZが選んだ100冊
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